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「優生っ」
「うわっ、な、なんだよ急に」
優生の部屋のドアを開けると机に向かっていた優生が振り向いた。
「優生」
「な、なんだぅええ!?」
頭を掴んでキスをした。
「は? な、何だよ急に?」
ちゅうちゅうほっぺたでも唇でも構わずキスしまくる。
「なん、おいっ、やめろよっ。気持ち悪いなぁ」
頭を押さえて止められたのでやめる。
うむ、全くドキドキしない。まあ当たり前だけど。ちょっと前までしまくってたし。
「ドキドキする?」
「はああ? なに姉ちゃんドキドキしてんの? 昔から散々してたのにドキドキとかするわけねーじゃん」
「私もしない」
「されても困るぞ」
「んー…よし。じゃあ優生、ありがと。また後でね」
「は? ああ、またな」
不思議がる優生と別れ、私は一階に降りた。リビングに入るとお母さんとお父さんがテレビを見てた。
「お父さーん」
ソファにいるお父さんに後ろから首に腕を回して抱き着いた。
「ん? お、なんだなんだ? 珍しいな」
「ちょっと確認したいんだけどいい?」
「おお、なんだ?」
「ん」
キスした。唇からはちょっとお酒の匂いがした。ビール飲んでたみたい。
顔を離すとお父さんはめちゃくちゃ驚いた顔で私を凝視してるけど、無視して腕も解いて離れる。
「んー、やっぱり違う」
「悠里ちゃん? どうかしたの?」
「うん、ちょっと。お母さんにもキスしていい?」
「いいわよ」
キスをした。
「んー、ちょっと照れるわね。悠里ちゃんは優生とよくしてたから抵抗ないの?」
「うん。彩ちゃんともするし。でもさっき…あー、何でもない」
「びっ、くりしたー。そうか、そういえば優生と悠里はよくちゅーしてたなぁ」
「もしかしてドキドキした?」
「馬鹿にするでない。父さんは母さん一筋だ」
「んー、でも悠里ちゃんの唇の方が柔らかくて気持ちいいわ」
「……泣いていい?」
「冗談よ。たとえお酒臭くても、お父さんが一番だから」
「母さん…」
「じゃ、私もう戻るね。お休みなさい」
「お休みなさーい」
今だに気をぬくとすぐにラブラブモードに入ろうとする二人なので無視して私は部屋に戻った。
優生とはドキドキしなかった。慣れてるからかも知れないからお父さんにもしたけどやっぱりドキドキしなかった。家族だから、というには勇気にもドキドキしなかったし。
ということは…私、お兄ちゃんのこと好きなの?
お兄ちゃんを思い浮かべただけで、ちょっと心臓が早くなる。
今まではこんなことなかったし、くっついても全然ドキドキしたりとかしなかったのに。急すぎ。
キスしたからお兄ちゃんに恋した、とかだと葉子ちゃんや勇気にドキドキしなかったのに説明つかないし。
でも……前から好きだとしたら変じゃない? だって今までは意識してなかったのに。恋人がいても気になんかしなかったし。
急に、急にドキドキし出した。なんで? どうなってるの?
…キス、したから? 意識しちゃったのかな。でも、でも…よくわかんないけど…私、お兄ちゃんに、恋、してるんだよね。
「っ…」
あ、熱い。体が熱い。なにこの感じ。なんか、苦しい。
お兄ちゃんのこと考えるとなんかふわふわして落ち着かないし、変。ドキドキしてるから恋だと思うけど、恋ってこんな感じなの?
「…はぁー」
大きく深呼吸して、何とか心臓を落ち着ける。
とりあえず、お兄ちゃん待たせてるし。あー、どうしよう。
お兄ちゃん好きな人いるし絶対フラれるのに。だいたい年離れすぎな気がする。お兄ちゃんからしたら私って超子供じゃない?
告白しても困らせるだけだよね。どうしよう。でもこんな気持ちで今まで通りになんてできないし…。
「…よし」
とりあえず、さっきのをごまかしに行こう。
告白するしないはまあ、また今度で。
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