高文6
「最初ははっきり断ってたんでしょ?」
「う、うん」
キョトンとしてる悠里ちゃんに、悠里ちゃんがどうしてそうなったか、順番に言いながら、ちゃんと注意をする。
「悠里ちゃんに勇気がないから、その子は余計に傷ついたかも知れないね。そこは反省しようか」
「…うん、そう、だね」
どこかぼんやりとしながら、だけど嬉しそうに眉尻をさげて悠里ちゃんはほっと息をはいた。
こんな風に悠里ちゃんを怒るのは初めてだ。いたずらに注意をするのとは訳が違う。初めて年上らしく振る舞えた気がする。
「っ、〜」
悠里ちゃんは涙を流した。緊張していたのか悲しそうでもなく、表情はそのままだ。
「悠里ちゃん、泣かないで。その子は悠里ちゃんを許してくれなかった? 酷いって詰った?」
悠里ちゃんは首を横にふりながら、つっかえつっかえになりながら友達に戻れると言った。悠里ちゃんの友達はやっぱり素敵な子だ。
「悪いと思うなら、その子が求める友達の悠里ちゃんとして自然に接するのも一つの謝罪になると思うな」
「…うん、わがった」
話を締めると悠里ちゃんは鼻をすすって涙をとめようとしながら頷いた。
小さな子供みたいな姿になんだか心がほっこりする。
「ありがとう、お兄ちゃん」
と、悠里ちゃんはまた僕に抱き着いて、ほお擦りしながら笑顔でお礼を言った。さすがに照れる。
「んーふふ」
ヒゲが痛いと言いながらも悠里ちゃんはほお擦りを止めない。
ちょ、ちょっと…そろそろいいんじゃないかな。いや、嫌なわけじゃないけど、ね。
「ゆ、悠里ちゃん。女の子なんだからそういうことしないの」
「やーね、お兄ちゃんじゃなきゃしないわよ。ねぇお兄ちゃん」
「…なに?」
「ん? うん、あのねぇ…えへへ、大好きよ。本当にありがとうね。私、お兄ちゃんがいてくれていつも助かってるし、楽しいわ。いつも付き合ってくれてありがとう」
蕩けるような笑顔で好意を伝えられて、言葉が出なくなる。
ドキドキと胸が騒がしい。悠里ちゃんは僕を兄として慕ってくれてるのに、僕は兄貴分失格かも知れない。
でも今なら、僕も好きだと言える。どんなに言ったって悠里ちゃんはそういう意味だとは思わないだろう。
それは悲しいけど都合がいい。本当は僕もまた、悠里ちゃんを叱れないくらい勇気がないから、まだ伝えられない。
今だけ、違う風に思われていいから、心からの気持ちを伝えよう。
「うん。僕も悠里ちゃんが大好きだよ。愛してる」
「……ん、ありがとう」
照れたようにはにかめ悠里ちゃんが可愛くて、キスをしたかったけど、軽く抱きしめるだけで我慢した。
きっと悠里ちゃんが他の誰かと恋人になって結婚したりしても、多分ずっと、死ぬまで僕の一番は悠里ちゃんなんだろう。そう思うと我が事ながらなんだか笑えた。
いつか、彼女が大きくなったら、ちゃんと言える日が来るんだろうか。
それは楽しみであり、恐いな。
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