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クリアしないと死ぬゲームに転生した落ちこぼれ令嬢のはずが、いつの間にか裏ルートで溺愛されてました  作者: 瑞貴
第1章 死なないためのルート選択

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13 魔草採取④

 しばらく歩いていると、この先に想定以上の魔草があると確信し、深い安心感が胸に広がった。


 私の意見にアルフォンスが力強く賛同してくれたとはいえ、少しだけ焦りというか、不安な気持ちがあったのだ。


 というのも、昨日の小テストで、このクラスで4位の成績を修めていたミラベルから、私たちが目指す方向に魔草はないと断言されてしまい、内心冷や汗を流していた。


 もしも忠告通り何の収穫もなければ、真逆に向かおうと提案したリュカに申し訳ないし、言い訳のしようもない。


 それだけは避けたいから、せめてリュカの分だけでも魔草を収穫して帰りたかった。


 必ずありますように。そう願い続けて歩みを進めてきた結果、徐々に魔草の発する魔力を、より強く感じ取られる所まできた。


 だからこそ疑問もある。

 それは、この裏山へ来る直前、教室でリュカから教えられた反応と現状が違うからだ。


 先ほど聞いた話だと、近くまで来れば、魔草から発する魔力が消失するはずだし、ミラベルもそんなことを言っていた。

 なのに今、普通に魔力を感じるのは、どうしてだろう?


 リュカは正しいことを教えてくれたはずだから、今感じている魔力の意味がわからない……。

 収穫できる喜びの反面、ここに来て大きく首を傾げた。


 本当に何から何まで謎だらけね。

 転生ヒロインだから、チート能力で無双ってやつなのか?

 このゲームの知識を持って転生しているはずなのに、理解できないことの連発なんだから……。勘弁してよ。


 そんなことを考えていると、先頭を歩くリュカが訝しんだ声を出した。


「あの〜、リリアーヌは魔草の魔力を感じていますか?」

 

 私なりに悩ましいことはあるけど、魔草から発せられる魔力は近い。それについては自信を持って答えた。


「うん、魔草の群生地に近づいているわよ」


「そうですか……? ではもう少し進みますか」

「頑張りましょうね」

 魔草を全員分持って帰れば、今週末の帰省の際、ミラベルへ反論する材料になる。クラスの3人に1人が手にできるアイテムだから、説得力に乏しい気もするけど、手ぶらよりはマシだ。断然。


 よし! やってやるわよ。

 少しだけ、実家へ帰省することの希望が見えてきたおかげで、気分は高揚し、足取りも軽い。


 おかげで今歩いている急こう配な道のりも、弱音も吐かずに進めているわけだ。


 上機嫌な私の感情が、どうやら足取りにも表れていたようだ。

 私の後ろを歩くアルフォンスが、いつもより明るいトーンで声を発した。


「だいぶ歩いて来たって言うのに、リリアーヌは、やけに楽しそうだね」


「うん。目的地が目前だから、つい嬉しくなって」

 私の言葉を聞いたアルフォンスから、「素直で本当にかわいいよね」と笑われたが、前向きに受け取った。

 この手の評価は、単純だという意味で言われているのを知っている。

 前世でも、友人たちからよく言われたものだ。


 ゲームの中でも同じ評価なのね、と成長していない自分が滑稽に思えたが、気にせず尋ねた。


「アルフォンスも魔力を感じるかしら?」


 その質問に、さらりと頷いた彼が続けた。


「急に性格が変わったように明るくなって、やっぱり以前の面影がないよね」

 この言葉には、一瞬、身体をこわばらせ、動揺した。


 本当に別人になっています、という真実を告げられるわけもないし、ここは誤魔化すしかない。いつか、アルフォンスだけには伝えたいけど。できる日が来るかな。

 今沸き起こっている自分の感情が、なんなのかうまく説明できないけど、嘘はつきたくないんだ。彼には。


 だけど今は、まだ言うわけにいかないか。そう思って、ありきたりな返答をしておいた。


「人見知りをしていたというか、緊張していたんだよね。でもそれでは駄目だと思って、変えたからね。これもアルフォンスのおかげだよ」


 伝えたあと、アルフォンスからの返答を待っていたけど、その言葉には、リュカが反応した。


「確かに印象が、ガラッと変わったよね。正直、僕もまさか、リリアーヌから同じグループになって欲しいと誘われるとは思っていなかったし、声をかけられて、凄く驚いたな」


「せっかくの学園生活だし、うじうじしていないで、友達をたくさん作りたいなって思ったからね。こうしてリュカとも同じグループで楽しく話ができて、勇気を出して良かったと思ってるよ」


 明るい会話を重ねていたのに、急にリュカが申し訳なさげに尋ねてきた。


「だけどごめん。僕にはリリアーヌが『目的地が目前』と言った理由が、よくわからないんだけど」


「あれ? 魔草の魔力を感じない? あと少しで群生地があると思うんだけど」


 私には、当たり前のように魔力を感じられるため、至って普通に答えた。


 そうすると、まったく腑に落ちていない様子のリュカから、不思議な言葉が返ってきた。


「僕は今日はどうも調子が悪いらしいね。情けない話だけど、魔草の魔力を少しも感じない」


 どうしてだろうと首を傾げていると、背後にいるアルフォンスが、先頭を歩くリュカに、はっきり聞こえるよう、少し大きめの声を出した。


「ほら、右側を見て。雑草に混じって、魔草が生えているよ」

 アルフォンスの声に誘導されるように、私とリュカは一斉に右側へ顔を向けた。


 すると透明なガラス細工のような草。いわゆる魔草が至る所に生い茂っている。まさに私たちが探していたものだ。


 半信半疑で顔を向けたリュカだったが、放心するように棒立ちになり、か細い声で言った。


「信じられません……。こんなに魔草が生えているのに、まったく魔力を感じなかったって、どういうことですか……」

 リュカが目をパチクリして、微動だにしない。

 動揺を隠しきれていない姿なんて、早々お目にかかることはできないからレア度が高いんじゃないかしら。

 なんて喜んでいたら、アルフォンスが平然と状況を説明してくれた。


「俺たちのすぐ横に、魔力を遮断する結界が張られているみたいだね。結界の中に入らないと、互いの魔力が感知できない仕組みみたいだ」


「あっ、それで魔草も私たちが近づいても、魔力を放出しているのね」

 少し前に抱いた疑問は、アルフォンスの説明で解消できたけど、彼は本当に、何者なんだろうという、新たな疑問に置き換わっただけ。


 頭の中に疑問符を浮かべていると、リュカが不思議そうに言った。


「魔草に結界を張るなんて、課外活動の難易度を上げるためなのか?」


「でも、一度右に行ってから、ここに来る生徒なんているかしら?」


「わざわざこんな手のかかることまでするのは、意味がわからないですね」

 ここはラビリンス学園の裏山だ。

 なので間違いなく、結界を張ったのは学園の関係者ということになる。

 リュカが私の顔を見てきたため、その疑問のリレーをアルフォンスの顔を見て託した。


 すると真剣な表情の彼は、さらりと答えてくれた。


「このエリアの魔草は、他の学年の演習のために残しておきたいんだろうね。一か八かで左の道を選んでも、ここを素通りすると見越しているんだろうな」

 その説明に、深く頷けるものがあった。


 私たちは、この演習で採った魔草を使ってポーションを作るのだ。

 それも、今から作るポーションは、今後の演習で持ち歩き、そのグループのアイテムになる。結構大事なものである。


 となれば、1年生の演習で根こそぎ魔草を採られると、学園側も困るから、納得だ。


「ですが、やはり僕にはわからないことがあるのですが……。どうしてリュカとリリアーヌは、結界があるのに魔力を探知したんですか?」


「俺の場合は、結界を張った人間より、魔力量が多いからかな」


「ありえません。これは学園の中でも魔力の大きい先生が張った結界のはずです」


「俺は生まれつき、人より魔力が多いからね」


「多少魔力が多くても、張られた結界を無効にするのは、かなりの魔力差が必要ですよ。それができる人物って、かなり限られた人間だと思うけど──」


「まあ、あまり気にしないで。俺、詮索とか苦手だから」

 リュカは何かを言いかけていたが、アルフォンスに言葉を切られてしまった。


 どうしたのかしらと思っていれば、リュカの疑念は私にも向けられた。

「じゃあ、リリアーヌはどうしてですか?」


「あはは……っ! どうしてだろうね」

 そんなことは私が聞きたいわよ!

 ゲームヒロインのチート能力かもしれないし、本気で説明できないやつの可能性がある。


 叩いても、埃しかでない話だから、突っ込まないでいただきたい。


 そんな言葉を心の中で叫んでいても、もちろん私の心情が伝わるわけもない。めちゃくちゃ疑念の眼差しを向けられ続けている。


 この状況を、どうやって平穏に解決すればいいのだろうかと考えていれば、アルフォンスが、それっぽい答えを探してくれた。


「リリアーヌは、結界を無効化する魔道具を持っているとか?」


「魔道具? ……持ってないと思うけど?」


「案外、魔道具と知らずに服のボタンやエンブレムに使われていることもあるから、自分では気づいていないだけじゃない?」

 

 ちっとも賛同できないくせに、別の理由がわからなくて、「そうかもね」と乗っかっておいた。


 するとリュカが、神妙な声を出した。


「結界を無効化する魔道具なんて、国の厳重管理指定のはずですよね。一般人に貸し出されるわけがないし、特級魔道具の所持は違法ですね」


「ええええぇ~! そうなの!? 何が魔道具なのかもわかってないのに、私って捕まるの……」

 私が適当に頷いた魔道具が、違法だという言葉を聞き、全身から血の気が引いていく。


 そもそもリリアーヌの記憶を辿っても、魔道具を持っていたという覚えがないのだ。これっぽっちも。


 特級魔道具なんて知らないし。

 だけど前世の日本でも、拳銃なんかは、所持しているだけで罰せられるという立派な犯罪だ。


 私ってば、知らずに犯罪者なのかと、大きく肩を落としていると、リュカが軽快にウィンクをした。


「今回はリリアーヌの提案で、この場所に辿り着いたわけですし、魔道具のことは聞かなかったことにしておきます」


 それに加え豪快に笑ったアルフォンスも味方してくれた。たぶん。


「はははっ、大丈夫だって。王城内にも結界を張っている箇所はあるけど、リリアーヌが結界の中に入っても、そもそも魔法が使えないのなら、大したものは盗めないし、王族の命も奪えないから、特級魔道具を持っていても、悪用できないって」


「えっと~、私を擁護してくれているんだよね? それとも侮辱しているの?」

 ジト目でアルフォンスを見つめると、まるで励まされるみたいに、肩をポンポンと軽く叩かれた。


「全力で擁護したつもりだけど、足りなかったかな?」


「いいえ! 十分に足りたから! それ以上宝の持ち腐れだって、言わなくても結構だわ」

 半べそをかきながら訴えると、くすくすと2人から笑われた。

 魔道具のことが一旦解決した直後、リュカがこれまで以上に真面目な声を出した。


「さて、我々はどうしましょうか?」


◇◇◇

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