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異世界でも強いだけでリア充出来る訳じゃない  作者: 脱力呼吸法
第2章 赤の迷宮と骸骨達の騒乱
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迫る戦

恐ろしく遅れてました。ごめんなさい

 第2層~5層までの落盤および将軍子息、護衛二名の死体探索について。調査員三十二名全員死亡。もとの姿とかけ離れた変貌を遂げたのちに斬り殺されたと見られる。この変貌はエルフAの証言によればエルフの秘術に関わるものであり、魔術塔から派遣されたグランドマスターと元王立魔術院死霊術教授セレナも同意したため詳細は、条約によりここには示すことができない。

 将軍の子息と護衛を殺したのはヤシャと称される人物である。交戦したセレン(竜巫兼将軍家メイド長)、キリサキ(六連山傭兵団所属、当時準魔剣級)によれば、ヤシャは魔剣級の使い手であり二刀を得手としていた。また迷宮で変貌した調査員三十二名の殺害もこの人物が行ったと見て間違いない。というのも死体に残る切創が急所を狙い、かつ部位によって斬撃の種類が使い分けられていたためである。その使い分けは的確で多勢を相手に風のように立ち回ったのか大半は切断ではなく急所を切開する手練れの技であった。また検死の結果、ヤシャ自身も迷宮での「変貌」の影響を受けていたためか闘技場で討伐された際の体格と元の体格はかなり異なっている。

 なお将軍の子息と護衛二名の首から下の死体は見つかっていない。


 鋼色をした空が寝不足の霧崎を見つめていた。下ではからからと商売を終えた荷車が引かれていく。この刻限だと地下で冷やした炭酸水の荷車だろう。前に一度だけ買えたことがあるが、それっきりで商売繁盛よろしいですなぁ、といった具合である。上述のここ一カ月の観察の結果に従うならばトーレル事務所の下はしばらく静かになるはずだ。そんな日常を破るようにけたたましさが新しい轍を刻む。その荷は鎧の鋼か、矢柄の木材か。

 ふぅ、と何ともなしにため息が漏れてしまう。

 不穏な空気が街の隅々まで充満していた。早朝未明、早馬に乗った伝令の報告が、この不穏な気配の原因で、霧崎の寝不足の元でもあった。まだ九時頃だというのに太陽が眩しさを主張している。夜通しの死闘もそこそこに霧崎がおちおち寝ていられないのは、トーレルとセレナが防衛に向かったセドリア砦の陥落がすべての原因である。


 

 セドリア砦というものを語るにはまずトゥルン王国の地形から知らねばならなりません。まずトゥルンは大陸から突き出た半島であり、ゴブリンの支配するバルガンの南帯六連山を帝国との境とする王国の名称でございます。ちなみにバルガンとは南帯六連山の北にある帝国の名前であり、その山の名称については実質的な支配者であるゴブリン側は公式には認めてはいないのですが、気づいたときには定着してしまったため帝国と王国の間ではそのように扱われております。

 さて水は高所から低所に流れるという常識に従って、トゥルン王国を流れる大河は、その流れを六連山から発っし、南へ南へと流れていくのですが、そこで地質が変わるのか途中でYの字に分かれるのです。その西の流れの中間あたりに存在するのが迷宮都市でございます。セドリア砦、というのは西の流れの上流に位置する砦で水運の要所なのですがここも迷宮都市も王国に属しているかと言えば微妙です。

 というよりも王室の力というのものが及びづらい、南からの敵との緩衝地帯に出来た都市なのです。確かに王国に税を納めていますし、王国の主張する領地の中にありますが王室の命令に二つ返事ではいそうですかと頷くような都市ではないことは確かです。

 今回のリザードマンの反乱は、東海岸から西に向かって緩衝地域を横断するように起きたもの、と現時点では推察されます。手元の資料によると彼らは三百年前にこの街とその一帯を支配していましたが、王国の始祖に敗れ川を遡って東へと落ち延び、東海岸沿いに領地を貰う代わりに王国に服従しました。我らの歴史と似たところのある相手です。特に今回の行軍は宗教的な部分が大きい、全滅も辞さない侮りがたい相手と言えるでしょう。

 今回の緊急会議の概要を今一度確認させていただきましたのは、ゴブリン傭兵団副隊長補佐迷宮都市担当交渉人サウナルドですよろしく。


 

 戦が起こるとなると兵力がいる。そして実はゴブリンは傭兵団で稼いでいる。故に今のトゥルンには商機がある。ただし今回はことが急なので山から各地に散ったゴブリンの兵団を呼ぶのでは遅い。そのため街にいるゴブリンだけで進退を決め、生還率が6割を超えるようなら冒険者ギルドに協力する。ここまでが会議が始まる前に告げられた方針だった。

 三時間ほどで会議は終わった。

 結果的には過半数が今回の戦争で街側としての参加を表明した。現在街にいるゴブリンは100人で戦闘要員が40人程度だからそれほど大きな軍団ではない。それでも有利と見たのだ。

 まず第一に巨人族でさえ正面突破が困難な黄金城壁をリザードマンの軍では突破できない。そうなると外から通じる迷宮への入り口を通る必要があるが、その入り口はセドリア砦にあるものを使うだろう。だが迷宮内の地形を知らないリザードマンに比べて、四十人のゴブリンは冒険者として迷宮探索に従事していた。把握していない地形はほとんどないと言っていい。

 


 この後オヤジのところでの用が済んだら、馬を手配して想定される撤退ルートの探索に出なければならないと思う。依頼もすでに出ているが戦の準備を整えたい町側からの参加者は少ないだろう。けれども仮にトーレルとセレナが殿を勤めているなら、そのことを考えると霧崎はいてもたってもいられなくなる。

「あー、くそ」

 分からん、畜生。

 敵がくることだけは分かる。敵を切りまくるのはさぞ気持ちがいいだろう。さあそのための武器を入手しに行こう。獣の牙を取りに行こう。



「来たぞ。検査だよな?それから生きて帰ってきたから、雪払いを返す。あとこれまでの代金をまとめて。それから鬼重の影打ちがまだあれば全て戦闘に使えるように体裁には拘らずに仕上げて欲しい。多分、今度の戦いは刀一本じゃあ足りないからなぁ」

「おおう、そりゃ後で詳しく話そう、まずは雪払いからだ。どうだった?」

 説明するよりも見せた方が早いだろうと霧崎は刀身を抜いてかざす。天窓から入る陽光にかざしても刃毀れはただの一点もなく、

「切先を使ったな。そこだけ僅かに引けが入っている」

「そうそう、小手と首筋を斬った。小手のほうは骨まで断って、皮一枚でぶらんぶらんだ。刃引きしてあるからだな」

「ふーん、それで俺のとどっちが良く切れた?」

 ……ああ。暫く間をおいて霧崎は手で軽く手刀を作り、

「雪払だな。オヤジのもよく切れるが、こいつ切れ味は別格だ。刃引きを施したのに骨を断つ手ごたえがほとんどない。一番最初の刀を使っていた時のようだったよ」

「け、ちったあ遠慮しろ」

「すまぬすまぬ。でもとてもいい刀だったから」

「んなこたあ分かってる」

 二人して馬鹿みたいに出来のいい雪払の刀身をしばし眺める。

「おじいちゃん、話が進まないよ」

「おう」

 大量のロングソードを抱えて通りがかかった姪の言葉で、我に返ったオヤジが刀身に油を塗り保管用の白鞘に収めた。

「……そのことで少しお前に頼みたいことがある」

「ん?検査だけじゃなかったのかい」

「いやこれは個人的な頼みだ。凍える竜の息吹というものがゴブリンの住む山にはあるという。それが欲しい」

 単語が何を意味するかは分からないが、何に属するかは察すことができた。

「欲しい?なんでまた?というかそれはなんだ?申し訳ないけどゴブリンの軍事機密なら新参者の俺では到底入手できるものじゃないぞ」

「それに関しては俺が鍛えた剣に、一筆添えれば問題ないと思うぜ。まあその点は任せろ。目的としては焼き入れ後の変化を完全にするために必要だからだ。俺の使う魔力炉で出せる冷却温度ではどうしても超えられない一線がある。その解決策が凍える竜の息吹だ。それから……」

「ああ、それから?」

 しばし親父の目が迷う。どうやら要件を忘れてしまったようだ。それを受けてそのまま黙っているほど霧崎も不親切ではない。

「その、でかい板はなんだい?」

「ああこれか?お前が忘れたのか?見ろ、こいつはお前が討伐したドワーフ製の金属百足の頭部装甲だ。こいつはやべえぞ」

「ん?」

 興奮気味のオヤジが持ち出した頭部装甲はどこかで見たと思いの上、思い出せず、微かに残る斬痕にようやく思い出す。

「あ~、」

「そう、この焼き入れ技術の凄まじさだ。一抱えもある松の木を両断する斬撃を受け、その衝撃をしなやかに拡散させて受け流す靭性。この街一番の甲冑師でもこうはいかんぞ。これを武器に応用すれば」

 あるいは防具に応用すれば。


 ぽん、とオヤジが手を打つ音。

「って、違うわい。ああ……思い出した」

「呆けたか?」

「はは、次の刀が折れないように祈れ。……それともう一件、本題の刀を試してもらいてえんだが」

 そう言ってオヤジが取り出したのはこの地方でよくみられるサクスを少し長くしたような、ロングソードの平均サイズと同程度のありていに言えば日本刀に似た刃物だった。

「リザードマンの集団ががこの街を襲うという知らせはもう聞いたか?。この街の兵士が使うロングソードではリザードマンの鱗革を破るのに物足りないのではないかという懸念が冒険者ギルド本部から届けられた。知り合いの伝手で持ち込まれた仕事だが、この試作品を検査して欲しい。庭の裏に今朝方手に入れたリザードマンの死体が吊るしてある」

 なるほど、たしかに剣であればどちらの刃でも刺突と斬撃の両方をこなせるように両刃のまっすぐな刀身をさらに薄くしなければならない。必然的に重量は落ち、それに比例して強度も落ちる。対して片端の刀であれば峰側を厚くすることで強度の確保も可能というメリットがある。もちろん剣の戦闘応用力には一歩劣るかもしれないが、継戦能力というのは重要だろう。

 ただし問題もある。武器を替える際に最も気になる点の一つに重心の変化がある。重さよりも重心がどこにあるかで用いる戦法も大きく変わる。例えば手元近い場所に重心があれば一撃の威力は軽くなるが切先の変化が自在になる、一方で霧崎の使う刀のように重心がやや先にあれば一撃の威力は上がるが、変化の自由度は下がる。ただし重心を前気味にして切先から三分の一を残して刃を引き、剣を棒のように使う技法も存在するために一概には言えないが……。

 このサクスは元重から先重までの厚みがこの地域で普及しているものに比べると厚く、重心が先寄りなため一撃の威力を重視した戦法に変える必要が出てくる。また長さはそれほどでもないため棒のように扱うには適していない。そういった戦術の変化がどこまで受け入れられるか。

 スクラマサクスを観る。光にかざせば磨ぎ込まれた焼刃と、それとは別に鉄と鋼の鍛接部が見える。 

「これ構造は?」

「刃金を軟鉄で包み込むやつ、大量生産向けに手順の簡略化と強度確保を考えたらそれがいい。最初に鉄鋼鉄の三枚でプレスした板を作ってそれを適当な大きさに切断、打ち延ばして熱処理してってなもんだ。雪払みたいなのを一々作っていたら予算も時間も足りないからな。それにこの構造なら研ぎ減っても刃物として機能する」 

「ああ、納得した」

 勧められるままにサクスを手に取ってみる。柄は片手半剣で両手も片手も使い分けられる程よい長さ。刀身はかなり厚みがある割にはバランスが良い。反りは刃にのみあり刀身全体でみると直刀に近いのは慣れていない者が直感的に使っても平打ちしないための工夫である。刀身全体が反るほどに柄と斬撃部位のズレが顕著になるため刃筋を通すのに技量が必要になるのだ。

 刀身に刃で切りつけたような文字がある。竜言語の一種であるルーン文字だ。意味は再生と戦神の加護。比較的珍しい再生の文字は剣が長持ちするようにとのことだろう。

 裏庭のリザードマンの死体で試す。刃筋を通して叩きつけ、勁を発さず勢いだけでどの程度食い込むか。刃味は刃持ちをよくするために刃角を鈍くしたのか刀よりもさらに斧に近く、リザードマンのまだ張りある筋肉がばつんという感触とともに易々と割れる。刃味は流石に特注品には一歩劣るが実用には十分満足いくもので、勢いだけでリザードマンの骨まで食い込んだ。藁、円盾、鎖帷子、キメラのサーコート、無脚竜の鱗、といったあらゆる素材で試し、アダマンタイトの錘を叩いたあたりでようやく棟がわずかに歪む。刃はまくれはするものの欠損はない。まごうことなき戦場の剣だ。とはいえど、これはオヤジの腕あってのもので量産化すれば品質はかなりバラツキが出るのではないか。

 そんなことを伝えると、親父がこの街の職工を舐めるなと豪快に笑う。しかり、この街は冒険者の街。実戦に選別される街。下手な鍛冶は残らない。

「これは、そうだな。この製造法をゴブリンに渡した方がええんとちゃうか?だってそれなりに高品質な剣をぱぱっと量産できるわけでしょう?絶対名刀一本より価値あるですやん」

「おいおい、おめえ口調がおかしくなってるぞ。大規模な取引ならそれでいいんだが、ごく個人的な作刀の材料集めだから名刀一本でいいんだよ」

「それもそうだ。あ、でもそうするとだ。この刀はどの程度作る予定なの?場合によっちゃあ影打ちを、使えるように仕上げてもらうことも無理でしょ?」

「うん。まあ、そうさな。要はあれだ、最低限柄が握れて鍔があって振り回せればそれでいい、ってのが今回のお前の要求だろ?そういうのだったら仕事はずっと楽だ」

「そうそう、それで料金の話に移るけど」

「一本につき金貨10枚だな。当たり前だけど前払いだ。死人から回収はできねえ。影打ちで一応実用のものは今五振りだから50枚だ。ここで払えないなら諦めな」

「だよなぁ、三十枚しかないから、刀のほうは二振りだ。あとは十枚で買える槍」

 あいよ、と頷いてオヤジが奥への扉を開ける。

「槍はこっちだ。でも既製品でいいのか?」

「いい。ここのものは一級品だから。あとすぐに欲しい。それからこの街のものだと分かる旗を取り付けたい」

「はは、そうかい。……トーレル達が気になるか?」

 どうやら既に霧崎の目的は見抜かれているようだ。セドリア砦の陥落で街道は敗残兵で埋め尽くされることだろう。仮にリザードマンが追撃部隊を出していたなら、さっさと応援に行かなければ大虐殺になる。特にトーレルとセレナの二人は疲弊したまま殿を務めているはずだ。一刻も早く力になりたい。

「ああ、気になるね。悪いかよ」 

 いや、と親父は意地の悪い表情を浮かべた。ふとそこで霧崎はあることを思いつく。

「二本買えるか?連れがいるんだ」

 その言葉に親父は心底驚いたように目を丸くして、

「へえ、いやお前トーレル以外に関係を気付けたのか」

「知らん。向こうがどう思ってるかは知らんが俺は友達だと思ってる。まあ何から何まで俺とは正反対だが、暇そうだからな。付き合ってもらうことにした」

「へ、じゃあお前も生きる目が出てきたな。二本目の分はツケにしといてやろう」

 ちょっと待ってろと親父は奥の作業場に引っ込む。




 「やってくれたな……」

 窓から差し込む玲瓏たる月の明かりを受けて、男は酒杯を傾けた。酒は飲み過ぎれば毒になるが少量ならば闘志を燃やす燃料となる。冒険者たちが酒を好む理由の本質もそれだろう。

 エルフの秘術を盗み、それを再現すること。何度でも使えるようにすること。それがこの街を守ることに繋がる。先代から受け継いだギルドマスターの使命である。魔剣もエルフも竜巫もエルトリア流も盤上の駒に過ぎず、調査隊が死霊術師の成果を総取りする予定だったというのに。

「まあ、次の一手を打つか」

 リザードマンの侵攻は迅速である。彼らは雑食でたいていのものなら食料とすることが出来る上に、武具の造りは簡素にして軽快、天然の鎧である鱗皮が鈍らな剣筋程度なら弾き返す。特筆すべきはその機動力だ。彼らは水を恐れない。川というのは人間には大きな障害になるが彼らにとっては道と同義なのだ。

 この巨大な城壁で囲まれた街には水路が多い。泳ぎの達者なリザードマンはピンポイントで天敵と言えた。竜牙兵の代用品として竜を遠く祖先にもつサーペントやワームの牙による代用研究も進められているがいずれにしろ時間が足りなかった。

「この日のために、この時のために」

 将軍との繋がりを作り、エルフを敵に回しかねない禁忌の術にも手を伸ばしていたというのに、いきなり現れたイレギュラーに計画の主要部分を潰された。

 討伐依頼として出した試験型スケルトンの戦闘力は通常D-の一般人に毛が生えた程度の質だが、死を恐れないという特性と従順さの二点において陣形を組めばC+からB-の冒険者に匹敵する。その一方で数と質のバランスが最も良いBクラス冒険者の戦闘力は平均的なリザードマンとほぼ同等だが、網目のように広がる街の水路を神出鬼没に動き回る軍勢と戦うには荷が重い。何より冒険者達は軍ではなく、悪く言えば商売仇の寄せ集めなのだ。いくら強い個が集まろうが寄せ集めである限り、それらは互いの力を削ぎ合う烏合の衆に過ぎない。重要なのは海原を進む帆船のように個々の権能が統合されていることだ。その点、死者の軍団には余計な自我がない。粛々と命令に従い任務を遂行し死んでいく。その軍隊は全のための一として全く無駄なく殺戮を遂行するだろう。怯まず、躊躇わず、驚かず最短で。

 いやはや……欲をかき過ぎたか。

 盃に男の笑みが写った。月の裂け目のような不吉な笑み。

 エルフの死霊術による個体性能の更なる強化は計画を凍結。別件で勧めていた「踊る剣」の計画を優先するべきだと男は判断する。

「そういうわけでヤシャよ、仕事だ。夜行を集めろ。計画は「踊る剣」に変更する。計画の主軸に遺恨を持つエルトリア流は解体しろ。例のアレを持たせて部隊を作らせろ。彼らも名声を取り戻したがっているだろう。それから魔剣キリサキクロウの戦闘力とカタナの威力の流布だ」

「御意、」

「敵はセドリア砦から通じる水路沿いに遡ってくるだろう。だから戦闘は青の迷宮に範囲が限られるはずだ。至急調査団を出してもう一度、外に繋がっている通路が増えたり減ったりしていないか確認する。非公開の部分は夜行を回して最新のものに更新しろ。そのうちのいくつかは爆破して埋めてしまえ。進入路を限定するんだ。それがすんだら、残った部分を新たに発見された地形として発表する。同時に新通路と旧通路での討伐依頼を出して、新通路側の報酬を旧通路の二倍に」

「重ねて御意」

 と男の声に応えるように月明りを影が遮る。それも一瞬のこと、命令を受けた()()()のヤシャは蝙蝠のごとく夜の街に飛んだ。 


 リザードマンはその生命の根拠に原初の人面竜を母体としている。彼らの生活は原初の竜に唯一人啓示を受けた一人の聖人の教えに規定されている。信仰とはリザードマンで、リザードマンとは信仰だ。だから、彼らは彼らの司祭が下した予言に従い、真っすぐにその場所を目指した。

 その場所とは即ち信仰の要所だ。征服者の城によって地下深くに封じられた彼らの古き聖地だ。聖なる吊るし木の丘、卵殻の残骸と司祭は伝える。

 七日七晩にも及ぶ戦いの末に聖地への道は取り戻された。

 あとは戻るだけだ。


 

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