自分を殺してください
「自分を殺してください」
そう言って僕の元に来た者がいた
青年「いいが、理由を聞こう。なぜ死にたい?」
来客「自分が死にたいと思う事に理由が必要なのか?」
青年「それもそうだが、殺し屋でいる以上、隠蔽工作も必要なんだこっちは。理由をもらわないと。」
来客「…。」
青年「…言えないか。まあいい。お前、名前はなんだ?」
来客「…実祈だ。」
青年「そうか。僕は叶真。よろしくな。」
実祈「…よろしく。」
叶真「丁度コーヒーを淹れようとしていたんだ。あんたも飲むか?」
実祈「ああ。」
やかんの蓋がカタカタと音を鳴らしている
コンロのツマミを捻り、火を止めた
叶真「ホットでいいか?」
実祈「ああ。」
ドリッパーにフィルターを付け、コーヒー粉をフィルターの中にいれる
実祈「殺し屋がコーヒーって、ベタだな。」
お湯を注ぎながら返す
叶真「別にいいだろう。殺し屋となると急に仕事をする事だってあるんだ。眠くならないようにしないとなんだよ。」
実祈「そうなのか。大変だな。」
叶真「まあな。ほら、あんたの分だ。」
実祈「ありがとう。」
叶真「で、話を戻すが、死ぬ理由が話せないとしても、死因は決めないとだ。どう死にたい?」
コーヒーを一口飲みながら聞く
叶真「墜落死、侵死、轢死、窒息死、圧死、色々あるぞ。なんなら安楽死でも構わないが。」
実祈「なんでもいい。」
叶真「そうはいかないな。何かに決めないと、こっちも上手く進められない。」
実祈「なら…強いて言うなら、溺死かな。」
叶真「なぜだ?死因の中じゃ苦しい方だと思うぞ。」
実祈「殺し屋がそれ言うか?」
叶真「まあな。だが自殺願望があるならサクッと死ねるものを選ぶと思ったんだが。」
実祈「どう死のうが自分の勝手だ。」
叶真「…さっきから思ってたんだが、あんた自分が死ぬ事に対して何も思わないのか?」
実祈「…。」
コーヒーの匂いがする部屋に沈黙が流れる、こういう空気は何度も経験した事があるが、やはり慣れないな
実祈「自分で言うのもなんだが、自分はいい仕事についているし、年収も安定している。」
叶真「ならなおさら理由が聞きたいな。」
実祈「…。」
叶真「なぜ言わない?そんなに言いたく無いか?」
実祈「笑わないか?」
叶真「勿論。人が死ぬ理由に対して笑うのは不謹慎というからな。」
実祈「失恋したんだ。」
叶真「…。」
実祈「一年前、付き合ってた人と別れて。もう死にたくなって。」
叶真「そうか。」
実祈「その時の話、していいか?」
叶真「いいぞ。」
実祈「付き合ってほしい。」
交際相手「…いいよ、これからよろしく」
実祈「ありがとう。これからよろしく。」
-翌日-
実祈「早速だけど、デートしに行かない?」
交際相手「うん、どこ行く?」
実祈「一昨日、抽選で遊園地のペアチケット当たったから、そこ行きたいな。」
交際相手「いいね、てか一昨日?告白したの昨日だったけど、振られたらどうするつもりだったの?」
実祈「振られないって信じてたから。」
交際相手「そっかぁ、流石だね、会った時から自信に満ちてる人だなぁって思ってたから」
実祈「そう見えてたんだ。なんか恥ずかしいけど、OKしてくれてよかったよ。嬉しかった。」
交際相手「うん、じゃあ準備しよう」
実祈「そうだね。」
-1時間-
実祈「着いたぁー!どう?どれから乗る?」
交際相手「早いよー、でもジェットコースターは乗りたいかな」
実祈「じゃあ並ぼう。他のも沢山乗ってみたいし。」
順番が来て、ジェットコースターに乗った
キャストがレバーを下げて車体が動き出す
交際相手と一緒に手を上げながら叫んだらして楽しんだ
実祈「楽しかったぁ!次どこ乗ろうかなぁー。」
交際相手「楽しかったね、んー…あのコーヒーカップとか乗る?」
実祈「乗ろ乗ろ!」
そんなこんなで1日が終わり、次の日になった
実祈「おはよう。コーヒー淹れたけど飲む?」
交際相手「おはよう、飲みたいかも」
実祈「OK。昨日別れた後コーヒーミル買ってみてさ、早速使ってるんだ。」
交際相手「へぇいいね、じゃあコーヒー豆も買ったって事?」
実祈「うん。コーヒー好きなんだ。」
交際相手「そうなんだ、自分もコーヒー好きだな」
実祈「そうなの?気が合うね。」
交際相手「ね、どこのコーヒー豆が好きとかある?」
実祈「そうだなぁ…。」
交際相手とは住んでいるアパートが同じで、隣同士だったから、土日の朝は自分の部屋に来てもらっていた
それからも気が合うようなことが多くどんどん中が深まっていった




