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第五十二話 「ヨット乗りの正体」
「パートナー・・・
Perdon?」
俺はヨット乗りの言うことが
何一つ理解できていない中、
ふとあることに気付く。
それは今、
ヨット乗りが美名城夏帆のことを
下の名前で呼んだことだ。
不自然だ。
学校から海辺に来て
ヨット乗りに話しかけてから
まだお互いに自己紹介をしていない。
こちらがヨット乗りを勝手に
おじさんと無礼極まりない
呼び方をしていただけのはずだ。
美名城夏帆のことを
知っているということは、
まさか、・・・
「まさか」
「そう、そのまさかよタロちゃん。
このおじさんは私の兄なの。」
ヒョエー・・・
発したことのない単語を発してしまうくらい驚いた。
「先輩の、お兄さん」
通りでおじさんと
兄に対して経緯のかけらもない
呼び名で堂々と呼ぶことができたのか。
失礼に変わりはないが、
その呼び名が通るくらい
信頼し合っていてのことだろうと
こじつけて無理やり解釈することにした。
ただ言えることは
俺は美名城夏帆の兄であろうとなかろうと
初対面で目上の人に対して
おじさんと暴言を吐いてしまったことだ。