エピローグ:まぐどのたんぬ
最後のオチを要求されてしまいました。考えてなかったんですよー。
でもやっぱり最後まできちんと書かないと駄目だということですよね。
肝に銘じましょう。「最後まで手を抜くな」。当たり前ですけど。
と言うわけで、最後です。
なんと、これは直接入力しています。頭の中のものをストレートに書き出しています。これは珍しい。こんなことはたぶん初めて。さあ、うまくいきますでしょうか。では。
それはトバ火山の調査隊が発見したものだった。
日本から見てはるか南方、インドネシアのスマトラ島。赤道直下に近いこの島に、トバ湖という世界最大のカルデラがある。その湖の中心にはサモシール島があって、風光明媚な観光スポットになっている。またこの地方の民族、バタクの文化の中心として多くの遺跡も残っている。
ここに日本からの調査団が派遣されたのは、2004年12月26日に起きたマグニチュード9.1という世界最大級のスマトラ島沖地震以降、この付近での地殻変動が顕著となったためだった。
この湖の南側にはスマトラ断層が走っている。またそのほかの断層も多い。この断層のいずれかが動いた結果が、2004年の巨大地震であり、巨大津波であった。
だが、調査団がトバ火山付近の地質調査を行ったのは、スマトラ島沖地震のためだけではなかった。トバ火山には恐るべき学説がある。それはトバ・カタストロフ理論と呼ばれていた。
今から約7万年から7万5千年ほど前、トバ火山は大噴火を起こした。火山噴火指数でカテゴリー8。世界最大級の噴火である。この噴火の結果、カルデラができあがり現在のトバ湖となり、その後のマグマの上昇からサモシール島ができあがった。
トバ・カタストロフ理論によれば、大気中に巻き上げられた大量の火山灰が日光を遮断し、地球の気温は平均5度も低下した。そしてこの寒冷化が約6千年続き、地球はヴュルム氷期に突入した。その時期まで生きていた亜種人類は絶滅し、生き残ったのはネアンデルタール人と現在の人類の祖先だけであったと考えられている。
しかし現生人類に与えた影響も大きく、総人口は約一万人にまで減少し、絶滅寸前になったとみられている。この噴火と同時期に、ヒトDNAの多様性が著しく減少した遺伝子多様性減少がみられるからである。これがトバ・カタストロフ理論と言われるものであり、地質学・古人類学の分野では、火山の噴火とその後の気候変動を指してトバ事変と呼んでいる。 人類の進化における、ボトルネック効果の例を示す学説とされている。
トバ火山は数十万年に一度という非常に長期の休止期間をはさんで巨大噴火をおこす火山と見られており、約7万年前に噴火したことから、当分は噴火はないと見られていた。しかし、スマトラ島沖地震から始まったこの付近の地殻変動がどのようにトバ火山に影響を与えているのか、巨大噴火へ繋がる兆候はないのか、確認する事が調査団の派遣理由であったのだ。
そして調査団がトレンチを掘り、地質の状況と変化を確認していたとき、あるものを見つけたのだ。それは7万年前の地層の下に、小さな石でできた石像であった。長い髪、ふくよかな胸。天を指差してにこやかに笑う顔。豊穣を祈り、神に感謝する女性像。誰もがそう思った。が背中側をみたとき、誰もが驚きの声を上げたのだ。そこには、日本語で「まぐどのたんぬ」と掘られていたのだ。
「おい、これはどうしたわけだ?」
「誰かのいたずらか? この地層から日本語がでるはずがない!」
「だが、この地層は間違いなく7万年前のものだ。そしてその石像はここから出たことは間違いない」
「だとすれば、世紀の大発見だぞ。日本語の由来も歴史も何もかも一変する!」
「バカな!」
「だめだ。これは発表できない」
「なぜだ? 大発見だぞ」
「それはわかる。が誰も信じまい。詐欺師扱いされるがオチだ。2000年におきた石器捏造事件を忘れたのか。あれと同じ扱いにされるぞ」
「そんなバカな! 捏造なんかじゃない。これは間違いなくその地層から出た――」
「だが誰も信じない。信じられるはずがない。お前だったら、信じられるか?」
「……くそっ! どうすればいいんだ?」
「黙っていろ。そして未解決リストに一行書き加えておくんだ。いつか、本当の事がわかる日が来ることを期待してな」
そしてその石像は偽造とされ、地元のバタク人の少女の手に渡った。石像は「聖女タンヌ様」と名づけられた。「マグドの」の方は何のことか、日本調査団でもわからなかった。
その少女は石像を母親と一緒に敬った。きっと、昔の人もそうやって聖女タンヌ様を通じて神様に感謝を捧げていたのだと聞いていたから。
「ね、母さん。この聖女タンヌ様はどんなことをしたのかな。昔の大噴火を生き抜いたとか、みんなを助けたとか、そんな活躍をしたのかな」
少女はキラキラした瞳で母親を見た。
「さあ、母さんにはよくわからないけど、とってもいい笑顔をしてらっしゃるわね。きっとすごいことをしたから、記念にこんな素敵な石像を作ったんじゃないのかな」
「あたしも大きくなったら、こんな素敵な女性になれるといいな。なれるかな?」
「きっとなれるわよ。諦めないで、最後まで頑張ること。聖女タンヌ様はそう教えてくれているのよ」
「うん。わかった。あたし、頑張る!」
少女は笑顔で答えた。
もし、純子が少女の言葉を聞いたのなら、「やれやれ。それはあたしだぞ」と言ったのかどうか、それは誰にもわからない。
-おしまいー
オチになりましたでしょうか。
ちなみに、トバ・カタストロス理論に関することは本当の学説です。休止期間が恐ろしく長いだけで、噴火すれば人類絶滅と言うのも事実です。それはトバ火山だけではありません。現在危機が最も迫っているのは北アメリカ、イエローストーン火山です。
約64万年前に最後の破局噴火をしており、地下のマグマはそれ以来蓄積されています。いつ破局曲噴火してもおかしくありません。そしてその時は人類絶滅となるかもしれないのです。
ちなみに、「まぐどのたんぬ」は「マグダラのマリア」にひっかけてあります。マグダラのマリアは「罪深い女」、性的不品行のようです。それがタンヌのお小遣い稼ぎの話に繋がっています。
ネタをばらしていけば、それだけで一話書けるぐらいですが、これぐらいにしておきましょう。
長いことお付き合いくださいまして、有難うございました。
また、次の作品でお会いしたいと思います。
深く感謝申し上げます。では。




