18話:綾瀬と一緒に帰って行く
それから数時間後。
陸上部の部活動も終わったので、俺は綾瀬と二人きりで駅まで帰っている所だった。
「あ、そうだ。そういえば先輩、知ってますか?」
「え? 知ってるって……一体何の話だよ?」
その帰りの途中に綾瀬は俺に向かって何かを尋ねてきた。一体何の話だろう?
「はい、えっと、陸上部の三年生に北村先輩と冬樹先輩っているじゃないですか? あの二人はつい先日から付き合い始めたらしいですよ!」
「え? そうなんだ? へぇ、それは知らなかったなー」
綾瀬曰く、陸上部の三年生である北村先輩と冬樹先輩が付き合い始めたらしい。
北村先輩も冬樹先輩もどっちも陽キャなイケイケ女子&イケイケ男子だからお似合いなカップルと言えばそんな気もする。
「ふふ、すっごくめでたい話ですよねー! あの二人ってすっごくお似合いですもんね!」
「はは、確かに確かに。だけど何だか最近めっちゃカップル報告を聞く気がするな。何で最近こんなにもカップル報告が多いんだろう?」
「あー、ま、まぁやっぱりその……二学期といえばハロウィンとかクリスマスとか色々なカップルイベントがあるじゃないですかね?」
「あ、なるほど。確かに二学期といえばそんなカップルイベントも多いのか。それじゃあこれからもっとカップルは増えていくんだろうなー」
「そ、そうですね。まぁそういうイベントも沢山あるし、これからどんどんと増えていくかもしれないですね。あ、そ、そうだ。そういえば先輩はその……か、彼女さんとか作らないんですか?」
「え? 俺?」
そんな雑談をしているとふと綾瀬はそんな事を俺に尋ねてきた。
「は、はい。先輩はその……結構一年生の間でも有名になってますからね。ほら、えぇっと……」
「あぁ、もしかして“難攻不落の王子”ってやつか?」
「あ、は、はい、それです。その噂があるから私達の周りでも凄く気になってる人が凄く多いんですよ」
「え? 一年生の間でも俺の事が気になってる人多いの?」
「は、はい、そうなんですよ」
どうやら天城さんが言ってた俺の話題は同級生だけでなく後輩の間でも広がっているようだ。俺の話題が全学年に広がってるなんて流石にビックリだよな。
「なるほどな。でも俺以外の男子だって付き合ってないヤツも普通にいるだろ? それなのに何で俺だけ一年生の間でそんな気になってる人が多いんだ?」
「はい、もちろん付き合ってない男子もそこそこいますけど、でも先輩は一年生の間ではとても人気が高いんです! 前に私の事を助けてくれた話とか友達に話しちゃったら瞬く間に広がっちゃって、それでもう一年生の間では先輩が一番の人気になってるんです!」
「あー、そういえば綾瀬との初めての出会いはそんな感じだったなぁ……って、俺の噂を広げたのって綾瀬だったのかよ!?」
「あ、す、すいません……まさかこんなにも瞬く間に広がるとは思わなかったもので……私はただ先輩のカッコ良い話を友達に教えただけなのに、そしたらその話が一瞬で広がっちゃったんです……」
「えっ? あ、あぁ、いや別に俺はそんな噂を流されて怒ってる訳じゃないからそんな申し訳なさそうな顔をしなくて良いよ。まぁ噂の出所がわかって俺もスッキリしたってだけだからさ」
俺はしょんぼりとしてる綾瀬に向かって笑いながらそう言っていった。まぁ後輩に慕われてるのは普通に嬉しいしな。
という事で一年生の間で俺が人気になっている要因は綾瀬の話が元になっているようだ。とりあえず噂の出所がわかって一つスッキリと出来た。
「はい、ありがとうございます。まぁそんなわけで先輩は私達一年生の間では凄く素敵な先輩だって事で凄く人気を集めてるんですよ。そ、それでさっきの質問に戻るんですけど、先輩はその……誰かとお付き合いしたりはしないんですか?」
「うーん、これは俺の友達にもよく言ってるんだけど、俺は仲が良くない人とはお付き合いとかする気はないんだよ。ちゃんと友達同士になって何でも話せるくらいの間柄になってからじゃないと嫌だなーって思ってさ。まぁでもそんな事を友達に話していったら“お前は男子漫画の見過ぎだ”って笑われちゃったんだけどさ。はは、やっぱりそういう感性はちょっと子供っぽい感じなのかな?」
「あ、な、なるほど! そうだったんですね! いえ、そういうお付き合いの仕方の方がロマンチックだと思いますし、私もそういうのに憧れたりしますね!」
「そっかそっか。子供っぽくないようなら良かったよ。あ、そうだ。そういう綾瀬は誰かと付き合わないのか? というか綾瀬は誰かと付き合ってるのか?」
俺は綾瀬にそんな事を尋ねていってみた。綾瀬は普通に愛嬌良くて性格も優しい良い子だ。それに容姿も凄く可愛らしいから普通にモテてると思う。
だから俺は何の気なしに綾瀬にそんな事を尋ねてみたんだ。すると……。
「え? 私ですか? い、いや、残念ながら今の所は一度もお付き合いとかそういうのはした事ないですよ」
「へぇ、そうなんだ? それは何だか凄く意外だな。綾瀬みたいな可愛くて優しい女の子こそモテる気がするのにな」
「ふぇっ!? か、かわっ!? い、いやいや! 私みたいなの全然モテた事ないですよ!」
「え? そうなのか? うーん、でも綾瀬は普通にモテそうな気がするんだけどなぁ……」
「いやいや、全然そんな事はありませんって! だって私はガサツだし、髪の毛もショートすぎて全然女の子っぽくないし、それに陸上部で走りすぎて筋肉付きすぎちゃってますもん。だからそんな女の子っぽくないから全然モテないですよ!」
「ふ、ふぅん……?」
綾瀬は顔を真っ赤にしながらそんな寂しい事を言ってきた。何故だかわからないけど綾瀬は自己肯定感がちょっぴり低いようだ。
(でもこんな可愛らしくて愛嬌のある素敵な女の子なのに、どうして自己肯定感が低いんだろう?)
俺は綾瀬が自分自身の評価を思いっきり下げようとする理由が全然わからなかったんだけど、でも俺にとってこの学校で一番仲の良い後輩がそんな寂しい事を言ってるのは普通に嫌だと思った。だから俺は……。
「いや、綾瀬は素敵な女の子だよ」
「え? せ、先輩?」
だから俺は綾瀬の顔をじっと見つめながらそんな事を言っていった。すると綾瀬はキョトンとした表情を浮かべてきた。
俺はそのままキョトンとしている綾瀬に向かって続けてこう言っていった。
「何というか綾瀬は自分自身の事を下に見てるような感じだけどさ……でもそのショートヘアは似合ってるし、いつも笑ってくれてるその笑顔も素敵だよ。筋肉が付いているっていっても毎日運動してるからこそスタイルも綺麗だし本当に良い女の子だよ。だからそんな寂しい事を言わなくていいと思うよ? だって綾瀬は誰よりも可愛くて素敵な女の子なんだからさ」
「あ、せ、先輩……」
という事で俺はいつも通り優しく笑みを浮かべながらそう言っていった。
すると俺の言葉を聞いた綾瀬はキョトンとした表情から一転して顔を真っ赤にしながら凄くビックリとした表情を浮かべ始めていった。
でもそれからすぐに綾瀬は顔を赤くしたままだけど天真爛漫ないつもの笑みを浮かべながら俺にこう言ってきてくれた。
「せ、先輩……はい、ありがとうございます! お世辞でもそういう事を言って貰えてすっごく嬉しいです! ふふ……やっぱり先輩は誰よりも優しくて素敵ですよね! 流石は学園の王子様です!」
「えっ? あ、いや、俺は別にお世辞を言ったつもりはないんだけど……ま、でもいっか」
俺はお世辞を言ったつもりはなかったんだけど、まぁでも綾瀬は嬉しそうに笑いながら感謝を伝えてきてくれたので、それ以上はとやかく言うのは止めておく事にした。
(ま、綾瀬が嬉しそうにしてるし今はそれでいっか)
綾瀬の自己肯定感が低かった理由は全然わからなかったけど、でも綾瀬はいつもの天真爛漫な笑顔を見してくれるようになったので、今はそれだけで良しとしておこう。
という事でその後の俺達はいつも通り一緒に楽しく他愛無い話をしながら帰路へとついていった。




