不老の双子
~アルフォント王国スラム街 (旧ルフェルス王国城下町)にて~
金髪碧眼の青年2人がスラム街を駆け抜けていた。
「待ってよ~フェルネ~ だから待ってってば~」
後ろから弟のフェルノが息を切らして追ってくる
「待たん、さっきの奴らに素性がばれたかもしれん」
というかこの変装ももう使えないな、とつぶやく俺に
「も~ フェルネは無駄に疑り深いんだから~」
そんなんだからあんまりお金貯まらないんだよ~ というフェイノを 油断して捕まるよりましだろ とたしなめる
「それにこの四十年間の努力が水の泡になるだろ」
「は~い 今夜こそこの国から逃げるんだからね」
いつもはふわふわした碧眼が怪しく輝いた気がした
そう思ったとき昔の記憶が俺の脳裏をよぎった。昔……まだ俺達の母親が生きていた頃……
『フェルノはすごいな、またテストで学年1位だったのか』
『えへへ、そんなでもないよ。フェルネ兄さんだって剣術の大会で優勝したんでしょ』
『2人とすごいね。じゃあ今日は少し豪華な食事にしちゃおうかな』
『『やったー』』
平和な日々、暖かな家 おいしい食事、こんな生活がずっと続くと思っていた。
その二週間後、この国は隣国との戦争によってこの国は……
「……ルネ、フェルネ 聞いてる?」
「ああなんだ」
「だから~ これからの変装どうするの?」
「ああそうだな、まだ作戦をたてるための情報が足りないからな」
「じゃあ女装でもする?」
「は?女装?」
「うん、僕って昔から女っぽいって言われているでしょう? だから女装すれば……」
「だが……」
「まあまあ 物は試しでしょう? こんなこともあろうかと服は作ってあるから」
そう言ったフェルノは肩掛け鞄からスカートを取り出して俺に見せた。
「まあ服を買う必要がないのだったら」
「じゃあ僕は着替えて聞き込みしてくるから16時に隠れ家集合ね~」
「ああ」
じゃあね~ と言いフェルノは路地裏に駆けていった。
今日は俺達の……1020回目の誕生日だ
隣国が攻めてきた時俺とフェルノは死にかけのフェルノを救うため不老になった
あの日助けた人々だって、もうとうの昔に死んでしまった。
俺達は老衰して死ぬことがない。
だから、戦争が終わった後2人で死ぬつもりだった、けれど……
「ルネ、フェルネ! 着替え終わったよ」
という声に意識が覚醒する
「ああすまん 少しボーッとしてた」
と、声のした方を振り返ると、金髪碧眼の少女……、いや女装をしたフェルノが。
「疲れてるんじゃない?僕が帰るまで隠れ家で休んだら?」
「そうさせてもらうが、フェルノ、お前の女装のクオリティ高いな。ただ声が……」
「あっ、それは大丈夫」
フェルノは肩掛け鞄から薬瓶を取り出した
「これで声が高くできるよ~」
そう言ったフェルノは薬瓶を口に付けそこに入っていた液体を飲み干した。
少し咳き込んでから口を開くと
「これでどう?」
フェルノから発せられた声はまさに女の声だった。薬一つでこんなに変わるもんなのか
「その薬、どこで手に入れたんだ?」
「ああこれ? 僕が作ったんだよ~」
すごいでしょ~ とフェルノは笑った。
「じゃあ俺は隠れ家に戻って少し休ませてもらう」
「うん、じゃあ僕は聞き込みしてくるから~」
そう言ってフェルノは走って行った。
十分後、俺は隠れ家の前にたっていた。
きしむ扉を開け、中に入ると急に強烈な眠気が俺を襲った。
「16時になればアイツが起こしてくれるだろう」
俺はソファーに横になり、まもなく深い眠りに落ちていった
大勢が騒ぐ声とフェルノの声で俺は目を覚ました。
ベッドに寝かされた身体には沢山の包帯が巻かれ、周りを沢山の医師が取り囲んでいた。
俺が目を覚ました事に気付いた医師の1人が口を開いた。
『ああ、フェルネ様。目を覚まされたのですね』
『ここは、いったい? 俺は森の中でモンスターに襲われて、それにこの騒ぎは?』
『ここは城の医務室でございます。と、とりあえず外にでましょう。』
医師の手を借り医務室から出ると騒ぎ声がより大きく聞こえた。
『こちらです』
『ああ』
医師に案内されてついたのは、決闘場だった。
そこには、死刑台の上に横たわっているフェルノと、フェルノに石を投げつける民衆の姿があった。
それにこの国の王と今は友好関係にあるルフェルス王国の王が、一番見晴らしの良い席に座っていた。
状況が整理できていない俺の横で、医師が大声で
『我々の国の救世主であるフェルネ様を暗殺しようとした罪でこの者、フェルノ・リールを死刑とする!』
と宣言した。
急なできごとに頭が真っ白になった。けれど
『兄さん! フェルネ兄さん!』
というフェルノの声ではっとした。
『僕はフェルネ兄さんを暗殺しようとなんかしてない!だから助けて!』
死刑台の上で身じろぐフェルノの瞳は涙に濡れていた。
『俺は魔物に襲われただけで、フェルノに殺されそうになってなどいない!』
と言ったって誰も聞いてくれない。俺達の声を無視して、民衆は勝手に話を進めていった。
『それではフェルノ・リールをフェルネ様暗殺未遂で処刑する!』
『『うおー!』』
盛り上がる群衆達の声に俺たちの声はかき消された。
まもなくギロチンの刃が吊されているロープに向かって兵士の1人が剣を振り上げた。
その剣が振り下ろされた時、民衆の声が一層大きくなり、再度俺の頭が真っ白になった。
気が付くと俺は、民衆の血で赤く染まった正方形の決闘場の真ん中、死刑台の横で、座りこんだ隣国の王に向かい、金の長く鋭い爪を振り上げていた。
王は俺の理性が戻ったことを悟ると口を開いた。
『俺と取引をしないか?』




