表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/69

2 異世界へ



 男は俺の目の前まで来るとこう言った。


「やぁ、()()()()チャンスが欲しくないかい?」


 その男は絶望の淵にいる俺とは対照にニコニコしながら話しかけてきた。


 あぁ、夢か。そう思った。

 夢でもなんでもいい。全部が夢だったらいいのに。思考が現実から離れ始める。


「……君は何を望む?」

「奈々」


 呆然としながらもその答えにだけは即答だった。


「君は失敗した。大切なものを失ってしまった。それはどうしてだい?」

「弱いから……俺が、弱いからっ!」


 心が壊れていく。自分のせいだと自覚していく。悲しみと怒りと喪失感が俺の心を支配する。


「どうしたい?」

「もう一度、奈々に会いたい」


 そんな事は無理だって事くらい分かっててもそれを望んでしまう。

 夢なんだ。我儘言ってもいいだろう。


「それがもう君の知る彼女でなかったとしても、会える可能性が限りなく可能性がゼロに近かったとしても?」

「それでも……」


 0じゃないのなら。そう考えていた俺に、

その男はひどく優しい顔をしていた。

 その男はクリーム色の髪に青い瞳で、イケメンでもないし不細工でもない。パッとしない顔立ちだ。


「無限にある命は、いくつもの世界を輪廻しているから、運が良ければ会う事ができるかも知れないんだ」

「りん、ね?」

「そう、だから君の知る彼女ではないかも知れない。でも魂は同じはずだ。もし、見つける事ができれば、だけどね」


 可能性が低いと言った意味を理解し始めたところで男が再び話し出す。


「御察しのとうり、同じ世界に輪廻したとしても姿形も違えば、何処にいるかも分からない。そんな中で彼女を見つけられる可能性は……天文学的数字だね」


 0じゃないなら。何兆分の1でも希望があるのなら。俺はそれに掛けたい。


「でも、君を輪廻させるには条件がある」


 心が読めるのだろうか。言葉にしていなくても会話が成立している。


「一応神だからね?」


 神、か。夢にしても酷いな。でも今はそれに縋るしかない。


「それは良かった」

「それで、条件って?」

「先ず君の転生してもらう世界についてだけど。魔神という神が支配しようと企む世界なんだ。侵略が終わると隣の世界、そして隣の世界、次々と世界を侵略して神々の世界まで辿り着き、神々を滅ぼすつもりなんだ」


 やっぱり夢かも知れない。仮に本当だったとして、俺に魔神とやらと戦えと言っている様だ。


「そのとうりだよ」

「小学生にも負ける俺が、そんなの……」

「知ってるよ。でも、君にはギフトスキルを3つも与えるから」


 何をしてくれたとしても、神を倒すなんて俺にできる気はしない。……ちょっと待てよ? そもそも、相手が神なら他の神が出向けばいいじゃん。


「それは出来ないんだ、神々は世界に直接干渉してはいけないからね。けれどもそれを破った魔神を放置するわけにもいかない。苦肉の策で各神々が1つずつ魂を魔神のいる世界へ輪廻させて、その転生者達に魔神を倒してもらおうって訳」


「神ってのも大変なんだ。もっと気楽なもんかと思ってたけど」

「ははは、本来は暇な役の筈なんだけどね……君たちの言葉で言うと人間関係って言うのかな? それが良くないんだ。それに神々も万能じゃなくてね」

「それでも俺にチャンスをくれた貴方は俺にとって間違いなく最高の神様だよ」


 神は、少しだけ哀しそうな顔をした。


「ありがとう」


 神が俺を他の世界へ輪廻させる理由は分かった。けど、どうして俺なのかが分からない。小学生にも勝てない俺が選ばれる理由だ。勝手な予想だが、奈々の方が優秀だったろうに。


「確かにね、実を言うと僕は彼女の魂を追ってたんだよ」


 やっぱり。


「彼女はね、ギフトスキルを17個も持てたんだ。それくらい凄い魂をしてたんだよ」


 17個? 確か俺は……3個。


「普通は1つでも凄いんだけどね、彼女はズバ抜けてたよ。彼女が魔神の世界へ行ってくれたら……はっきり言って化け物だね」


 言い方は酷いが奈々を褒められて悪い気はしない。むしろ誇らしいくらいだ。


「君は知らないだろうけど僕は彼女と会ったことがある。君に話した事そのまま話したら即答で断られたよ。離れたくない人が居るんだって言ってたよ。勿論、僕と会った記憶は消したから、彼女も知らないけどね」

「そんな事を……」

「それでも諦めきれなくてね、ずっと見守ってたら……この状況でしょ? 可哀想になっちゃってさ」


 奈々は、俺を選んでくれた。俺と一緒に居たいと願ってくれた。そんな奈々は最後に手を離した時、何を願ったのだろう。俺に1人で生きろと願ったのだろうか。


「だから僕は君にチャンスをあげるんだ」


 落ち着いたと思ってたはずなのに涙が止まらなくなった。


「僕も君の事をずっと見守ってたからね。彼女と一緒にだけど子供の頃からみてたんだよ?」


 親、みたいな感じなんだろうか。父さんや母さんから見たら俺も死んでしまったことになるのかな。でもごめん。俺は行くよ。


「そうだね。御両親は悲しむかもしれないね」

「俺の親はこの事を知ったら絶対に言うさ。『今度は守って来い』ってね」

「ははは、そうだろうね。君の身体は魂と一緒に今の世界から帰るから、行方不明扱いになると思う」


 身体も残らないのか……それだと余計心配を掛けてしまうな。俺の事を探さなければならなくなってしまうのだから。


「やめておくかい? やめるなら今しかないよ」

「いいや、大丈夫」


 きっと分かってくれる。


「うん、そうだね」

「それで、どうしたらいい?」

「先ず、君にはスキルを1つだけこの中から選んでもらうよ」


 そう言って本を手渡してきた。


「これは、僕がお勧めするスキル集だよ。魔眼やら魔剣やら聖剣やらすんごいのが一杯さ。でも注意して? 選べるのは1つであとはランダムになるから。これも干渉し過ぎてはいけないとかなんとかで決められてるんだ。ごめんね」


 それとと前置きをして


「転生後は記憶がないから難しいスキルはやめておいた方がいいよ?」


 待って欲しい。記憶がない? それじゃあ奈々を探すこともできないじゃないか。俺は渡された本を開くことなく即答で答えた。


「記憶」

「……いいのかい?」

「ああ」

「まぁ、そう言うと思ったよ。だから敢えて忠告したんだけどね」


 何でもお見通しか。


「でも、僕はね? 新しい世界で、新しいものに触れて、君にはもっといろんな事を知って欲しいと思ってる。それこそ彼女以外の女性の事も。そう言う意味も込めてもう一度チャンスと言ったんだ。だから彼女のことばかり考えるのもいいけど、できたら僕は楽しんであちらの世界で君に人生を送って欲しい。勿論、魔神は倒して欲しいけど、でも最悪それは諦めてもいいよ。他の転生者がなんとかしてくれるさ」


 にっこりと笑いながら語る神はまた、ひどく優しい目をしていた。


「あと他の神々について説明しておくよ。記憶を持って行くなら知っておくといい」


 そう言って神の知識などを教えてくれる。


「魔神を含めて神は10人。獣神、龍神、海神、天神、森神、土神、巨神、邪神、人神、ちなみに僕は人神ね? つまり魔神を抜いて全部で9つの魂が君の行く世界に転生される。彼らに記憶はないから、導いてあげるといいよ」

「転生者かどうかわかる方法は?」

「それは大丈夫、明らかに異質な力を持ってる筈だから。できればその人達を集めて魔神に立ち向かってほしい。その方が勝率もグンと上がるだろうからね」


 神は少し申し訳なさそうな顔をしたあとさらに語る。


「けど気を付けて欲しい。もしかしたら裏で魔神とつながっている神も居るかもしれないから、裏切りにだけは気を付けて欲しい。そんな事はないと、信じたいけれど。僕も正直今回は他の神々を疑問に思う事があるからね」

「ありがとう。でも俺たちの様な転生者に記憶が無いって事はどうやって魔神を倒す使命を背負わせるつもりだったの?」

「転生者達は勝手に強くなってくから、周りに魔物が現れれば、勝手にそれを救済するように行動する。そんな事を続けてたら勝手に魔神まで敵に回して居るって計画だったんだよ。他の神々も記憶なんて使えないスキルより強いスキルを渡したいからね。持てるスキルも限りがあるし」


 何だか適当だなぁ。


「それじゃあそろそろ転生を始めるよ。短い間だったけど君と話せてよかった。楽しかったよ。君に幸あらん事を」

「もう、会えないの?」

「神は世界に対して不干渉なんだ。だからもう会えない」

「なんか、兄貴、みたいに思えて寂しいけど、仕方ないか」

「……もう、可愛いなぁっ! 本当はいけないんだけど……」


 神は俺の手を握り何かを祈るように目を閉じた。フワッと包まれた手のあたりが光る。続いて暖かくなる。


「ゴッドラック」


 滅茶滅茶いいこと言ってたのに最後に下らないダジャレを言って神は消えた。


 俺は眠たくなったので、そっと目を閉じて眠気に身を任せることにした。




ーーーーーーーーーーーーーーー




 ここは……どこだ?


 目を覚ますと見慣れない女性が泣いていた。はっきりとした姿は見えない。寝起きのせいか、なんだか視界がぼやけている。


 近い。近すぎる。どうして横で寝てるんだ? まさかと思うが、これ、あれか? 朝まで飲んで目を覚ましたら隣に知らない女的なあれか? おいおい転生して早々にそりゃないよ神様。


 何はともあれ転生は本当にしたみたいだ。記憶もしっかりあるし、良かった。

 取り敢えず泣いている彼女に何とか落ち着いてもらおう。


「おぎゃぁあああぁぁ!」


ーーあれ?


 なんか上手く話せないな。これじゃあまるで……


「お疲れ様です。良かったですね! 元気な男の子ですよ〜!」

「良かった……無事生まれてきてくれてありがとう。頑張ったね。私の……赤ちゃん……あなたの名前はアルディよ。ね? あなた」

「あぁ、頑張ったな、ディーナ」

「ありがとう。貴方の名前のアルフレドと私のディーナ。何度聞いてもいい名前ね。アルディ」

「あぁ、そうだな。ずっと考えてたからな。男の子ならアルディ。女の子ならルーナって」

「あぁアルディ……どうか元気な子に」


 俺は薄れる意識の中思った。そうか、輪廻転生って言ってたな。転移とは違う、よな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=973208053&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ