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第28話 ああああ、情勢を聞く


 二つだ。


「――と言った具合だ。現在この国で起きている異変については……分かってくれたかな?」


「はいブラストル王。ある程度把握しました」


「うむ。ではもう一度だけ確認の意味も込めて同じ説明しようと思うのだが良いかな? 勇み足で一気に説明してしまった感触があったからな」


「ええ、お願いします」


【恵みの石】【魔王配下の魔物デブーン】

 この二つが今回のキーワードだった。


「よし分かった。ではもう一度話そう――」


 それで……騒動の概要を要約するとこうだ。


 元々この国には恵みの石という秘宝があった。

 その石は名前通りこのリッツァーニャの地に絶大なエネルギーを与え、多くの作物のみならず家畜までにも急速な成長を促したり、さらに雨乞いの儀式で祈れば雨を降らして地に潤いをもたらすというトンデモない代物が保管されていたそうだ。


「しかし……そんな順風満帆な我が国にも噂で聞いておった魔王の配下なる魔物が現れた」


 けれどもそこに魔王の配下と名乗る『デブーン』と言う得体の知れない強力な魔物が突如襲来。

 たった一匹で国中の兵士をボコボコにした挙句、()()()()の元にそいつはこの国の生命線とも呼べる恵みの石を強奪していったらしい。


「そこで……恵みの石を奪っていたあの凶悪な魔物デブーンが提示した案。我々に手を出さない事を条件にした奴の望みは先も言った通り――」


 その提案というのが()()()()()()()

 月に一度だけ恵みの石を一定期間だけ返し預け、その期間中に育ち収穫された食料や家畜を大量に渡せという、まあ()()ーンという如何にも食いしん坊的な名前に相応しい提案だったそうだ。


(なるほどなぁ……どおりで所々緑が薄い高原があったりしたわけだ。その恵みの石を取り上げたのが原因で土地が痩せちまったのか)


「と……いうわけだ。しかもデブーンは毎月毎月()()()()()()()()()()()()()()()()になるまで食料を搾り取ろうとするのだ。作物を育てる労働者が飢えて死なぬようにその境界線を図ってな」


 おっほ……まるで噂のブラック企業だな。

 ギリギリで食っていけるラインの()()()()()()()()()使()()って……そう考えると俺のいた日本もモンスターまみれなのかな……おぉ怖い怖い。


「だが、このままではいずれ餓死する者が出る。食は命に直結する最も身近な要素だからな。もし飢え死にする者が出ればそれこそこの国は終わりだ。その時王として民草に顔向けなど出来ぬ」


 それも飢え死にが出ないって所がまた……。

 敵を褒める訳じゃないがマジに絶妙な所だな。


(まず腕っぷしの強さで降伏させて()()()()()()()()()()()()()。さらにこの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に思考が行っちまうってか……って、やっぱりブラック企業の手口じゃねぇかっ!)


「そして明日がその件の交換の日だ。まったくいくら前向きな私でもこればかりは憂鬱になる……国民達が丹精込めて育てた作物を見知らぬ魔物にくれてやるというのは……だから――」


「俺とスラリーナにそのデブーンという強敵(ボス)を倒して来てほしい……でしょ、王様?」


「フフ……ガッハッハッハ! まいったなこれは。そうとも、無理を承知で頼んでいるのは分かっている。だが魔王の配下を倒せるのは君とスラリーナ君の二人だけなのだ! 頼むこの通りだ!」


「「「我々からもお願いします!」」」

「「救えるのはお二人だけなんです!」」

「「どうかこの国の未来を! どうか!」」


 うおおっ……なんとも凄い光景だな。

 兵士や兵士長だけでなく俺達なんかより断然偉い筈の王様まで頭を下げるなんて……もしもこれを断ったりなんかしたら即処刑台送りだな。


「マ、マスター?」

「そんな不安そうな顔するなってスラリーナ。大丈夫だから。別に断ったりなんかしないって、何故なら俺達は正義の味方だろう?」


「えへへっ! それでこそマスターなの!」


 あらぁ、もうやだこの()可愛い! 最高!

 もっとこの純粋で眩しい笑顔見ていたいっ!


「よし……じゃあ返事といこうかな?」


 まあなんとも王道的なパターンだが、俺達は元よりあのバカ命名神のお告げでこのリッツァーニャに潜む悪を退治する為にやって来たんだ……。


「ブラストル王、頭を上げてください。別にそんな大仰に頼まれなくても俺達の返事は最初から決まっているんですから。だから――」


 さあ早く承諾の返事をしよ――


「そこで、もしも……だ。引き受けてくれるのであれば私も王として約束しよう。君達が見事にデブーンを退治してくれたその暁には――」


 へっ……いきなり何だ? 約束?

 別にそんな気を遣わなくてもいいのに。

 俺達は元々この国を救う為に来た――


「周辺の交友のある国から男性を虜にしてしまう程の()()()()()()()を連れてきて、国をあげての盛大な宴会を催そうではないかっ!」


「分かりました! やります! この魔物使い《ああああ》絶対に退治させていただきます!」


「にゅにゅっ!? マスタァッ!?」


 いよっしゃあ! 俺達に全部任せてくれっ!

 デブーンだかバブーンだか知らないがボッコボッコにして踊り子さんのセクシーなおっぱ……おしり……()()を楽しませていただきますよっ!


「ちょ、ちょっと……マスターってば!」


 許せ……同志スラリーナよ。

 確かに理由こそ不純だがそれでこの国が助かるならいいじゃん! RPGの主人公だってたまにお礼を貰ったりするだろ! それと同じなの!


「スラリーナ。男にはな恥を捨てても挑むべき戦いがあるのさ……だから今は黙って俺に――」


「マスター、()()出てるよ」


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