悪い噂1
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「じゃあ、俺は職員室に寄るな。お前は先に帰っててくれ」
全ての授業が終わり、生徒たちが寮へ戻る準備をしている中で、光彰は職員室へと向かう準備をしていた。体育館の屋根を照らしている夕陽は、その光を寮棟へとまっすぐに伸ばしており、時計塔を茜色に染めていく。敷地の中で何処よりもひと足先に暗くなるその中で、時計塔だけが柔らかな光を放っていた。
その光を眺めるのが大好きな黎は、ここでそれを堪能しながら光彰を待っていようと思っていた。どんな時でも黎と一緒にいたがる光彰のことだから、ここで待っていろと言うに決まっていると思い込んでいた黎は、彼からの思いもよらない言葉に驚いてしまった。
「え、待ってなくていいの? いつも待ってろって言うのに。長くなりそうなのか?」
「いや、そういうわけじゃない」
いつもならば、どんなに黎が気後れするような場所へも、彼の都合などお構いなしに、光彰は黎を連れ回す。それなのに、今日は先に帰れと言う。一体どうしたのだろうか。
一般的には、この光彰の言動に感じるところなど無いだろう。至極当然のことであろうこの言動にそれを覚えるほど、黎はいつも光彰と行動を共にしていた。
常に同伴している状態が当然のようになっていたからか、突然突き放されたような寂しさを感じたのか、黎は何か落ち着かない様子を見せている。
「じゃあなんでだよ。いつも気持ち悪いくらいにベッタリ一緒にいたがるくせに」
そわそわする気持ちを晴らしたくなり、黎は光彰へと詰め寄った。
体格差が如実に現れ始めた中学生の頃から、光彰は黎をそばに置きたがるようになった。そして、次第に接し方も変わり、今はまるで恋人のような距離の近さで接するようになっていた。
元々光彰は黎にとても優しかったのだが、次第にその優しさに妙な甘さを孕むようになっていき、今ではまるで宝物でも扱うかのように、丁寧に接するようになっている。
ただし、行動を別にすることだけは決して許さず、黎が何かに興味を持ち行動する際には、必ず光彰が同行するようになっていた。




