リオセンセーション
時系列はあるので
順番に読んでいただくのを
お勧めしておりますが、
基本的には1話で区切りのある
恋愛小説です。
理緒:
主人公。
関東出身、京都在住のだめ女から、
関東に戻ってきた。
元、だめ女と信じたい今日この頃。
新しい職場で奮闘する。
奏:
関東在住の残念なイケメンことかなで。
理緒の彼。
残念とされる所以の1つは確認済み。
2つ目も、なんとなくわかった。
理緒の1個下。
リオセンセーション
巻き起こせ
びっくりするような出来事。
私のこれからに最高の祝福を。
「というわけで、入社しました」
京都から帰ってきてすぐの話。
私は気に入った会社に応募し、見事就職を勝ち取った。
実のところ、前の会社を辞めると決めてからいろいろ下調べと準備をしていたため、努力してないわけではないのだけど。
そもそも働かなくては生きられないのである。
奏が、3年くらいなら家賃賄ってあげられるよと笑っていたが、そんなのは言語道断なのであった。
次の会社は食品系。
営業事務のつもりで応募したが、配属は営業。
それでも、今までに比べたら仕事量はそう多くない。
かつ、手取りで言うなれば5万は上である。
「おめでとう、さすが理緒」
奏が笑ってくれて、私も嬉しくなった。
これは偶然だけど、奏の職場の駅と私の職場の駅が一緒だったのも嬉しいポイントだ。
もしかして朝一緒に行けたりするかな?
それとも帰りか…。
どきどきする。
高校生かっ、と突っ込みたい衝動に駆られるが、嬉しいものは嬉しい。
<あのねあのね!時間合ったら一緒に帰ったりしてくれる?>
<うん>
<やったぁ♪( ´▽`)>
全てが好転していく。
人生で1番の好機だ。
「よぉっし…やるぞー」
…そんなわけで、私の新しい生活が幕を開けた。
そしてそれは、入社後すぐのこと。
「2週間…ですか」
「はい」
研修も兼ねて、本社へ2週間行けという。
ちなみに、本社所在地は九州である。
とんとんと話が決まって、私は飛行機に乗せられた。
異例の捩じ込み研修のため、たくさんの人がスケジュール調整をしてくれたに違いない。
そう思ったら、少しそわそわした。
<行ってくるね>
<頑張っといで>
2週間なんて、京都に居た時に比べたら、先が見えている緩い期間である。
何ら問題無いと思えた。
…が。
慣れないホテル暮らし、しかも食事する場所が近くに無い簡素な場所で、開いてる店といえば何故かミスド、そして小さなスーパー。
晩御飯もままならず朝も早いので、私は1週間する頃にはほとほと疲れてしまった。
会社自体の考え方を学び、工場などの施設を視察し体験したりと、することは多い。
そういうことは好きだし、気に入った会社だったため研修に関しては問題無いのだけど…。
そこで奏の携帯の調子が悪くなり、ほとんど繋がらなくなったのである。
あまり話せない状況に陥って、兎にも角にもただ寂しい。
どうしよ…。
そんな時に、休日と相成った。
そうだ、山登ろう。
自然いっぱいの場所が好きな私は、身体も心も軽くするべく、近くにあるという山に登ることに。
ついでに、有名どころの神社も行ってみることにした。
結構急な石段を登り、高台から町を見下ろす。
見晴らしは良かった…んだけど、どうも空気が霞んでいる。
そういえば、PM2.5がどうとか言ってたなーなどと考えを巡らせた。
…冬真っ盛りの冷たい風が、そんな私の頬を撫でていく。
……奏どうしてるかな。
そう思ったら、切なさと愛おしさが押し寄せて。
泣きそうなほど苦しくなった瞬間、携帯が音を立てた。
「…奏…?」
びっくりした。
<おひめ、今日は休み?お疲れ様。携帯直してきた。行ってあげたらよかった>
きゅーって胸が詰まる。
優しくてあったかい言葉で、思わず唇をかみしめた。
<かなで〜。今ね、奏のこと考えてたんだよー>
<いいタイミングである。大事な俺のお姫様だからね!>
<えぇ…もう、お姫言わないのー>
寂しくてたまらなかったから、余計に照れて。
とっても幸せで。
泣きたい気持ちは吹き飛んで、代わりに、何故だかほっとした。
神社までいくと、やっぱりおみくじが引きたくなるよね。
恋みくじがあるのを見つけて、私は100円を投入。
箱に手を突っ込んで、これ、というのを引き当てた。
「大吉。幾百万人の中から選ばれた2人なのです。仮初めにも不倫の恋に身を破ることなく、1日1日を大切にしなさい。きっと愛情あふれた結婚と家庭が約束されるでしょう」
……
………!
な、何これ、こんないいこと書いてあるの初めてなんだけど!
おみくじを全面的に信頼するわけじゃないけど、それでもいい結果なら喜ぶべきだよね!?
……結婚云々は奏には言わないけど。
心にしまっておくことにしよう。
そう決めて、気持ちが上向く。
神様から、あと一週間を頑張る力をもらった気がした。
奏もまめに連絡をくれて、夜は電話してくれる。
それでも寂しくて疲れてしんどかったけど、大丈夫、もう少し。
もう少し。
騙し騙し、気持ちを奮い立たせて。
…2週間の本社研修が終わった。
ゴロゴロ。
スーツケースを転がし、部屋に帰り着いたのは土曜の夕方。
ちなみに、合鍵は奏に渡してあるが、奏は友達との飲み会があっていないのはわかっていたので、とりあえずひと息つこうと思っていた。
冷蔵庫は空っぽにしていったけど、九州で買った冷蔵品を冷やさねばならず、よいしょとばかりに扉を開ける。
…すると。
「…?」
中に、見慣れないボードと箱が入っていて。
<理緒。2週間お疲れ様、がんばった理緒にご褒美です。今日夜行くから、一緒に食べよう。奏>
奏からのメッセージボードだった。
箱の中には、チョコレートケーキ。
奏が食べさせてあげたいと言ってくれていたものの1つで、2駅隣のケーキ屋さんで売っていたはずだ。
…わざわざ、買いに行ってくれたのだ。
「…っ」
瞬間、張り詰めていた何かがぷつんと切れて。
私はうずくまって泣いてしまった。
思えば仕事女、だめ女、そればっかりで。
こんな風に優しくされて、大切に扱われたことは無かった。
前の人の時も、私は大切にする側で、される側ではなかったのだから。
そんな時に奏に会えて。
優しくされて、大切にされて。
そうして、やっと。
仕事の引継、引越し、新しい仕事と、気持ちを張り詰めていたのだと気付かされた瞬間だった。
そもそも、泣くのは嫌い。
そんなに弱くない。
そう思ってきたのだから。
<あのね、あのね奏っ、本当に嬉しい、ありがとう!大好き>
泣きながらうったLINEに、ありったけの気持ちを込める。
伝わりますように。
伝わりますように。
見てて、私、頑張っちゃうから。
巻き起こせ
びっくりするような出来事。
私のこれからに最高の祝福を。
奏の気配りは本当にめろめろっときます。
リア充爆発しろ!
読んでくださる方が着々と増えて、
とても嬉しいです。




