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19話:霧崎先輩と話していく

 とある日のお昼休み。


「ん? あれは……」

「……」


 昼食を食べ終えた俺は飲み物を買おうと思って外の自販機に向かって歩いて行っていた。


 するとその道中にある校庭のベンチに座って棒キャンディを咥えながら一人で黄昏ている白ギャルの霧崎先輩を見かけた。


(あんな所で一人でぼーっとしてどうしたんだろう?)


 霧崎先輩と知り合ってLIMEの交換をしてから結構な日が経ってるんだけど、それ以来霧崎先輩は最近見たドラマの話とか、漫画の話とか、気軽に他愛無い雑談とかをしょっちゅう俺にしてくれていた。


 霧崎先輩は切れ長の瞳も相まって見た目はちょっとだけ怖そうな雰囲気も出てるんだけど、でも性格は意外にも気さくで優しい先輩だった。本当にいつもフランクに話しかけてきてくれるんだ。


 だから何というか、霧崎先輩は元の現実世界で言う所の三年の男子先輩と話してるような気分になる感じの先輩だった。


「うーん、あんなにいつも朗らかな先輩なのに何かあったのかな?」


 そしてそんないつも気さくで朗らかな先輩が一人でぼーっと黄昏ているのを見て、俺は何だかちょっとだけ違和感を感じていった。


 なので俺は近くの自販機でジュースを二本買っていき、そのまま霧崎先輩に近づいて声をかけていってみた。


「お疲れ様です、霧崎先輩」

「んー? って、王子君か。おつかれさま」

「はい、お疲れ様です。あと出来ればそろそろ王子君呼びじゃなくて名前で読んで欲しいんですけど」

「ふふ、別に良いじゃん。皆君の事は王子って呼んでるんだからさ」

「う……ま、まぁそうらしいですね……って、あ、そうだ。それじゃあ良かったらこれをどうぞ。さっきそこの自販機で買ってきたジュースです」

「え? 私に? うん、ありがと」


 そう言って俺は霧崎先輩にジュースを手渡していった。そして手渡す時に霧崎先輩の顔をチラっと見たんだけど、やっぱりその表情は何だかいつもと比べると暗い感じに見えた。


 うーん、これは本当に何かがあったのかもしれないなぁ……。


「どうしたの王子君? なんだかしかめっ面してるけど?」

「え? あぁ、いや、何でもないですよ。あ、それじゃあ良かったら先輩の隣座っても良いですか?」

「え? 別に良いけど……でももうすぐ午後の授業始まるよ? 王子君は教室戻らなくて良いの?」

「いやいや、それを言うなら先輩こそ教室に戻らなくて良いんですか? もうすぐ授業始まっちゃいますよ?」

「私? 私はまぁ……もうしばらくここで黄昏てようかなって思ってね。というかもう今日は授業も全部休んじゃおうっかなーって思ってるんだけどね、あはは」

「そうなんですか。はは、先輩って結構不良な所ありますよねー。よし、それじゃあ俺も今日は先輩と一緒にここで日向ぼっこしてますよ」

「え?」

「はは、だってめっちゃ仲の良い先輩が一人ぼっちで辛そうにしてるのに放ってなんておけませんしね。という事で先輩に何かあったようなら俺が愚痴でも何でも聞きますよ!」

「王子君……うん、ありがとう。ふふ、それじゃあ今日は一緒に日向ぼっこをしながら話でもしていこうよー」


 俺がそう言うと霧崎先輩は優しく微笑みながらベンチの隣にポンポンと手を叩きながら招いてきてくれた。


「はい、それじゃあ隣失礼しますね。よいしょっと。ふぅ、それで先輩どうしたんですか? 何かしんどい事でもあったんですか?」

「あぁ、うん。実はさー……昨日彼氏と別れたんだ」

「え……って、えぇっ!? そうだったんですか? あのモデル仲間の彼氏さんですよね?」

「うん、そうだよ。はぁ……」


 霧崎先輩の暗い表情の理由はどうやら以前に話していたモデル仲間の彼氏と別れたからによるものだった。


 霧崎先輩の彼氏は年上でイケメン大学生のモデル仲間だったというのは聞いてる。そしてその大学生のモデル彼氏は複数人の女性と交際していたというのも聞いている。


 まぁこの世界は男女比がおかしくて一夫多妻制が導入されてるから別に男が複数の女性と付き合ってるのは問題ではない。


 それに霧崎先輩から今までデートとかしてる話は何度も聞いてたからモデルの彼氏とは凄く仲が良いと思ってたんだけど……でも実際にはそんな事もなかったのかな?


「え、えぇっと、でもどうして急に別れちゃったんですか? 性格の不一致とかそういうやつですか?」

「いや別れたってか一方的に降られたんだよ。はぁ、マジで最低過ぎるわ……デートではいつも高級レストランに行きたいとか高い服をプレゼントしろとか毎回我儘な要求に答えてきてたってのに……それにデートだって今まで何度もドタキャンされても全部笑顔で許してきたってのにさぁ……それなのに昨日いきなり“お前みたいなケバい女は好きじゃないから別れる”って一方的に言ってきたのよ。あり得なくない?」

「そ、そんな酷い事言われたんですか? それは酷いですね……」


 何というかやっぱりこの貞操逆転世界に住んでる男子達は数が圧倒的に少ないから、女子に対して上だという意識を持ってる男が多いようだ。


 そしてその結果として女子の事を酷く扱う男も多い感じがするな……。


「だよね? 今更お前みたいなド派手な女よりも清楚系な女の子の方がタイプだったとか言われても知らないわよ。はぁ、本当にイラっとしたわ……」


 そんな感じで霧崎先輩はどんどんと怒りが湧いてきたようだ。俺はそんな怒っている先輩の愚痴を黙って聞き続けていった。


「はぁ、しかもさ……“お前はデートの時に全然金を出してくれないし、前のデートの時には割り勘をお願いされて完全に冷めたからもう無理だ”とか言ってきたんだよ? いやそりゃあお前の他の彼女はめっちゃ金稼いでるイケイケな社長とかばっかりじゃんか。そんな金持ち女と高校生の私の財力を一緒にしないで欲しいわ。いやもちろん私だってモデルの仕事はしてるけど、でも基本的に学業優先にしてるんだからそんなモデルの仕事も沢山やってないし金持ってない事くらいわかってるだろ。それでも今まで付き合ってたから頑張ってお金は全部出してたってのに、本当にムカつくわ……はぁ」

「い、いや、先輩の話を聞いてる限り本当に酷いですね。それは先輩は何も悪くないですよ。本当にお疲れさまでした。今日はそのジュースを飲んでぱぁっと忘れちゃって下さいよ」

「ん、ありがと、王子君。それじゃあお言葉に甘えて……んく、んく、ぷはぁ。ふふ、後輩に奢って貰えるジュースは格別だなぁ」

「はは、それなら良かったですよ」


 そう言うと霧崎先輩は俺が手渡したジュースを美味しそうにゴクゴクと飲み始めていった。そして俺に向かって笑みを浮かべていってくれた。少しだけ調子を取り戻してきてくれたようだ。


―― キーンコーンカーンコーン……


 そしてそれからすぐに授業が始まるチャイムが鳴り響いていった。これからすぐに教室に戻らないと午後の授業が始まってしまう。


「あ、チャイムなっちゃったね。王子君は……本当に教室に戻らなくていいの?」

「はい、全然大丈夫です。授業よりも先輩の方が大事ですからね!」

「あらま。ふふ、王子君は凄く優しいね……うん。それじゃあせっかくだし、もうちょっと一緒に話していこっか」

「はい、了解です!」


 そう言って俺達はそれからもベンチに座りながらノンビリと話をしていった。というか先輩の愚痴をひたすらと聞き続けていった。


(だけどなんというか、俺にとって親しくしている先輩がこんな傷つけられ方をされるなんて凄く嫌だなぁ……)


 俺は霧崎先輩が傷つけられてるこの状況を見て……俺に何か先輩のために出来る事は無いかを考えていった。先輩を元気づける何か良い方法とか無いかなぁ……。

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