20 勇者様は幼女
「ようこそ、小さな勇者様。わたくしは泉の巫女セティラと申します」
「ふーん」
カラフルな民族衣装を着た女の子を、セティラは笑顔で迎えた。
女の子は彼女を無遠慮に観察する。それはもうジロジロと。
「この世界に平和を取り戻すため、どうか力をお貸し下さい」
「ふーん」
巫女の言う事を幼女は全然聞いていない。
生返事をしながら今度は美しい金の錫杖に見入っている。
くりくりと大きな目でじっと見つめられ、セティラは少し困った顔で笑う。
「おねーちゃん、手と足どうしたの?オオカミに食べられちゃった?」
「ううん。これはね」
問われた彼女はちょっとした悪戯を思いついた。
「こわ~い一本足のお化けに食べられちゃったの」
「うそだー」
全く怖がらない幼女に、巫女はそれらしい声で対抗する。
「本当よ。おそろいにしてやる~って言って、足を取っちゃうの。手に持った大きな銛でね」
わきわきと手を動かして脅かそうとするも、反応は薄い。
どうやってビックリさせようかと考えていると、うっかり杖を取り落としてしまった。
「あっ」
慌てて拾おうとすると、小さな両手が杖を受け止めた。
手にした幼女がにんまりと笑う。イタズラ小僧の顔で。
「ほーら、おねーちゃん。もらっちゃうよ」
ほこらから出た女の子は、セティラに見せびらかしながら杖を振った。
勿論何も起きはしない。
「こらー、勇者様!悪い事しちゃいけませんよー。一本足お化けに食べられちゃうんだから」
「お化けなんていないよーだ!」
杖を持って走り出そうとした幼女はボン、と何かにぶつかった。
「わっ!」
跳ね飛ばされて派手に転んだが、柔らかい草のおかげで怪我は無かった。
「おい」
上からの声で見上げた幼女は、思わず息を飲んだ。
目の前に現れたのは銛を持った浅黒い肌の少年。背の高い彼は、片足が無い。
一本足で立っていた。
尻餅をついた幼女の手からひょいと金の杖を取り上げた。
「これはセティラの大事な杖だ。返してもらうぞ」
目鼻立ちのハッキリした少年の手には橙に光る指輪があった。
「わーー!!お化けー!!」
耳をつんさく悲鳴を上げて、幼女は巫女の元へと逃げ出した。
「やだー!おそろいにしないでー!!」
抱き付いて泣き出す幼女を巫女はよしよしと宥めた。
「大丈夫。良い子にしていればお化けは怒りませんよ。ねぇ?カルム」
話を振られた片足の勇者は銛を地面に刺し、頭の上で手を組むと微妙な表情で巫女を見つめた。
「誰がお化けなんだよ」
バランス良く立つ彼の背には、銛で仕留めたのであろう大きな獲物がある。
巨大なオタマジャクシには足が一本しか無かった。




