幕間 後悔
いつしか、僕の顔には作り笑いがこべりついていた
僕は兄より出来が悪いからせめて、人を不快にさせないように笑え笑え
そう言い聞かされて育っていた
たくさんの人から言われ続けたせいでもう、『兄を追い越して見返そう』なんて思いはなくなっていた
けどあのときは違った、魔物退治に二人で出かけたあの日
魔物に襲われた兄をここで殺せばこれから称賛されるのは……
なんて思いが脳裏によぎったとき、さっと血の気が引いた
でもどこからか声が聞こえてきて
『殺さないのか?』
「だ…れ…」
『あえて言うとするなら、お前に復讐する力を与えるものかな』
「復讐?…力?…」
『ああそうだ、お前が愛されなかったのはコイツのせいだろう? 今こそ復讐するチャンスじゃないか』
「でも、フェルネを殺しちゃったらみんなに怒られる……」
『魔物に襲われた── とか理由を作ればいいだろう お前さえ乗り気になったら、我がお前の中に眠っている力を目覚めさせてやるよ』
その言葉にナイフを持つ手に力がこもる
「わかった、僕は…僕は…フェルネを…殺す!」
倒れている血塗れのフェルネに近づく、まだぎりぎり息はある
『お前のその強い意志、しかと理解した』
謎の声がそう告げると自分の周りにぶわっと黒く濃い煙が湧いて僕を覆い隠した
「っ!」
視界の端が黒くなりどす黒い感情が心の奥から湧き出で来る
「お前さえ、オマエさえ居なケレバ、ボクハ、僕は みんなにアイサレタはずなのに!」
気が狂いそうになる感情が、自分が今まで押し殺していた怒りが脳を支配した
一心不乱に、構えたナイフを目の前に振りおろそうと……
「お前! 何をしている!」
その声にハッとして振り返る
『我が魔力を糧に 眼前の敵に水の刃を降り注がせ』
《アクアスラッシュ》
冒険者らしき人のはなった魔法で僕の身体はズタズタに切り裂かれた
「ぐはっ」
地面に付いた吐血を視界に捉えたあと、視界が暗くなっていく
夢から覚めた、隣のベットにはうなされている兄がいる
(起こしてあげなくちゃ)
そう思ってベットから出る
窓に映る首筋の傷が目に入る
(フェルネはこの傷のこと謝ってくれたけど 本当に僕が悪いんだ)
「いつまで僕はこの昔後悔の夢を見るんだろ」
ぽつりとつぶやいて口をつぐむ
頭を振って嫌な考えを消す
そしていつもの作り笑いを浮かべて付けて生きるんだ




