4話
街へ帰り三日後、王国中に訃報が届いた。先王が亡くなられた、との事だ。国からは特に指示は出なかったけど、父親だしね。適当に理由つけて暫くは喪服着といてやるか。
「よおチリ! 何だ、誰か死んだか?」
「黒は女を美しく見せるって言うでしょ? これで契約取り放題よ!」
「ハッハッハッ!! まぁ頑張れ」
「何笑ってんだこの野郎!」
ボランの野郎!
「よし、占ってやんよ。今日契約取れるかどうか」
「占わなくても分かります~」
「なら賭けようぜ? 俺は当然取れないに賭けるぜ」
「取れます~。負けた方が晩ごはん奢りだかんね」
「よっしゃ! 勝ったなオレ!」
占い野郎ボランのたわ言には付き合わない。それより契約を取るために愛想でも振り撒くか? と言ってもこの時間にギルドにやって来る冒険者は少ない。
エクストラの朝はけっして速くはない。朝の混雑したギルドに居ても声は掛からないからだ。私達を雇うパーティーと言うのは、朝の段階でメンバーに欠員が出たとか、依頼を受けたは良いが戦力不足が露呈した、等のパーティーだ。
故に見栄っ張りの冒険者達は混雑する時間を避け、こっそりと契約しに来る傾向にある。
時間だけが過ぎて行く。
「さて、昼めし時だが、勝負の時間はギルドの昼営業が終わるまでで良いな?」
「もっと速い時間でも良いよ? おやつ時とかね」
「ヘッヘッヘッ! 口の減らねえ奴」
午後からも意外と人の出入りがあるからね、まだ大丈夫。依頼を終えた冒険者から「次から頼む」って契約取れたりするからね。
「さて、おやつ時だが、どうする? 降参か?」
「昼営業が終わるまででしょ?」
大丈夫。ちらほらと依頼終わりの冒険者が来だしたし。そのうち夜営業を待たずに飲み始めるから、酔って気が大きくなった頃に声を掛ければ或いは。
「チリ、残念だがここまでだな。もう夜営業が始まった」
「ちくしょう、絶対取れるって思ったのに」
「オレの占いでも取れるって出てたんだけどな。まぁ勝負は勝負だ。ゴチになるぜ」
「インチキ占い師~、覚えてろ~」
エクストラの指定席を立ってカウンターに向かおうとしたところで、正面から若い冒険者がやって来た。
「エクストラのチリさんですね? 俺のパーティーに加わってください!」
こいつ!
「今さら言われても遅いのよ!!」
ボランがゲラゲラ笑っていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
「ザマア」や「ギャフン」は、主人公が言っちゃうくらいの方が好きです。
最期まで読んで頂きありがとうございました。