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第百二十六話

 食後の食休みを挟んでからまた別行動になり、三人が十分離れたところで立花と倉橋は空を舞った。

 体力と筋力が付いたと言っても、まだ板に乗れる自信はないので立花は絨毯だ。ついでに言うと、普通に飛んで行くわけではないので倉橋も立花の絨毯に乗っている。

 立花は初期の衛星を直上に移動させて方向を確認した。


「じゃ、行くぞ」

「了解です」


 言って目を細める倉橋。

 それを見てから立花は転移を開始した。

 目的地はルストレストのマルケドナ。渓谷からは普通に行けば一週間はかかる場所だ。なので、立花はグリッドから場所を聞いてから目視転移しやすいルートを衛星を使って割り出していた。

 コマ送りのように一瞬で切り替わっていく風景に、倉橋は細めている目を普通に開けた。


「大丈夫みたいです。特に気持ち悪くなりません」

「そうか? まぁ無理はするな」

「ほら、高速道路のトンネルって、照明の間隔で社内が暗くなったり明るくなったりするじゃないですか。あれと同じ感じです」


 高速転移を高速道路のトンネルと称す倉橋に笑う立花。

 現地人のエンデがこれを受けると、普通に気持ち悪くなるだろうなと想像していた。

 倉橋の場合はそもそも新幹線や飛行機など早い乗り物に慣れているからこそ、視界が一瞬で切り替わる事に脳に耐性があった。


「この分でいくと早く着きそうですね」

「まぁ時速に換算するとマッハに余裕で入るからな」

「わぁ。戦闘機並み」

 

 とか言っている間に目的のマルケドナという街を望遠で確認する立花。


「ほらついた」

「ものの数分でしたねー……今後の移動もこれでしては?」

「エンデが目を回すぞ」

「そうなんです? じゃあ目を閉じていてもらって」


 相変わらず情緒の欠片も無い事を言う倉橋に、苦笑いを浮かべる立花。


「冗談ですよ。飛行船、結構楽しいので」

「そりゃ良かった。降りるぞ」

「はーい」


 地上近くまで絨毯を降ろすと、先にスタッと倉橋が飛び降りた。立花は普通に地面すれすれのところまで下げてから降りた。


「マルケドナってルストレストの首都ですよね」


 目の上に手を翳し、遠目に街を見ながら言う倉橋。


「首都っていうか、王都な。王政だから」

「その割にはあんまり大きくないですね。メーアは結構大都市って感じでしたけど」

「その辺は土地柄とか財政事情とか人口とか関係してるんだろう。

 もう少し近くまで転移するぞ」


 あぁはいと倉橋は立花に近づき、二人とも一瞬でマルケドナの街の近くに転移した。

 マルケドナは赤や緑の屋根に黄色の外壁という家が多く、うっすら雪を屋根につけた姿はどこか人形ハウスを並べているようなかわいらしさがあった。


「意外にも木造建築なんですね」

「基礎の部分はしっかり石が組んであるな」


 街に入る門のところでは身分証としてギルドの登録証を出し、そのランクの低さに地方からきたお上りさんと思われたのか、スリに注意するよう言われてしまった。

 外見は二人ともまだ子供の域なので内心苦笑しながら、真面目な顔して立花は礼を言っておいた。


「ギルドに行くんです?」

「あぁ。今日行くことは連絡してもらってるから」


 近くで見てもカラフルな色使いの家々にちょっとうきうきしながら倉橋は歩いた。

 すれ違う人達は厚手の服に外套を羽織っているが刺し色のようにマフラーや帽子、ブーツの色が明るいのでどんよりした感じにはならず華やかさがあった。


「なんか、あんまりお金が無い国って感じに見えませんけど」


 小声で囁く倉橋に、立花もそうだなと返した。

 ギルドの位置は街の中心部だと聞いていたので大通りをそのまま歩いていると、それらしき建物が見えた。

 周りの家の三軒分程の大きさだったが、カラフルな外壁が並ぶ中、木目そのままの建物は逆に目立っていた。

 立花は建物の入り口にかけられた看板を見てここだなと呟き、中へと入る。

 入口のドアを開けて入ると、狭い小部屋になっておりさらにもう一枚ドアがあった。


「外気が入らないようにしてるんだな」

「あぁ、ホテルとかの入り口が二重になってるアレですか」


 その小部屋でも大分暖かかったが、もう一枚のドアを開けると一気に温度が変わった。

 中はアーキリのギルドと同様の造りだったが、中央に置かれた縦長のストーブのようなものが違った。

 あれで温めてるのかと横目に見ながら、空いている受付に近づく立花。


「グナスコの使いで来ました。ギルドマスターに取次をお願いできますか?」


 言って登録証を出すと、一瞬受付嬢は怪訝そうな顔をしたが登録証の名前を確認して「あ」と声を出し、少々お待ちくださいと言ってバックヤードに消えた。


〝グナスコ?〟

〝符丁だよ。グナスコはここからさらに東にいったところの街〟

〝ああそういう事ですか〟


 二人して待っていると、受付嬢が戻ってきて横の職員通路から手招いた。


「こちらへ」

「はい」


 案内されるまま階段を上り三階の部屋に通されると、待っていたのはグリッドとは対照的な人物だった。


「ようこそ。グリッドから話は聞いてるよ。マルケドナのギルドマスター、フォックスだ」


 中肉中背、その相貌も厳めしいわけではなくごく普通のその辺のおじさんという感じの男が立ち上がって二人を招いた。


ブクマ、評価ありがとうございます。

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