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結婚したいのですが  作者: 響ぴあの
6/6

プライベート再会 【女性視点】


今日は、あの伝説のアニメの限定復刻盤があの店限定で発売される日よ。

私、わくわくですわ。

なんて、浮足立った隠れオタクの私が向かった先に、例の婚活イケメンカウンセラーがいたのです。これは、隠れるべき? いや、話しかけるべき? どうやらお目当ての商品は同じようですわ。

このようなものを買ってオタク女だとドン引きされないでしょうか。

少し待って、話しかけられるのを待とうかな。

だって、そうそう偶然会うことってないじゃない?

早く、私に気づいて声をかけてくれないかなぁ。


あれは、限定品なのよ。数量が決まっているのよ。

なんと今、まさにお目当ての商品を2つも買ったオタク男がいるじゃない。

それでは、私たちの分がなくなってしまう。早めに入手するべく、仕事を定時で切り上げたというのに。彼が近づいてくる。さりげなく、話しかけてみよう。商品をそっと手に取る。


「あら、あなたは」

 イケメンはびっくりした顔をした。声、かけたらまずかったのかな。


「あなたも、これを買いに来たの?」

自然に微笑むことができたかな。


「まぁ……」

少し照れた顔がかわいいわ。


「あと一つしかないので、お譲りしますわ」


「いや、俺はいいですよ。お譲りします。でも、限定DVDは観たかったかなぁ」

これって誘うチャンスじゃなくて?


「一緒に観ますか? 私の家で」

さりげなく誘えたわ。


「でも、お客様とそういったプライベートな交流は、まずいので」

さりげなく断られている。やっぱり嫌われているのかしら。

でも、絶対ファンなら観たいはず。

「観たくないのですか?」

「観たいです」

きりっとした真っ直ぐな瞳が素敵な方だわ。


その限定品を購入し、私の家で鑑賞することになった。

せいぜい三十分程度だ。その三十分が勝負よ。好感度上げないと。


私の部屋には彼の心を揺さぶるコレクショングッズがたくさんあるから話のネタがつきることはないわ。

ちょうど夕食時。彼が特典DVDを見ているうちに、いいお嫁さんアピールするんだから。

こんなに集中力を酷使して夕食を作ったのはいつぶりかしら。


「俺だけ観てしまって、すみません」

「いえいえ、私はじっくり後で見ますから。お召し上がりになってください」

作戦成功ね。日頃の成果を発揮できたわ。


でも、会員とアドバイザーという垣根を越えて、オタク談義に花を咲かせって本当は会社としてはまずいのかしら?

イケメンアドバイザーさん、本当に面白い。気取った男かと思ったけれど、全然違う。


「うまい」

一口食べただけで彼が発した言葉。

うれしい。私のハートは彼の笑顔に射抜かれっぱなしだ。こんなのダメだってことはわかっている。

会員同士を結婚させるのが目的なのに、アドバイザーの男を好きになってどうするのよ。この人だって、きっと理想が高いだろうし、私になんて興味はないはず。つまり、最初からフラれているの。そう考えたら、何もなかったことと同じ。そうだ、最初から私が惚れたとかそういった話はゼロよ。


彼はおいしそうに、あっという間に食してしまった。

「じゃあ、僕はここで失礼します。本当にすみません、ごちそうになっちゃって」


最後にこれだけは彼に言ってみよう。

「じゃあ私のお願い聞いてくれますか?」


彼は少し驚いた顔をした。

「一緒にこれからDVDを見てください」

 一世一代の勇気を振り絞る。

「でも、もう遅いですし、俺があなたの部屋にこれ以上いるなんて、申し訳ないですよ」

やっぱり断られている。絶対、私に興味なんてないんだ。

女として興味対象外なんだ。

でも、もうこんな機会はないのだから、最後に――


「私からのお願いです。隣に座ってください」

彼が私の隣に座った。少し距離をおいてだけれど。

やっぱり嫌がられているのかな。軽い女って思われているのかな。キモイって思われているのかな。


でも、気持ちに嘘はつけない。

好きになれる人にそうそう出会えないのだから。

「あと、もう一つお願いがあります。私と模擬デートじゃないデートをしていただけますか?」


「はい?」

彼はあきれているのだろう。


「やっぱり嫌ですよね」

そんなことわかっていたはずなのに。


「嫌、じゃないですけれど。俺なんかでいいのですか? あなた美人だし」


ちゃんと言わないと、一生後悔する。

「もう少しあなたと一緒に居たいから、お誘いしているのに」


「俺なんかで?」

彼は自分の人差し指を自分に向けた。


「手をだしてください」

手を出すと、彼の手を握った。人生初だ。

「鑑賞中は手をつないでいてください」

「―――はい」

DVDの内容は全然頭に入ってこなかった。


彼のことが好きだから。手を握っただけで、頭は真っ白で、何も考えられなくなっていたのだから。




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