14 魔草採取⑤
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2日で14話まで投稿したのは、自分史上初の試みでした。
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「どうするって、魔草を採っていくだけじゃないの?」
「リリアーヌは、これだけの魔草を前にして、どれだけ採って帰りますか?」
リュカが尋ねてきた言葉の意味を考えると、つい欲を出したくなる自分もいた。
魔法の使えない私は、今後も足手まといになるのは目に見えているし、この状況は、2度とない好チャンスかもしれない。
採れる限りの魔草を刈って、クラスメイトに配って自慢したい気もしている。
だけど……それはよくないはず。
ゆっくりと小さく頷き、自分の考えを慎重に伝えた。
「自分たちが必要な魔草だけを採って帰りましょう」
その答えを聞いたアルフォンスが、私を見つめたまま固まると、静かに口角を上げた。
何も言わないアルフォンスをよそに、リュカが尋ねてきた。
「どうしてですか? ここの魔草を余計に持って帰れば、我々に協力してくれる仲間ができるかもしれませんよ」
「仲間は欲しいけど、この学園の先生が、上級生のために保管してあるものなら、必要最低限だけにしておかないと」
ふ〜ん、と声に出したリュカが、表情を変えず続けた。
「でも、上級生の人数以上に魔草があると思いませんか?」
「だとしてもやめましょう。バーゲンセール品を配るみたいな、安っぽい恩で作る仲間なんて、いざというときに、助けてくれる存在にもならないからね」
真剣な眼差しで言い切った言葉を、リュカは静かに聞くだけだった。
一切の反論を示さないリュカが、今度はアルフォンスを見つめながら尋ねた。
「リリアーヌの意見を採用するということで、いいですか?」
豪快に笑ったアルフォンスが、満足げに言った。
「そんなのいちいち確認する必要ないし。協力者が欲しいって言ってたリリアーヌが、2年生のために残しておこうと言っているんだから、俺たちが必要な分だけ採って帰ろう」
「ふふふっ、ここは3人の意見が一致したようで安心しました。不用意に他のチームと組むよりも、この3人だけの方が、はるかにいいチームな気がしますね」
リュカが自信に満ちた表情で言い切った。
ま、待ってよ!
このメンバーには、魔法が使えない私がいるってことを忘れているでしょう!
この先の演習で活躍できる自信なんか、ちっともないんだけど……。安心しないでよ!
そう考える自分もいたが、私を邪険にしないこの3人なら、なんとかなる気がして、「そうだね!」と、大きく同調した。
◇◇◇
アルフォンスが言う結界の境界線を越えれば、リュカも魔草の魔力を一瞬だけ感じたのだが、同時に消失していった。
私はというと、それまで感じていた気配が一気に消えた。
今まで確かにここにあったのに、一瞬で消えるその感じは、前世のテーマパークで、数メートル歩いただけで、音楽が変わる不思議な体験みたいで興奮を覚え、鳥肌がたった。
私と同じように目を丸くするリュカも、少し大きめの声で、別の感動を伝えた。
「さすがラビリンス学園の教師陣ですね。こんな巧妙な結界を張れるなんて、驚きです」
「元魔法研究所員の肩書のある教師もいるし、上位魔法を使いこなせる人物が、結界を張ったんだろうね」
感心するアルフォンスは、完璧な結界だと教師を褒めているけど、問題はそこじゃない気がしている。
だって自分の能力は、それより上だと言っているんだし。どうなっているのよ!
これにはリュカも何か言いたそうにしているが、アルフォンスの顔色を窺うように、言葉を呑み込んだみたいだ。
そうなれば、ここは前世アラサーの年上のお姉さんから聞いてみるしかないかな。
踏み込んだ質問をして嫌われても、アルフォンスは攻略対象じゃないし、問題ない。そんな軽いノリで尋ねた。
「アルフォンスって、本当はめちゃくちゃ凄い人なんじゃないの……!?」
「別に魔力量が多いってだけで、凄くないよ。でも、この魔力は悪目立ちしそうだから、他の奴らには内緒にしてね」
「でもね。アルフォンスの魔力をクラスのみんなに知ってもらえば、クラスメイトから尊敬されるんじゃないかな」
「リリアーヌは、俺の魔力が大きいってわかったら、イメージが変わったの?」
その言葉で宙を見て、少しの間考えてみたが、どうやっても答えは一つだった。
「全然変わんないな。っていうか、私が魔法を使えないってわかっても、同じメンバーになろうっていった約束を取り消そうとしなかったでしょう。すごく誠実で優しい人だと思った印象は、きっとずっとこのままだよ」
あっけらかんと告げると、アルフォンスは凄く驚いたような顔を見せたあと、柔らかい笑顔を見せた。
「良かった。でも、まじで面倒だから、ここを見つけたのは、他の生徒とは逆方向に向かっただけで、偶然ということにしておこう」
彼の提案を聞いた私は、リュカと顔を見合わせた。
私にも、乙女ゲームの世界に転生とか、人に言えないことはある。だから悪目立ちしたくないアルフォンスの気持ちも痛いほどわかる。
きっと彼なりに事情があるのだろうと察し、リュカと微笑み合った。
互いにうんと頷いたので、同意見である。
それを言葉にしたのは私だ。
「アルフォンスが打ち明けてくれたのは、私たちを信用しているからでしょう。だから、誰にもベラベラとしゃべらないから安心して」
それを聞いたリュカは大きく頷くと、言葉を選びながら口を開いた。
「アルフォンスの立場を考えれば、余計なことで目立ちたくないってことでしょうから、わかりました」
それに安堵した様子のアルフォンスが屈託のない笑顔を見せると、この場をまとめた。
「3人の意見が合致したことだし、上級生に魔草を保管したい先生たちの望みを無下にしないように、自分たちに必要な分だけ採って帰るとするか」
「だね!」
と、リュカと私の声がハモり、それぞれ1株ずつ、この場から失敬することにした。
攻略キャラのリュカを遥かに凌ぐ魔力量を持つチートっぷりのアルフォンスが、ゲームの攻略対象でないことが、少々理解できない。
それに、つい惹かれてしまう彼と距離を縮められないのは、残念な気持ちを抱いてしまう。
私……アルフォンスが好きなんだな。
でも、この感情をこれ以上大きくしてはいけないんだ。
この淡い気持ちは、気づかないことにしておけば、いつか忘れるはず。
だけどどうしても、彼と一緒にいればいるほど、アルフォンスが攻略キャラなら良かったのに、と思ってしまう自分もいる。
だが、あり得ないことを考えていないで、私は自分が生き残るために頑張らないといけないわけだ。
そう自分を鼓舞していたら、リュカが恐縮しながら声を発した。
「アルフォンスと2人きりで話をしてもいいですか?」
その言葉にアルフォンスは快諾したため、彼らは、私の視界にも入ってしまうような近くで、秘密の話を始めてしまった。
うっ……。2人が何を言っているのか、気になってしょうがない……。
はっきりと除け者にされたのも、悔しくもあり、寂しくもある。
そのため、何を話しているのか気になり、じわりと近づき耳をそばだてた。
けれど全く彼らの声が聞こえてこなかった。ということは、2人のどちらかが、防音魔法でも使っているのだろう。悔しい。何の話か推測もできないじゃない……。
そんなことを考えていると、ふと大事なことに気づいた。
「あれ? この課外活動って、リュカとのイベントだったよね……」




