第三話 「ニヤニヤすんじゃねぇ」
そんな世で、高校初日にして
俺と同じ資質を備えた希少性ある駿と出会った。
きっと俺と同じ立場なのだろう。
間違いない、
この立場での経験が長い俺があいつを引っ張っていってやらなくては。
先輩の気持ちで心を広くし、駿に目をやった。
俺の目は
一秒の
十分の一
もたたない光速のスピードでその瞬間を捉えていた。
奴は楽しそうに隣のやつと話している。
そう、あの時のニヤニヤ顔で。
嘘だろう!?
信じられない気持ちと隣り合わせに、
イケメンだもんな、やっぱりか
と納得せざるをえない現実を受け入れようとしていた瞬間であった。
思いがけないものが視界に割り込んできた。
俺は周りを見渡した。
野郎は野郎同士で
女は女同士で会話を
どこもかしこもしているというのに、
ニヤニヤイケメン野郎はというと
隣にいる野郎だけでなく
女が一人・・
二人・・・三人・・・・
って複数の女たちと会話しているではないか。
しかもニヤニヤ楽しそうに!
俺は必死にニヤニヤイケメン野郎(駿)
に嫉妬と怒りの念力を送った。
俺たちは、同類じゃなかったのかと。
落ち着いて考えてみれば
あいつは選ばれしイケメンだ。
誰がどう見ても明白の事実である。
生まれ持ったパーツが違う。
同類だと勝手に勘違いした俺の思い上がりは、数秒のうちに消去された。
ホームルームの号令がかけられ、
記念すべき高校一日目が終わろうとしたその時、
ニヤニヤイケメン野郎の駿が
相も変わらずニヤニヤしながら
俺のそばに詰め寄ってくるやいなや、
一緒に帰ることになってしまった。
「ニヤニヤするんじゃねぇ」
駿は俺の言葉にニヤリとした。