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実家に中国版(?)のグリム童話(?)があったので漢文が割と得意だったので書き下した

中国版? グリム童話? どこかで聞いたことがある感じの昔話

作者:
掲載日:2026/04/14

 往昔(わうせき)、海南島に男あり。漁を以て生業とす。

 一日(あるひ)、海浜を逍遥(せうえう)するに一匹の亀に遇ふ。亀、童子らの虐ぐる所となる。男、(あたひ)を以てこれを(あがな)ひて救ふ。


 亀、一礼して去らんとす。男、これを遮り詰りて曰く、

「汝は中山の狼なるか。(しか)らずんば恩に報ゆるべきにあらずや。()し忘恩の徒なりといはば、(かふ)をば鼈甲(べっかふ)となし、肉は煮て(あつもの)となさん」と。


 亀、心に服せざるあり。以為(おもへら)く、童子も男も同じく人なるに何ぞ異ならんや、と。然れども明哲保身、已むを得ずしてこれに従ふ。


 亀、男を導き、海府の竜宮に至る。竜宮の(あるじ)は亀にして、これに細君あり。

 細君は容姿絶佳の仙女なり。細君、亀の人を伴ひて来るを見て、大いに驚駭(きやうがい)す。


 男、傲然(がうぜん)として曰く、

「我は亀を救ひし恩人なり。亀、切に報恩を乞ふ、故に(ここ)に至る。彼をして忘恩の徒、不義の畜となさざらしめんが為なり」と。


 細君、これを疑ふと(いへど)も、華宴を設けて以て男を(きやう)す。佳肴(かかう)(つら)ね、海魚をして舞はしむ。

 男、細君をして侍坐(じざ)せしめ、群魚の舞踊を賞翫(しやうがん)す。男、戯れに舞ふ東星斑(すじあら)を捕らへてこれを烹食(はうしよく)す。一同、大いに驚愕す。


 男、驕横(けうわう)日々に甚だしく、長く竜宮に留まる。

 男、細君に(せま)るに、細君は夫に救ひを求むるも、亀は恩義に縛られて逆らふ(あた)はず。(つひ)には男、細君と私通し、同衾に至る。(しか)して、遂に珠胎(しゆたい)を結ばしむ。


 亀、悲憤(ひふん)交々(こもごも)至るも、男の暴を畏れ(おそれ)、敢へて抗せず。

 (すなは)ち細君に向かひて(いか)りを発して曰く、

「汝、何ぞ貞節を失へる」と。

 細君絶望し、泣きて亀を罵りて曰く、

「汝、悪鬼を室に引き入れ、我をしてこの奇辱(きじよく)を受けしむ。禍根は汝に在るに、何ぞ反つて(せふ)を責むるや」と。


 夫婦相怨(あいうら)み、悲歎(ひたん)極まり無し。

 亀と細君、終日泣き、三日三夜(みっかみや)互ひに責を推し付け合ふ。男は(いつは)り知らざる顔にて釣りを続けるのみ。

 竜宮の一同、最早(もはや)(これ)までと主夫妻の放逐を決す。一同の談判に亀、意を決して竜宮より去らんとす。


 細君、「我が子は(いか)ならん」と抵抗するも、竜宮一同の決意変はらず、已むを得ずして去りぬ。

 男、()の日も戯れに舞ふ所の東星斑(すじあら)を捕らへ、(たちま)ち煮てこれを食らふ。その美味なるを賞賛し、竜宮一同にも勧む。一同、同族への所業を非難し、退去を乞ふ。


 男大いに怒り、激昂(げきかう)して曰く、

「汝ら、恩人に対する態度、何ぞ()くの如く無礼なる。聞く、昔、劉安は劉備を饗せんが為に、妻を殺してその肉を進むと。我、游魚(いうぎよ)を捕らへてこれを煮るは、(むし)ろこれ恩に報ゆるの道なり。何ぞ不義不道となさんや。(もと)より魚類なるのみ」と。


 竜宮一同、なほも退去を請ふも、男顧みずして曰く、

「我は万物の霊長なり、何ぞ魚輩の言に従ふべきや」と。又曰く、「賤類(せんるゐ)、若し人に請ふこと有らば、(まさ)に相応の物を出すべし」と。


 一同、哀願して曰く、

「これ竜宮伝世の秘宝なり。(まさ)にこれを献ぜんとす、伏して乞ふ、速やかに退去せよ」と。


 男、勃然(ぼつぜん)として色を()して曰く、

「汝らの言、(あたか)も我を狂客と為すが如し。我、亀を救ひて招きを受けしのみ。亀をして中山の狼の如く忘恩の徒となさざらしめんが為、相伴ひしのみ。我にも()生業(なりはひ)有り、業を廃して(ここ)に来たるなり」と。


 一同(おそ)れて謝し、辞を改めて曰く、

「君が亀を救ひし大恩に感謝す。且つ華宴に降臨を(かうむ)り、その徳を賛へて(なほ)足らず。その上、亀の細君に情けを賜り言葉もなし。これ竜宮伝世の秘宝なり。君の恩に報ゆるに足らずと(いへど)も、願はくはこれを納めたまへ」と。


 男、その玉匣(たまくしげ)を納むるも、(しか)れども冷笑し(うそぶ)きて曰く、

「我は(もと)恩客なるに、今、汝らより無礼なる放逐に遭ふ。仇を以て恩に報ず、汝ら真に忘恩不義の(やから)なれば『様を見る』も当然なり。留まるも()た益無し」と。


 (すなは)ち罵りを(のこ)して去る。


 先に去りし亀と細君、共々同輩の信を失ひ城を()はる。


 亀、海を漂ひて生く。その末裔、時折(ときをり)月夜に浜辺に寄りて、昔日と細君を想ひて涙すと云ふ。


 細君、後にて亀の「(かう)」に対して「(おつ)」と称せらる。乙、海中にて人の如く哺乳して子を育つるに至り、人は(これ)を「乙とせい(膃肭臍)」と呼ぶ。


 ()た人の()へるあり。海南島に老人あり。彼、善行をなすも魚輩に裏切られしと(のたま)ふ、と。その(げん)は海流に乗り、異国にまで伝はると云ふ。これ即ち、浦の島の(なにがし)太郎の話なりと。

知らない人を家に呼ぶのは怖いなぁ。

鍵掛けとこ。

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