実家に中国版(?)のグリム童話(?)があったので漢文が割と得意だったので書き下した
中国版? グリム童話? どこかで聞いたことがある感じの昔話
往昔、海南島に男あり。漁を以て生業とす。
一日、海浜を逍遥するに一匹の亀に遇ふ。亀、童子らの虐ぐる所となる。男、直を以てこれを購ひて救ふ。
亀、一礼して去らんとす。男、これを遮り詰りて曰く、
「汝は中山の狼なるか。然らずんば恩に報ゆるべきにあらずや。若し忘恩の徒なりといはば、甲をば鼈甲となし、肉は煮て羹となさん」と。
亀、心に服せざるあり。以為く、童子も男も同じく人なるに何ぞ異ならんや、と。然れども明哲保身、已むを得ずしてこれに従ふ。
亀、男を導き、海府の竜宮に至る。竜宮の主は亀にして、これに細君あり。
細君は容姿絶佳の仙女なり。細君、亀の人を伴ひて来るを見て、大いに驚駭す。
男、傲然として曰く、
「我は亀を救ひし恩人なり。亀、切に報恩を乞ふ、故に爰に至る。彼をして忘恩の徒、不義の畜となさざらしめんが為なり」と。
細君、これを疑ふと雖も、華宴を設けて以て男を饗す。佳肴を羅ね、海魚をして舞はしむ。
男、細君をして侍坐せしめ、群魚の舞踊を賞翫す。男、戯れに舞ふ東星斑を捕らへてこれを烹食す。一同、大いに驚愕す。
男、驕横日々に甚だしく、長く竜宮に留まる。
男、細君に逼るに、細君は夫に救ひを求むるも、亀は恩義に縛られて逆らふ能はず。終には男、細君と私通し、同衾に至る。而して、遂に珠胎を結ばしむ。
亀、悲憤交々至るも、男の暴を畏れ、敢へて抗せず。
乃ち細君に向かひて恚りを発して曰く、
「汝、何ぞ貞節を失へる」と。
細君絶望し、泣きて亀を罵りて曰く、
「汝、悪鬼を室に引き入れ、我をしてこの奇辱を受けしむ。禍根は汝に在るに、何ぞ反つて妾を責むるや」と。
夫婦相怨み、悲歎極まり無し。
亀と細君、終日泣き、三日三夜互ひに責を推し付け合ふ。男は佯り知らざる顔にて釣りを続けるのみ。
竜宮の一同、最早是までと主夫妻の放逐を決す。一同の談判に亀、意を決して竜宮より去らんとす。
細君、「我が子は何ならん」と抵抗するも、竜宮一同の決意変はらず、已むを得ずして去りぬ。
男、是の日も戯れに舞ふ所の東星斑を捕らへ、忽ち煮てこれを食らふ。その美味なるを賞賛し、竜宮一同にも勧む。一同、同族への所業を非難し、退去を乞ふ。
男大いに怒り、激昂して曰く、
「汝ら、恩人に対する態度、何ぞ斯くの如く無礼なる。聞く、昔、劉安は劉備を饗せんが為に、妻を殺してその肉を進むと。我、游魚を捕らへてこれを煮るは、寧ろこれ恩に報ゆるの道なり。何ぞ不義不道となさんや。固より魚類なるのみ」と。
竜宮一同、なほも退去を請ふも、男顧みずして曰く、
「我は万物の霊長なり、何ぞ魚輩の言に従ふべきや」と。又曰く、「賤類、若し人に請ふこと有らば、当に相応の物を出すべし」と。
一同、哀願して曰く、
「これ竜宮伝世の秘宝なり。将にこれを献ぜんとす、伏して乞ふ、速やかに退去せよ」と。
男、勃然として色を作して曰く、
「汝らの言、宛も我を狂客と為すが如し。我、亀を救ひて招きを受けしのみ。亀をして中山の狼の如く忘恩の徒となさざらしめんが為、相伴ひしのみ。我にも亦た生業有り、業を廃して此に来たるなり」と。
一同懼れて謝し、辞を改めて曰く、
「君が亀を救ひし大恩に感謝す。且つ華宴に降臨を蒙り、その徳を賛へて猶足らず。その上、亀の細君に情けを賜り言葉もなし。これ竜宮伝世の秘宝なり。君の恩に報ゆるに足らずと雖も、願はくはこれを納めたまへ」と。
男、その玉匣を納むるも、然れども冷笑し嘯きて曰く、
「我は本恩客なるに、今、汝らより無礼なる放逐に遭ふ。仇を以て恩に報ず、汝ら真に忘恩不義の輩なれば『様を見る』も当然なり。留まるも亦た益無し」と。
乃ち罵りを遺して去る。
先に去りし亀と細君、共々同輩の信を失ひ城を逐はる。
亀、海を漂ひて生く。その末裔、時折月夜に浜辺に寄りて、昔日と細君を想ひて涙すと云ふ。
細君、後にて亀の「甲」に対して「乙」と称せらる。乙、海中にて人の如く哺乳して子を育つるに至り、人は之を「乙とせい」と呼ぶ。
亦た人の言へるあり。海南島に老人あり。彼、善行をなすも魚輩に裏切られしと宣ふ、と。その言は海流に乗り、異国にまで伝はると云ふ。これ即ち、浦の島の某太郎の話なりと。
知らない人を家に呼ぶのは怖いなぁ。
鍵掛けとこ。




