剣技
毎朝、女性騎士のコルネリアに剣の指導を受けていたが、ある日「もう私に教えられることは無いわ」とオスカーに戻されてしまった。
「ほう、早いな」
オスカーは刃を潰した模擬剣と防具を渡してきた。
「成果を見せてもらおう」
敵う訳ないじゃん!
と思ったが、意外と剣先が見え、初日にあれだけボロ雑巾のようにされたのが、そこそこ耐え凌げるようになっていたのには自分で驚いた。
とは言え、勝てる筈もなく、結局体力も続かず、何本負けたか分からない状態になった。
「先生、もう無理」
へたり込む私を見ていたオスカーは、ふむ、と何かを思案していた。
「上達が早いな。次に行くか」
にたぁ、と鬼教官が笑ったように見えた。
「次、次ってなんですか……」
戦々恐々として上目遣いで尋ねてみた。
「それは夕練のお楽しみだ」
楽しみたくない、怖い、何企んでるんですかー!
夕方になって、それが判明した。
目の前に騎士団予備隊の少年少女たちが七人、防具を付けてずらりと並んでいた。大きい子で私くらいの年だろうか。手にはそれぞれ大小の軽い模造刀やおもちゃの槍を構えている。全員の胸の中心に紙風船が膨らんでいた。
私の頭や首、心臓の上などにも紙風船を付けられた。
嫌な予感しかしないんですけど!
オスカーが告げた。
「お前たち、あの修復師に一斉に向かえ。彼女についている紙風船をひとつでも割った者が勝ち。紙風船を割られたものは負けだ。割られたらその場所に座る。始め!」
なんですとー!
子供たちが一斉に掛かって来た。
向かってくるなら仕方がない!
初めに剣を振り上げてきた男の子には躱し際に胸の風船を割る。後ろから来た子にはくるりと足払いを掛けて胸を突く。三番目と四番目の子は得物を持つ手を打って、落としたところで胸を突く。そのあたりで座っている子に躓いてしまった。
五番目の子の模擬刀が小気味よく私の頭の風船を割った。
「そこまで!」
「ちぇ、割られちゃった」
「お姉ちゃん、早いよ」
子供たちが口々に言う。
「その調子でしばらく続けてろ」と言い残してオスカーはどこかへ消えてしまった。
はぁあ?!
「さっ、もっぺんやろう!」と年少の少年が言う。「今度こそ僕が割るんだ!」
「割った数だけ白銅貨貰えるんだよね!」
「頑張るぞ!」
白銅貨?
よく見ると、参加していない女の子が、白板に何やら書き込んでいる。記録係迄いるのか。
誰が白銅貨支払うんだ!私か!いやだ!
それからは必死に全力で子供たちを相手した。
しかし流石は騎士団予備隊の子供たち。そう易々と勝たせてはもらえない。
夕練2時間、くたくたになって、また風呂で溺れかけたところをエルマ姉さんに摘み上げられた。
翌日の朝練では、ローブを纏った女性がいた。新米魔導師だと言う。
「オスカー君に言われて訓練つけに来ました。」
構わず打ち込んで来いと言うので、遠慮なく打ち込みに行ったが、いきなり炎が現れたり、水が降ってきたり、打ち込んだはずなのにローブしか無かったり。魔導師相手の戦いがこんなに難しいとは知らなかった。朝練が終わると腹ペコをおして救護室へ寄り、あちこちの火傷を治してもらう羽目になった。
そんな毎日を送っていると、夕練については最初予備隊の子供たちだったのが、だんだん年齢層が上がって、人数も増えていく。流石に子供たち以外には白銅貨のご褒美は無いようだった。まあ、結局白銅貨は私ではなくオスカーのポケットマネーだったようだが。
一方の朝練でも、どんどん魔導師のレベルが上がっていき、魔術師団の現役が出張ってくるようになった。
時々オスカーが相手してくれる。
自分でも上達したと思っていても、オスカーには歯が立たない。
「はぁぁ、全然追いつけない……」
「そんなに簡単に追いつかれてたまるものか」
オスカーはイイ笑顔をくれた。
だが、現場に出て、魔獣を相手にするのは随分楽になった。
多方面から襲い掛かる獣にも対処できるようになってきたし、火を吐くオオトカゲや水を撃ってくるカエルのオバケにも余裕で対処できるようになった。
「えらく上達したじゃないの。やっぱり指導はオスカー君に任せるのが正解だねぇ」
フェリクス班長の笑顔が憎たらしい。
どんだけ私が苦労していると思ってるんだぁ!




