3 シーネ村にて1
さて、いよいよ異世界へやってきました。
なんとか無事に護を異世界へ連れてこられましたよ!
これからゆっくりにはなるかと思いますが少しずつ更新して、護を成長させていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
こうして俺は、生まれ落ちたのだった。
自分が産まれ、祝福される所を間近で見る事はなかなかレアな体験だろう。
順調に異世界ライフを送りたい所だが、世の中そんなに甘くない。そう、生まれてすぐ問題が起きたのだ。
赤ん坊の頃から前世の記憶がある。と言うことは、見知らぬ女性の乳を吸うと言う事だ。俺は15歳であって無論、経験もない。ピュアなんだよ! マジか? マジなのか? い、いいんだな? なんて授乳したものだ。
冗談はさて置き、それは正直直ぐに慣れた。科学が発達してるわけじゃないから粉ミルクなんてあるはずもなく、飲まなければ当然死ぬんだからもう飲むしかない。
誤解はしないで欲しい。決してやましい心なんかない。決して。
本当の問題は魔法を使う事だ。折角前世の知識があるんだから有効活用したい。よくあるアニメや漫画の設定では赤ちゃんの頃から魔法を使いまくる事で魔力が無双する。と言うものがある。俺はこれを試そうと思う。が。
ーーー俺、魔法なんて1つも知らないんだけど?
魔法があるのかどうかは知らないが、魔神、魔物とか言ってる時点であるよね。魔法。
まさか素手で魔神を殴り倒せ。なんてシュールな光景は嫌だ。
何事も挑戦あるのみと言うし、兎に角やってみよう。
初めにやったことは、手を伸ばして魔力? が有るつもりで力を込める事から始めてみる……
ーーしかし、何も起きない。
何かが違うのか? こんな時前世ならスマホでちょちょいのちょいってなものだが、この世界には無い。と言っても乳飲子である俺が持ってるわけもないのだけども。
人に聞こうにも、声が出ない。それに魔法の使い方なんて聞いたら気味悪がられてしまう。
産まれたての赤ん坊が魔法を教えてくって言うんだから当然だろう。
こんなにも時間があるのに何もしないなんて勿体無い。何かできる事はないだろうか。暫く思考を巡らせる。
今、俺にあるのは前世の記憶と他ゴッドスキル2つ……
スキルの効果か記憶の影響か不明だが1つだけ変わった事がある。
本来、目というものは1歳の頃まではほぼ見えないと聞いたことがある。それに対して、俺はほぼクリーンに見えている。耳だって産まれた瞬間から聞こえていた。言葉も直ぐに理解できた。
はっきり言って異常だろう。【成長速度何倍】みたいなスキルだったら嬉しいけど、そんなチートスキルが都合よくあるのだろうか。
その辺りは後々調べていくとしよう。
考えて見たもののやれる事はなく、時間が勿体無いので、魔法の練習を再開する。
今度は魔力を放つ感じから纏う感じでやってみた。
ーーーしかし、何も起きない。
赤ん坊だから魔力量が少ないのかもしれない。
纏ったり流したりするのではなく、銃の様に細かく勢いよく発射してみよう。そうすれば魔力が少なくてもある程度出力が出せるだろう、と言う発想だ。
うっ! とっ! はっ!
ーーーしかし、何も起きない
こんなことを試しては失敗。試行錯誤して試して、失敗。これを繰り返してみても成果は上がらず、知識がある分やる事がなければ、暇が地獄だ。
学生時代にやる事ないのに無駄に長い夏休みが苦痛だった事はないだろうか? 今の俺はきっとそれだ。
既に産まれてから1週間。こんな事を繰り返しているのだから。
毎日、毎日、やる事はこれしかない。今日も魔法の特訓だ。外はあんなにいい天気だと言うのに。
俺の心は曇りだよ。
今日も訓練しているところにディーナがやって来た。時々様子を見にくるのだ。
ディーナは20歳前後で中々に綺麗どころだ。髪はクリーム色で結ばなければ腰の辺りまであるだろうが、いつも1つ結びにして右肩から前に流している。目もパッチリしてて少しつり気味でテキパキしてそうな印象を持つ。普通に美人。
チャームポイントはそばかすだ。
対してアルフレドは歳こそ25の手前と言った所だが、髪はかなり赤っぽい黒髪でボサボサ頭。目は垂れ気味でやる気のない面構えと言うのが1番しっくりくる。ブサイクでは無いけどパッとしない感じだ。
いったい、どうやってディーナを捕まえたんだろうか? 不思議だ。
「あら、アルディは元気ね? 1人で遊んでたの?」
実際なんの魔法も発動していないし、側から見たらただ手を伸ばしているように見えるだけだろう。それは大人から見れば手を伸ばして遊ぶ赤ん坊の様に映るはずだ。
「本当に可愛い。天使ね。」
ディーナは凄い。まだ俺を産んだばかりなのにもう家事をやっているのだから。
「あーぁー」
言葉だけは何故か話せない。
「寂しいのね? アルディはお母さんと居ないと寂しいのね?」
「……」
「やっぱり! 泣き止んだわ!」
いやいや、最初から泣いてないんだけどね。
「本当に、アルディはお母さんが居ないとダメなんだから〜」
まぁ、確かに凄いと尊敬はしてるけど、ご覧のとうり親バカだ。全身を布に包まれてディーナの背に乗せられる。所謂おんぶという形だ。
何時もならこのまま行ってしまうのだが、今日は一緒に連れて行くらしい。
「ごめんなさいね? 遊んであげる時間は無いから、お母さんと一緒に家事をしましょう」
どうやら訓練は一度休憩の様だ。家の中を見回る事ができるので丁度良い。
そう言えばアドルフは何をしているんだろうか。産後のディーナに働かせて仕事かな? まぁ3人家族の様なので仕方ないか。
アドルフを注意して見ていたが、毎日剣を持って家を家を出るので、兵士か冒険者だろう。休みの日は庭で剣を振っているし、子供が産まれたばかりで張り切っているのかも知れない。
剣が存在する事から考えても、やはりファンタジーな世界なんだと思う。故に俺もアドルフが兵士か冒険者だろうと思ったし、そうあって欲しい。折角の異世界だもの。男の浪漫だろう。
大人な考えをすると、家庭を持っている以上安定している兵士として働いていると考えるのが妥当だろう。
もう少し体が成長したら父に剣を教わろう。きっと喜ぶだろう。前世では親父に遊んでもらったり一緒に何かした記憶はあまりしない。忙しそうにしていたから仕方ない。
急に〝ぼうっ〟っと音がしたので驚いて音源を見ると、なんとディーナが魔法を使っていた。
おぉ、なんてこった。
こんなに近くに魔法のお手本がいたなんて……
実際ショックよりも喜びの方が大きかった。魔法は存在するんだ! と小躍りでもしそうな気分になる程に。立てないけどね。
盗める所は盗んで1人で特訓!! と意気込んでディーナの手元を、魔力の流れなんかが分からないか? と見続けたがさっぱり分からなかった。
俺は魔法に向いて居ないんだろうか。今日の夜、みんなが寝静まってから特訓するとしよう。
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ベッドの上で今日のディーナの魔法を思い出す。
辺りはすっかり夜になり静けさが辺りを支配する。田舎の村なのか街灯などは無く、周囲は殆ど何も見えず、月明かりだけが頼りだ。
電気なんてある訳もなく、当然と言えば当然か。
静かな空間の中でじっくり考える事ができそうだ。
さて、俺には何がたりないのだろうか。ディーナと俺、何が違うんだろうか。暫く考えた結果、明らかに違う所を見つけた。
詠唱だ。
俺は手元の動きや魔力の流れが見えないかと集中して見ていたが、ディーナは何やら呟いていた様な気がする。独り言か何かかと聞き流していたが……こんな単純な事を見落とすなんて。
気が付いた所でこればかりは困った。詠唱なんて知らなければできないだろう。なんとか詠唱の代替え案は無いだろうか……
そもそも詠唱をしなければならない理由はなんだろう。
ーーー暫く考えて思い出してきた。
イメージだ。
詠唱は魔法を構築する時に基盤となるようなもので、プログラミングみたいなものだと何かの小説で読んだ事がある気がする。あくまでその小説の設定のお話だ。しかし今の俺には判断材料が何も無い。藁にもすがる思いで参考にするしか無い。
よし、もう一度整理しよう。
その小説によると……
詠唱とは、プログラミングの様なもので、魔法の属性やカタチ、性質に至るまで、イメージをしなくても魔力に工程を組み込み、発現させる事が出来る。とかなんとか。
簡単に言えばレシピみたいなものだろう。材料は魔力でレシピが詠唱、レシピさえあれば、必要な知識がなくても魔法が出せる。誰でもレシピどうりにやれば大体似た様なものができる。
材料の魔力が多ければ出来上がるものも多い。
こんなところか。勿論微妙な加減の違いで出来栄えもかなり違ったりする事も有るだろう。
つまりレシピを知っていれば料理ができるのと一緒で、魔法の場合はそれをイメージに置き換えて考えれば良いだろう。
『イメージするんだ自分の中の魔力が炎になるのを』なんて台詞をよく漫画やアニメで見た事がある。
イメージだ。
今までは魔力の流れや流し方にばかり気を取られていた。よし、そうと決まればやってみよう。
と言っても炎や水じゃあ家が燃えても困るし、ベットが水浸しじゃあお漏らししたみたいで恥ずかしい。光なんて夜だから目立ちそうだし闇なんてなにが起こるか想像できない為、風に決めた。
俺の魔力が覚醒して部屋中の家屋が散乱でもしない限り心配はないだろう。なんてね。
自分の魔力が風になる様に意識を向ける。風は空気の流れ。気圧の違いにより生まれるもの。機械的ではない、自然な流れだ。淀みなく流れた風は何かにぶつかると分散して進みやんわりとその何かを包み、纏わり付いたり、押したり。
ーーーあれ?
今カーテン…が揺れなかったか?
もう一度っ!
ーーー間違いない。カーテンは、揺れている。
やった! 俺にも魔法は使えるんだ!
もう一回!
次はもっと強く!
つい嬉しくなって魔法を連発する。
ーーー
気が付いたら朝だった。どうやら気を失ってたみたいだ。
今日もいい天気だ。今日は俺の心の中も晴れ模様だ。期待とやる気に満ち溢れている。
俺はこれから色んな漫画やアニメの様にどんどん魔力値を伸ばして最強になるんだ! そしてハーレムを作り……
いかんいかん、そんな事をしては奈々に殴られてしまうな。うん。
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魔法が使えるようになって早3年。
今、いったいどれくらい強くなったのだろう? と期待に胸を膨らませて頂けている事だろう。
まぁまぁ落ち着いて、焦らないで。
ちゃんと説明するから。
でもその前に一言、言わせて欲しい。
ーーー申し訳ありませんでした!!
確かに成長はした。
魔法の威力が少し上がった事。どの程度上がったのか? 3メートル先のスカートをめくる事ができるくらいにはなった。
後は持久力も上がった。最初の頃、魔法を打つ事ができたのは1日3〜5発だったが、今では1日10発前後は打てる。
勿論種類も風だけじゃなく、火・水・土・雷の基本は使えるようになっている。
それぞれ、火は手のひらサイズの炎、水はコップ一杯程度の水が出せる。
土は拳大の石ころが出せて、雷は10センチくらい離した手と手の間を静電気? っぽく飛ぶ。
光も試したがカメラのフラッシュ程度に発光する程度だ。闇は怖いので何かあっても対処できるくらいになってからにしようと我慢している。
それぞれ試したが概ね10発前後は打てて、大差ない。
これはディーナが以前使っていたのと同じくらいの威力だ。戦闘では使い物にならないだろう。
結論から言おう。想像以上に成長しなかった。
やっぱりどこまで行っても俺は雑魚なのかもしれない。
いや、諦めちゃダメだ。かの有名な監督も言ってた事だ。諦めたらそこで試合終了。
3歳になって体も動かせる様になってからは魔法と同時進行で筋トレもしている。腹筋30回・腕立て20回、これが概ねの俺の限界だ。3歳児にしてはなかなかのものだが所詮その程度。
強いて言うなら大人のディーナが魔法を詠唱して使っていた所を見ると、無詠唱で魔法が使えるのはかなりアドバンテージなのかも知れない。
しかし今の威力では意味がないので、今後に期待だ。
因みに魔法の威力は大して上がって居ないが、イメージ次第である程度の自由が効くようになっている。
土なんか分かりやすい、細長いものから丸いもの。砂つぶ大から拳大を作ることができる。
石ころを凝った形にしようとすればするほど消費魔力が多いことも分かった。これは他属性も同じだ。
これからの成長に期待するとしたら、記憶以外のスキルだろう。今の所、思い当たる事は成長が早かった事くらいだ。スキルが分かればそれをどんどん伸ばしていこう。
当然スキル頼みって訳じゃない。毎日の特訓は怠って居ない。
魔法は毎日打ち尽くすまで訓練しているし、訓練のやり方が悪いなんてことはない。はずだ。
そして今も家の庭で遊んでるフリをして石を作っている。
「あ〜る〜?」
声を掛けて来たのは、お隣さんのエリーナだ。同じ3歳で俺の方が少々早く産まれたようなのでお兄ちゃんの様な立場にある。
ある、とはアルディのアルだ。
エリーナは金髪藍目の美少女だ。くりくりの目にすっと通った鼻筋。とにかく笑顔が似合う。そんな子だ。俺は前世も今世も美少女な幼馴染がいるなんて相当運がいいらしい。
もしかしたら早速エリーナが奈々なんじゃないか? とか考えてしまっている。
「どうしたんだい? エリー」
「みてみて〜? わんちゃん!」
「ゔ〜っわんっ」
「拾ったのか?」
「うん!! かあいいでしょう?」
エリーはエリーナのエリーであだ名だ。この世界では名前を縮めて呼ぶ事が仲が良いと言う事みたいだ。
エリーナ抱えてる犬? は産まれて間もないようだが真っ黒な毛並みをしていて、犬と言うより狼の様な顔をしている。野生の狼って……この辺りの治安は大丈夫なんだろうか?
「いったいどこで拾って来たんだい?」
「うーんとね、あっち!!」




