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ゲーム脳盗賊、闇を狩る。  作者: 土の味舐め五郎
第二章 ~アシバ皇国:白ムジナ盗賊団~
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ガメスの俯瞰:三人称視点


   △


〈三人称視点モードでの感覚に慣れていただくため、村から脱出するまでの間は通常の視点に戻れません〉


 お馴染み、というには久しぶりの電子音がヤギリの頭に響く。気のせいだとは思いつつも、彼はこのチュートリアルの音声から以前よりも冷淡に近い無感情さを感じていた。


 それにしても、どうしてこのタイミングで?


 慣らしだというならもっと安全な状況でやるべきだろう。万が一うまくいかなかったらどうする?なにかあればアルミナ達に救援を求めるという手もあるが、手荒なことはしたくない。男達だけなら遠慮はしないが、おそらくは何も知らされていないだろう女子供の事を考えると躊躇ってしまう。

 不安は多少あるものの、じっとしているわけにもいかない状況のヤギリは恐る恐る、屈んで歩き出した。


 ペイダンの家に忍び込み荷物を回収するのは容易だった。彼の妻と息子は起きていたが、現在のヤギリのステータスやスキルを持ってすれば恐れることはない。

 問題があるとすれば三人称視点での行動だが……。

 

 素晴らしいな、これは。


 ヤギリは感動していた。

 最初の数分こそ、肉体の感覚はそのままで視覚情報が通常と違うことに違和感があったものの、あっというまに『操作感』の快適さに魅了され気にならなくなった。

 また、単純に視界が広くなっただけでなく、360°顔を動かさずに視点を自由に変えられ、且つ自分の視覚系ステータスやスキルに応じて生物や物体などにさまざまな補助的表示が為される機能があまりにも便利だった。

 なによりヤギリが「これだよ。これ」と思ったのは、機能面以外の部分だ。

 視界に常時映っているミニマップや会話ログ、体力バーなどの各種情報の表示とその中心にいる自分の姿。

 まさしく自分がゲームの世界に入り込み、プレイヤーとして動いている。

 そう実感できたことが、嬉しかった。


 通常の視点ではあまりにも現実感が強かったが、三人称視点のおかげで、凝り固まった感覚からいい具合に解放された気がする。

 もしかしたらガメスは、もっと早くこの心境にいたって欲しかったんじゃないか。ゲーム感覚でやっていいと、言っていたしな。

『ガメスの俯瞰』を用意していたのは、便利な機能を与えるとともに俺の意識を改善するためでもあったのかもしれない。 


「遊戯の神なだけあって、細かい事をいろいろ考えてるんだな」


 ヤギリは小さく呟くとさっさとペイダンの家からとんずらした。同時に、サヨをアルミナ達の所へと向かわせたのだった。


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