番外編 ミッション・イン・ポッシブル 〜ふたりきりのデートを成功させよ!〜 後編
いつも読んでくださり、本当に、本当に、ありがとうございます。
これにてひとまず完結とさせて頂きます。
ここまで書けたのも皆様のおかげです。感謝!!
GW中に一話完結のお話を投稿し、その後新しい長編へと移りたいと思っております。
長い間読んでくださり、本当に本当に、本当に!!ありがとうございました!!
デート当日。
ふたりの仲を祝福するかのように晴れ渡る空の下、僕は愛馬でレーナを迎えに来たの、だが…………。
☆AM9:00 アルエスク城前
「ご機嫌よう、ガルロノフ様!」
「…………………………………………聖女様、なぜこちらに?」
「奇遇ですね!たまたま、たまったま!お城を出たらレギーナ姫と遭遇したんです!もう、これって運命ですよねっ!」
「へ、へぇ〜。そうなんですね〜……」
絶対嘘だ!!!たまたまなわけないだろう!
っていうか運命ってなんだよ!?レーナの運命は僕だよ!
きっと聖女様がどこかからか情報を聞きつけ、駆けつけたに違いない………!
僕はバッ!とレーナの後方を見る。
もちろんそこには彼女の侍女が。
だが、侍女も少し驚いた表情でこちらに首を振っている。
レーナの侍女が情報を流したのではない、だと…?
聖女の情報収集能力どんだけだよ!!
聖女様は終始レーナの左腕にべったりとくっつき、全く退散する素振りを見せない。
こ、この流れは、もしや………!
「まぁ!馬でお出かけするんですか?素敵!でも馬って大きいですよね。怖くないんですか?」
「確かに最初は怖いかもしれませんわね。でもとっても可愛いんですのよ。詩織様は馬に乗ったことがごさいませんの?」
「そうなんです!乗る機会が全然無くて…」
「確かに日本では乗る機会もなかなかありませんわよね」
「そうなんです、そうなんです!!いつかは乗ってみたいんですけどぉ〜」
「あー、そうですわよねー……」
チラッ。チラッ。
聖女様とレーナが僕を伺う目で見てくる。
ここで誘わなかったら心の狭いやつだと思われるじゃないか…!
「よ……………………………………………………よろしければ、ご一緒しませんk「いいんですかぁ!?」
食い気味!!この言葉待ってたよね!?うん、分かってたよ?分かってたけどさぁ!!
僕が内心怨めしく思っているのに気付かないまま、ふたりはキャッキャと話を進めている。
「とっても楽しみです!でも私、乗ったことがないから不安で…」
「後ろに経験者が乗れば問題ありませんわ!」
「ふたり乗りってことですか?」
「そうですわ!もう一頭馬を連れて参りますので、詩織様はオーリャの馬に乗ってk「いえ!レギーナ姫と一緒の馬がいいです!!」
前のめりで食い気味に鼻息荒く強請る聖女様。
聖女があんなに欲望に真っ直ぐでいいのかよ。
「あ、あら。でもわたくしよりオーリャの方が乗馬に慣れていますので、その方が……」
「でも私、男性って苦手で………」
うるうると瞳を潤ませ、レーナを上目遣いで見つめる聖女様。
小動物を思わせるその仕草は庇護欲がそそられ、可愛い…………のだろう。一般的には。
現にレーナは顔を赤くして狼狽えている。
「で、ではわたくしの馬にふたり乗りの鞍を乗せますので、ご一緒しましょう?」
「やったー!ありがとうございます!」
「チッ!」
くっそぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!
舌打ちしか出ねぇよコンチクショー!!!
僕の前にレーナが乗って、腰に手を回して支えてあげる計画が!そっと耳元で囁いてレーナを赤くする計画が!こっそり頭や耳の後ろを嗅ぐ計画がぁ!!!
………ハッ!?
気付けば、聖女様と侍女が虫けらでもみるかのような目で僕を見ていた。ぐぅ……なぜ僕の心が読めるんだ。
い、いかん。こんなことをしている場合じゃない。
この流れをこれ以上長引かせないよう、断ち切らなければ、聖女様が一日中べったりくっついてきてしまう……!
そ、そうだ!!
「聖女様。生憎昼は予定が入っておりまして……。午前中だけとなってしまいますがよろしいですか?」
「えっ!なんでよ!?」
「大変申し訳ございません。昼はレストランに予約を入れておりまして。人気のレストラン故、当日に人数を増やすことが出来かねるのです」
「そ、そうなんですね………」
しおらしいトーンで言ってはいるが、顔が憎らしげに歪んでいる。
もはや顔が聖女じゃない。
そしてレストランの件は事実だ。
ピクニックにしようと思っていたが、今、貴族たちの間で話題のレストランに、たまたま二人分のキャンセルが入ったという情報を入手したため、直前で予定を変更したのだ。
グッジョブ!僕!
「詩織様、お手を」
急遽用意させた馬に乗馬服のレーナがひらりと乗ると、スッと聖女様に手を差し出した。
「は、はひ……………♡」
あ"ぁ――――――――――――――――そこ僕の席ぃ―――――――――――――――。
☆AM12:00 貴族街のレストラン前
ようやく聖女様と別れ、騎士服から着替えたレーナとレストランへ来た。
やっとふたりっきり……!
午前中はずっとふたりのイチャイチャを見せつけられて、脳の血管が何本か切れたに違いない。
レーナが合間、合間に僕に話を振ってくれるも、聖女様が邪魔をしてくるのだ。
お得意の外行きスマイルで終始穏やかなふりをしていたが、心の中では地団駄を踏み、転げ回り、ハンカチを咥えてキーキー泣き喚いていた。
だから、聖女様を見送り、馬車に乗り込んだ時の嬉しさと言ったら…………!
まぁ、残念だったのはレーナが僕の隣ではなく目の前に座っていたことと、その横に侍女が無表情で座っていたことだろうか。
侍女を馬車から追い出すことは礼儀に反するため、さすがに憚られたのだ。
「ガルロノフ様、お待ちしておりました」
調度品も美しく揃えられた店内へ入ると、支配人と思わしき人物に恭しく挨拶をされる。
そして丁寧に通された僕たちの席、は…………
「キグウダナ。オマエタチモキテタノカ」
「お兄様!?」
ヴァシリー殿下が隣にいるぅ―――――――――!!
棒読みのヴァシリー殿下がなんかいるぅ―――――――――!!
…………………あぁ!!
ま、まさか、急にレストランのキャンセルが入ったのも、その情報を逆に掴まされたのも、ヴァシリー殿下の罠!?や、やられた………!
なんて策士だ!!才能の無駄遣いにもほどがある!!
「お兄様はよくこちらに来られますの?」
「いや、初めてだ!だから何を頼んだらいいか悩んでしまってな!丁度いい。相談に乗ってくれるか?オレグ」
「…………………………………………ハイ、ヨロコンデ」
結局、ヴァシリー殿下と3人でごはんを食べることになってしまった。トホホ。
☆15:00 一番人気のブティック
結局食後のお茶までがっつり付き合わされ、ヴァシリー殿下がパーヴェル様に連行されるまで3人の時間は続いた。
フルコースは長いのだ……!
「え?ドレスですの?」
「そう。僕に大好きなレーナを着飾らせてくれないかな?」
「で、でも、払っていただくわけには……」
こういう時、レーナは王女なのに考え方が王女らしくない。
前世で庶民だったからその感覚が抜けないらしい。
その感覚は上に立つ者としてとても称賛に値するし、奥ゆかしく可愛いとは思うのだが、男にはロマンがあるのだ。
そう……愛する人を自分好みに着飾りたい!というロマンが!!
今は我慢するが、結婚したらもちろん、ランジェリーも自分好みで着てもらう気満々だ。
店の中身全部買う気満々だ!!
「ねぇ、レーナ。知ってる?男性が女性にドレスを送る意味」
「意味、ですの……?」
キョトンとしたレーナ可愛い。好き。
僕はレーナの耳元で、そっと囁く。
「自分の手で脱がせたい………ってコト」
「!!?!?!?」
ぼぼぼっと顔を真っ赤にするレーナ。
可愛い可愛い脱がせたい可愛い好き。
「だから、僕の気持ちだけでも受け入れて?」
「え?ぅえっ?」
明らかにさっきよりも赤く、熱くなった耳に、今度は触れるか触れないかの距離まで唇を寄せる。
「本当に脱がせるのは結婚するまで待つから……ね?」
「〜〜〜〜〜!!!!」
我慢できずにそのままチュッと耳に口付け、何事もなかったかのようにレーナの肩を抱いたままブティックへ入る。
さぁ!いざ、ふたりの空間へ!!
「おぉ。お前らも来たのか」
「いや、なんでだよ!!!」
なんでここにルスラン殿下がいるんだよ!?
女性服のブティックなんて用事ないだろう!?
お前、彼女いねぇじゃねぇか!!!
「……………おい。お前なんか今、失礼なこと考えただろ」
「…………………………ソンナコトゴザイマセン」
ルスラン・ゼレグラント、恐るべし。伊達に王子やってないな。
「今日は妹にアルエスクのドレスを買いに来たんだ。ゼレグラントとは流行りが少し違うからな。残念ながらアルエスクの流行はゼレグラントよりも早く、そして洗練されている」
「そうですか…………しかし、今日は公爵家で貸し切りにしていたはずなんですが」
「そりゃ公爵家よりも王子の方が格上だからな!権力振りかざしたに決まってるだろ!」
高らかに、さも当たり前かのように豪快に笑うルスラン殿下。
ふと見てみればブティックの女性主人が申し訳無さそうな顔でこちらを見ていた。
チッ。脅迫したか………。
「でも女性の流行が全く分からなくてな」
「では主人、この方についてあげて下さ「レギーナ姫。是非アドバイスをもらえないだろうか?」
「わ、わたくしがですか?」
やっぱりかぁぁぁあああああ!!!
絶対にそれが狙いだとは分かっていたけども!
流行が分からないならここの主人にアドバイスをもらうのが一番いいに決まってるだろう!?
彼女が!アルエスクの!流行を作ってるんだ!!!
結局主人も含めてあーでもない、こーでもないと盛り上がる三人を横目に、諦めの境地でレーナの専属侍女に問う。
「ねぇ、どうしてみんな僕たちの邪魔をするのかな…。情報を流したのは君じゃないんだよね?」
「はい。今回は姫様に誓って違います」
じゃあ絶対に違うか。
てことは他のみんながレーナの動向を常に探っている、ということか……。
「モテすぎるんだよな、レーナは」
「外見も内面も全てが美しい方ですから」
そうだよな……。あんなに完璧な女性、そうそういない。
優しさに溢れていて、更に美しくて。直に話をして好きにならない方がおかしい。
「ふたりきりになりたかったなぁ………」
今日という日を楽しみにしていたからこそ、余計にがっかりしてしまった。
だから僕がため息まじりに吐いたその小さな呟きを、レーナの耳が拾っていたことには全く気付かなかった。
☆17:00 アルエスク城前
ついに帰ってきてしまった…。
結局ほぼ、ふたりになれなかった…。
アルエスク城に滞在しているルスラン殿下は、同じ馬車で帰ってきたのだ。
来たときの馬車で帰れよ!
情けをかけられたのか、最後の別れだけ(専属侍女と護衛はいるが)ふたりきりとなった。
「今日はとても楽しかったよ」
これは本当だ。
例え他の人たちが居ようとも、レーナの笑顔を見るのは嬉しいし、楽しい。
ただ、期待し過ぎていただけで。
「わたくしも楽しかったですわ。オーリャは帰り、馬ですわよね?」
「うん、そうだね。城の馬屋に預けてあるから、そこから乗って帰るよ」
「ではそこまでご一緒させてくださいませ」
お見送りしてくれるっていうのか!?う、嬉しい…!
馬屋までではあるが、ふたりだけの散歩に浮足立つ僕。
まぁ侍女と護衛は相変わらずついてくるが、他のライバル達が纏わりつくのよりは全然いい。
笑顔を交えながら、和やかに、ゆっくりと歩く。
レーナも名残惜しいと思っていてくれていたらいいのに…なんて、なんとも乙女な考えが過り、ひとり微苦笑する。
「そのドレス、すごく似合ってる。僕の我儘を聞いてくれてありがとう」
「我儘だなんて!とても可愛らしくて、すごく気に入りましたわ!他にもたくさん買っていただいてしまって…」
「いいんだよ。それこそ僕の我儘だから」
レーナは昼間のやり取り……『男がドレスを贈るのは、脱がせたいから』という言葉を思い出したのか、頬を染めて顔を俯かせる。
隠しているつもりかもしれないが、耳や首が赤いのはどうやったって隠せない。
「可愛い………」
ぼそりと呟いた言葉が聞こえたのか、益々赤くなって、暫く可愛い顔を見せてはくれなかった。残念。
「またね」
楽しい時間はあっという間で、すぐに馬屋に着いてしまった。
馬上から最後の挨拶をすると、レーナはニヤリと笑い、後ろの侍女と護衛に「申し訳ございませんわ」と、謝った……?
そして僕の後ろにひらりと乗ると、横乗りのまま腰に抱きついてきた。
「さぁ!行ってくださいませ!」
「えっ!?」
僕が狼狽えているのにも構わず、レーナは馬の腹を蹴る。
突然走りだした馬上でなんとかバランスを崩さないよう努力している間に、レーナは「少ししたら帰りますわー!」と侍女と護衛に叫んだ。
「レ、レーナ!?」
「うふふ。行きたい所がありますの。ふたりで!」
振り返ったレーナの満面の笑みは、後でとんでもなく偉い人たちにとんでもなく怒られても全然構わない、と思わせるくらいには可愛かった。
レーナに案内されて来たのは城の裏にある塔だった。
その昔、王室魔術師団がここで活動していたらしいのだが、数年前に新しく建物が建てられたため、現在は使用されていない場所だ。
「南京錠が付いてるね」
「大丈夫ですわ!まず光魔法で鍵穴に光を満たし、固める。そしてそれをそのまま回せば………」
カチャリ。
えぇっ!?一国の王女が鍵開けが得意とか…………え?ふたりだけの秘密?うん、分かった。墓場まで持っていく!
でも人差し指を唇に当ててウインクとか、他の人にやっちゃだめだよ?可愛すぎるから。
塔は5階建てで、5階のベランダから西の方角を見れば、ちょうど太陽が沈むところだった。
「この景色を一緒に見たかったんですの」
「すごく綺麗だね」
城下町の奥の方で太陽がゆっくりと沈む様は、毎日同じように沈んでいるとは思えないくらい、非日常的で美しかった。
レーナと一緒に見ているから、というのはかなり大きな理由かもしれないけど。
「………………今日は、ごめんなさい」
「何がだい?」
「その、デートだったのにたくさんの人たちが来てしまって……」
「それはレーナのせいじゃないだろう?」
「でも、拒否しようとすれば拒否できましたわ」
ぽつりぽつりと説明してくれた内容を聞けば、レーナは僕の『ふたりきりになりたかった』という発言を聞いて、思うところがあったらしい。
「わたくし、オーリャがふたりきりになることを望んでくれているだなんて思いもしませんでしたの。だってお茶会に誰が加わろうとも、いつもニコニコしてらしたから………」
「ははっ。僕はレーナが笑顔ならそれでいいんだ。ただ……うん、正直に言うと、たまにはふたりきりの時間も欲しいかな。………なんて。ごめんね、欲張りで」
「そんな、欲張りだなんて……。そう思ってくださるのは、とても、う、嬉しいです、わ…………」
「そ、そうか!」
ふたりの顔が赤いのは、夕日のせいだけではないだろう。
「わ、わたくしもふたりになれるのは嬉しいですわ……とても。でも、オーリャがお兄様や詩織様、ルスラン様と頻繁に親交を深められるのは、まだわたくしが城に住んでいる今だけですもの。将来公爵家を継ぐのなら、きっと役に立つ人脈ですわ」
なんてことだ……!まさかの僕のためだったなんて!
それなのに僕は自分のことばかりで………は、恥ずかしい……………!!
「……………でも、とても嬉しかったのですわ。オーリャがわたくしとふたりになりたかったと聞いて」
「ごめんね、君は僕のことを考えてくれていたのに……」
「そんな!わたくしも実は………ふたりの時間が欲しいと思っておりましたもの」
「レーナ……!」
レーナをふわりと抱きしめる。
いいにおい……。
衝動のまま、恥ずかしがるレーナの頬に手を添えて上向かせる。
碧い瞳が潤み、頬は薄っすらと赤く染まっていて、すごく色っぽい。
思わずごくりと喉を鳴らし、ゆっくりと唇を合わせる。
柔らかい………。
ずっとそのままでいたかったが、名残惜しい気持ちになんとか蓋をして、唇を離す。
触れるだけの口付けなのに、頭がふわふわする。
これは、病みつきになりそうだ…………。
もう一度レーナを腕の中に収める。
レーナも夢見心地な様子で、僕に体重を預けてくれる。
「結婚式が待ち遠しいよ」
僕らは完全に落ちる太陽を見ながら、幸せな未来を夢見ていたのだった。
今まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
いつか気が向きましたらまた他の番外編とか投稿したいな…。
次はとりあえず一話完結のお話を。
GWの始まりには投稿したいですが……長くなってしまったら分けて投稿するかもです。
まだまだ書きたいお話はあるので、これからお付き合い下さると嬉しいです。




