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ファンタジアン  作者: おさかなちゃん
勇者様いらっしゃい編
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18 勇者様はモデル


「初めまして勇者殿。砂鉄の皇子、ビッグスと申す」


「ご丁寧にどうも、皇子様」


 きらびやかな金の装飾に包まれた赤毛の皇子。

 彼は砂漠を統べる王国の第一皇子であり、特別な力を有する稀有な存在。


 黄金の腕輪が光る手には巫女の力の象徴、金の錫杖が握られていた。


「今、世界は悪の力に飲み込まれようとしている。力を貸して頂きたい」


 呼ばれたのは青色に染めた髪を持つ美しき女性。

 スタイルは元より、皇子を前にしても揺るがない佇まいは控える兵達をも感心させた。


「私にそんな力があるとは思えませんが、何かの間違いでは?」


 強調された目元から寄越される視線は力強く、彼女の自信を現している。

 すると、皇子の隣に立っていた人物が女性に近付いた。


 皇子と同じ褐色の肌に、アイボリーのローブを纏った美しい青年。 

 手には彫刻と宝石で彩られた銀の杖があった。


「貴方は秘められた力と勇を持つお方。選ばれし勇者様に間違いありません」


「勇者様、ね」


 染められた美しい爪を唇に当て、考える。

 少しの間思案した彼女は、微笑を浮かべながら皇子に視線を戻す。


「申し訳無いのですが、辞退致します」


 彼女の言葉で兵達にどよめきが走る。


「理由を聞いても宜しいか」


 疑問を投げかけた皇子に、美しき勇者はすらすらと答えた。


「まず、私の様な小娘に大役を仰せつかっては皇子様の名に傷が付きます」


 長い指先を周りの兵達に向け、続ける。


「ご立派な兵をお持ちの皇子様には、自らの武勇がお似合いでしょう」


「勇者様、皇子に向かってその言い方は」


「良い、続けよ」


 無礼だと主張する賢者を止め、皇子は先を促した。


「私は今、自分の夢のために闘っています。皇子様でも止める事は出来ません」


 正面から皇子を見据え、胸を張る彼女。

 夢を追う彼女の美しさには月の輝きまでも隠れてしまいそうだった。


「成る程、良く分かった」


「皇子?」


「勇者殿はお帰りだ、用意をしろ」


 ビッグスはそう言って金の杖を賢者に放り投げた。

 受け取った賢者の青年は、ため息をつくと宝石の杖を壁に立て掛けた。


「詫びに餞別も与えよう」


 皇子が賢者に目配せすると、彼は渋い表情で彼女の元へ跪いた。


「勇者様、お手を拝借致します」


「貴方、迷惑そうだけどいいの?」


「お気になさらず。いつもの事ですので」


 差し出された手の甲に口付けが落とされた。


「勇者様に紅(べに)の賢者の祝福を」


 美しい彼女の手には金と赤茶色が混じる石、タイガーズアイの指輪が現れた。

 銀のリングと大きな石は彼女に新たなアクセントを加えている。


「次に会う事があれば、また誘っても良いか?」


「夢が叶った後でしたら考えておきましょう」


 魅力的な笑顔を残し、金の杖を振った賢者の手によって彼女は消えていった。




「いい女だった。后にしたい」


「あと何人増やすつもりですか。王宮の広さも無限ではありませんよ」


「なに、増築すればいいだけだ」


「真面目に祈れよオッサン!呼ぶのは愛人じゃなくて勇者だ!勇者!!」


 中年皇子にツッコミを入れる賢者の声が、広いほこらの中に響いた。



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