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20/22

Episode.20 魔王と戦います

 カオスだ。

 こんなのは望んでなかった。


 避けようとするほど近づくカオスかな リュウ


 川柳よんでる場合じゃねぇ。

 あの黒鎧の時を凌駕する絶体絶命のピンチだ。 


 違う、誤解なんだ、みたいな不倫バレみたいなセリフは絶対に言わんぞ。

 断じて言うもんか!


 一応断っておくが、そんな実体験はない。

 そもそもオレは未婚だ。

 彼女いない歴十年だ。


御主人様(マスター)、脳内自己紹介はその辺にした方が』


 ほっとけ!

 イヤなら聞くな。


「リュウさん! もしリュウさんならこっちを向いてください!」


 エレノア嬢の必死な叫び。

 だが少しはオレの気持ちも察してくれ。

 いや、さすがにそりゃ無理か。


「やはりあなたは魔王の配下だったのですね」


 違うってば!

 ちょっとこの王女の言い方、腹立つわー。

 軽く殺意湧くわー。


「リュウよ。やっとその気になってくれたか」


「ちげーよ。なるわけねーだろ。そこはちゃんと否定してくれ」


 何故か魔王にだけは対等に突っ込める自分が怖い。

 一番怖い相手に一番心を開ける、それが怪人クオリティ。


「フリーディア様、今の……」


「聞いたわ。でも否定する根拠にはなりません」


 まったく頑固な王女だな。

 ぶっちゃけあんたらがどう思おうとこっちはどうでもいいんだが……。


 …………。


 あーあ、しょーがねーなー。


「じゃあせっかくだから、ここらで決着つけるか、魔王」


御主人様(マスター)、いきなり何を言っているのですか』


「フハハハ、面白い。実に面白いぞ、リュウ」


 今の言葉ですべて理解できる魔王、やはりさすがだ。


御主人様(マスター)!?』


 いいからいいから。

 どうせいつかはやらなきゃいけなかったんだし、いい機会だろ。


『そういう問題ではありません。勝算はあるのですか』


 いや、知らんし。

 なんとかなるでしょ。

 だってオレ、怪人415号改なんだし。


『改をつけても強くなるわけではありません』


 脱皮して強くなったって言ったのお前じゃん。

 アグナス程度じゃ全然物足りなかったから、魔王相手に派手に試運転と行こうぜ。

 イェイイェイ!


御主人様(マスター)、正気に戻ってください!』


 おい、打つなよ。

 若干浮かれたのは認めるが、オレは正気だっつーの。

 それに一応作戦はあるんだ。


『それはどういう……』


「では始めようか」


 魔王が宣言すると、ゆっくりと見せつけるように指輪を外した。


「あっ……」


 まさか初手でそれをやられるとは!

 くそっ!

 慌ててオレも指輪を外す。


『まさか作戦というのは……』


 そのまさかだよ。

 指輪を分身に嵌めて、そいつをブチ殺そうと思ってたのに、まさか魔王に先に外されてしまうとは!


「これでお互い遠慮なくやれるな」


 魔王がいかにも嬉しそうに笑う。

 怖い、怖いよ。

 やっぱりまた今度にしない?


 いきなり魔王が突っ込んできた。


 おい、待て!

 後ろにエレノア嬢と王女がいるんだぞ。


 ガッ!


 魔王の拳を、顔の前で両腕をクロスして防ぐ。

 意外にもちゃんとガードできた。


 だが、まだパック注入できていない!

 そんな隙ない!


 右拳を引いたかと思ったら左が襲って来る。

 外側にパリィで受けて、今度はオレから左ストレートを……。


 ゴッ!!


 下から膝がオレの顎を直撃。

 思わず真上を見上げて体が浮いたところへ、右拳キター!


 ドゴァッ!!


 見えていたのに避けられなかった。

 顔面を上から地面に叩きつけられる。


 完全に死んだと思った。

 死んだと思った自分に生きてる現実を感じて安心した。


 ありがとう、クロカタゾウムシの外骨格。


「きゃああああっ!」


 エレノア嬢の悲鳴が響く。

 王女は無言かよ。


 複眼モードON。


 見える見えるぞ。

 ほぼ360度全方位が見える。


 そして、この状態だと相手の動きが遅くなる。

 複眼状態ではひとつひとつの眼で捉えた映像を処理するために、CPUの演算能力がケタ違いに向上するらしい。

 つまり、実質的なスローモーション効果が得られるのだ。


 無慈悲な魔王が地面に仰向けにひっくり返ったオレに追撃を加えようとしていた。

 まだ特殊能力や必殺技的なものではなく、単純な肉弾戦できてくれるだけありがたいのかもしれないが、あまりに容赦なさすぎて引くわー。


 オレは倒れたまま羽根を開くと、仰向けのまま低空飛行で高速離脱。

 美女二人とは逆方向に離れて着地。


 1番パック注入。


Status Up


 5番パック、6番パックも注入。


Resistance Mode:on

Sensory enhancement:on


『良い判断です、御主人様(マスター)


 まーな。


 でもこれでたぶんようやく対等、ぐらいのはず。


 低空飛行をダッシュ代わりにしながら、魔王の背後をとって後ろから攻撃――。


「ぐっ……」


 アレだ。

 相手を動けなくする念動力的な能力。

 やはり掌を向けた相手に対して発動するらしい。


『全身に圧力がかかっています。このままでは危険です』


 え、うそ?

 クロカタゾウムシでも?


『おそらく』


 マジかよ!

 さすマオ。


 全神経を羽根に集中してフルパワーで飛ぶ。


 バサバサバサ!


「よっしゃ!」


 脱出成功。

 思わずガッツポーズ。


「なぁ、あの力、無限に使い放題だと思うか?」


『わかりません。ルラの消費は認められますが、魔法以外の能力と思われます』


「なんでそう思う?」


『この世界では無詠唱魔法の存在は確認されていません』


 へぇ、そうなんだ。


「魔王だけ特別ってことはねぇのかよ」


『判定不能です』


「ふーん。でもまぁ魔法じゃないならワンチャンありだな」


『それはどういう根拠によるものですか』


「まぁまぁ、いいってことよ」


 オレが脳内で言語化しなければオズに読まれることはない。

 生体活動や感情は勝手に読み取られるが、思考を読むには一定の制限があるのだ。

 この数ヵ月の付き合いで学んだ事実だ。


「あ、それと魔王のステータス、なんとかして見られるようにならないか?」


『制限されている原因がわからないので何とも言えません』


「魔法無効化みたいな便利な技はないのかねぇ」


『ディスペル系の魔法は存在するようですが、どのみち御主人様(マスター)には使えません』


「そらそうだ」


 誰かが使えたとしてもあの魔王に効果があるかどうか……。


 とかなんとかやってると、地上に変化があった。


「おいおい、今度は何のつもりだよ王女様。攻撃とかやめてくれよ」


 王女が何やら呟き始め、エレノア嬢が王女の前を固めていた。

 まだ魔法が使えるとは畏れ入った。


 さすがの魔王も、ついさっきの光の柱のことがあるので無視するわけにもいかず、王女に向けて手を伸ばしたその時――。


「アルティメット・シールド!」


 王女が両手を前に伸ばして叫ぶと、何やらドーム状のものが二人を囲むように展開。


「あ、あれって確か……」


『連合軍の結界に似ていますね』


 そうなのだ。

 あの時の半透明の結界と似た雰囲気を感じる。

 見た目はさほど似ていないのだが。


 おそらく発生元になる魔力の使い方が似ているのかもしれない。

 同系統の魔法とか、そういう感じの。


御主人様(マスター)、まさかそれがわかるのですか?』


「え、逆にお前、なんでわかんないの?」


 わかるっつーか、なんか感じる程度だけど。


『待ってください。御主人様(マスター)の複眼経由で分析してみます』


 え、そういうこと?

 確かにあの時との違いと言えば、脱皮したのと複眼モードくらいだが。


御主人様(マスター)、お手柄です!』


「なんだよ急に。気持ち悪いな」


『複眼モードでルラの粒子を可視化することが出来ました!これでいちいち周囲の大気組成を分析しなくて済みます』


「え、そうなの? オレにはなんも見えないけど」


『これでどうぞ』


「あ!」


 見える、見えるぞ!

 王女の両手から放出されるルラが。

 ドーム状になって覆っているルラが。


 あれで多少は安全が担保されることを祈る。


「この白銀のキラキラしたのが、ルラの属性みたいな解釈でいいのか?」


『御名答です。魔王を見てください』


「おお!」


 魔王の全身には漆黒のルラが不気味に揺らめいていた。


『魔王の方はおそらく闇属性です。フリーディアは聖属性と思われます』


 魔王の方が優勢なのは纏ったルラの量だけで歴然だった。


 再び高速飛行で魔王に迫る。

 さっき滞空中に取り出した怪人ソード(オレ命名)を構えて突っ込むぜ!


 ザシュッ!


 魔王がこちらを振り向こうとしたのとほぼ同時に魔王の左腕を斬り落とす。


 やっぱりすげーぜ怪人ソード!


「ぐぬっ!」


 初めて魔王の口から苦悶の音が漏れた。


 さぁ、魔族の血は何色だ!?

 ――しかし腕からは出血した形跡がない。


 え、オレの怪人ソードの切れ味凄すぎた?


「いい攻撃だ」


 褒められちまった。

 まだそんな余裕があったとは。


 見ると、落とされた左腕を右腕で切断部にくっつけている。


 やっべ、あの回復か!


「おりゃあああああっ!」


 思わず雄叫びを上げながらめちゃくちゃに斬りかかる。


 魔王は片腕治療中のくせにオレの攻撃を避ける避ける。

 それも紙一重で交わしやがるからムカつくわー。

 オレの剣術が素人以下だからなのか?


『太刀筋を完全に見切られています』


 うるさい、わかってる!

 だが、本当にそれだけなのか?


 くっそ、せめてもう少し剣術の心得があれば違ったかもしれんな。


『所詮付け焼刃では結果は同じです』


 冷静に突っ込んでるヒマがあったら、対策考えろよ!


『7番パックを使わないのは何故ですか』


 ぐっ……。


『そうですか。見物人の安全を考えてのことでしたか』


 読むな!


 くそ、うっかり脳内で言語化しちまった。


『兵装を使わないのも同じ理由なのですね。まったくうちの御主人様(マスター)ときたら……』


 ええい、黙れ!

 魔王が本気出したらオレも本気出すっつーの!


 とかやってるうちに魔王の左腕がどうやら繋がってしまったらしいw


 再び左手をこちらに伸ばす魔王。


「おせーんだよ!」


 実際、遅く見えた。

 あの能力を使うには集中が必要なのかもしれない。


 出力を上げて後ろに回り込み、両手でXを作り背中を十字に斬ろうとしたら――。


「なっ!?」


 魔王が消えた。

 比喩でも誇張でもなんでもなく、消えたのだ。


『後ろです!』


 振り返るより前に加速!

 低空飛行しながら体をひねって180度反転着地。


「フハハハ、いいぞ。リュウ」


 魔王が禍々しい剣を振り下ろしたポーズのまま、こちらを見て笑っていた。


 なんだ今の?

 瞬間移動!?

 その剣、どっから出した!?


 わけがわからん。

 魔王の能力の底が全然見えない。


 魔王が突っ込んできながら再び剣を振り上げる。


 怪人ソードの耐久力が未知数なので剣で受けるのはやめて、オレも回避しながら横薙ぎに並行二刀流で胴を打つ。


 ザシャァァァァァッ!


 手応えあり。


「やったか?」


『ダメージは入っているはずです』


 今度こそ、緑色の血が腹の切り口から流れ出るのを確認。


 ん!? 緑色!!??


 すぐに右手の回復で傷を塞ぐ魔王。


 やっぱアレがある限り、無理ゲーじゃね?


 その時、魔王の闇ルラが増幅された。


『何か来ます』


 何かじゃわからん!

 上空へ退避!


「……ダークチェイン」


 下方で微かに魔王の声が聞こえた気がした。


 垂直急上昇で高高度まで一気に上がる。

 さすがにここまでは――なにっ!?


 突然足首に枷が嵌められたと思ったらそのまま地上へどんどん引っ張られる。

 枷から魔王の手元まで鎖みたいなのが繋がってる。


「おい! なんだこれ!?」


『鎖のようなもので相手を拘束する魔法のようです』


 相変わらず曖昧な説明だが仕方がない。


 引きずり降ろされる途中に何度も怪人ソードで鎖を斬ろうとしたらビクともしねぇ。

 魔法の鎖は物理じゃ斬れねーのか?


『おそらくは』


 なんだそれ無敵かよ。

 魔法が使えねー怪人じゃ最初からハンデありすぎだったのだ。


 そして嫌な予感。


『魔王の左手にルラが集中しています』


 確かに墨汁のようなルラが球状に集まってウニのように見える。


 うん、あれは過去一のイヤな予感。

 虫の知らせキター!


『仕方がありません。緊急呼び出しエマージェンシーコール!』


 ん? なに?


Henshin:available


 なんだこれ?


『マニュアル未読の御主人様(マスター)に一度だけ説明します』


 その煽りヤメレ。


 魔王から何か飛んできた。

 漆黒のサッカーボールぐらいの球が――速い!

 空中で体を捻って間一髪回避成功。

 

『超人形態のロックを解除しました。変身してください』


 超人……なんて?

 よくわからんのだが……。


 地上では魔王が第二波を準備していた。


『変身です。ヘ・ン・シ・ン!』


 トランスフォームじゃなくて?

 ええい、ままよ!


「へんしんッ!」


 ポーズも何も考えてないのに、魔王の鎖に引きずり降ろされながらのカッコ悪い状況で、オレは初めての変身を叫んだ。


 おおお! すげぇ!


 オレの全身の周りにキラキラした粒子が集まってきたかと思うと、一瞬にそれらが吸い付くように体に吸い込まれ眩い閃光と共に変身プロセスが終了した。


 時間にして約0.01秒。


 複眼モードだったからこそしっかり確認できてラッキー。


 おっと!

 またしても飛んできた黒ボールをかわす。

 今度は楽勝だった。


 でもオレの体、なんか怪人っぽさが消えてヒーローっぽくなってね?

 顔は自分では見えんが、体はかっこいい。

 色自体は怪人形態と変わらんが、金のラインがアクセントになってる。


 なんて感心してる場合じゃなかった。

 相変わらずオレは魔王に鎖で引き寄せられている最中だった。

 そして魔王はかなり近づいてきている。


 だが、オレは気付いた。

 世界が今までよりもっとスローになってることに……。


御主人様(マスター)、手短に伝えます。超人形態では怪人形態での全ステータスが5倍になります。そしてタイムリミットは3分です。三分経過すると自動的に怪人形態に戻ります。しかもエネルギー残量がかなり少ない状態になっているので注意してください』


 全然手短じゃねーし、なげーよ。

 そしてオズの声まで若干遅く聞こえる超人形態マジすげーな。


 3分か……よし、やったろーじゃん!


 ふと気付いたら両手に持っていたはずの怪人ソードがなくなっている!

 超人形態では使えないのか?

 でもどこいった?

 ええい、今はとりあえずどうでもいい!!


 変身ヒーローならば、この体勢でやるべき事はただひとつ!

 魔王はもうすぐ目の前だ。


「カイジーン、キィィィィッィック!!!」


 自ら加速して勢いをつけると、そのまま空中で一回転してからの、魔王の胸にぶち込む!


 ドンッ!!!


 結構な衝撃が足にきて、物凄い音と共に魔王がすっ飛んでいった。

 そのままぶつかる障害物もなかったので、ごろんごろん転がって、しかし途中で受け身をとって起き上がる。


「マジか……」


 あの状態から立ちやがった。

 脱皮後且つ新形態の全力キックだぞ。


「ぐふっ……」


 だが、魔王の体の前一面が緑色に濡れて光っている。

 同じ色が口元からも大量に溢れ出ている。


 よし!

 効いてる!

 過去イチのダメージが入ったはず。


 魔王はややフラつきながらも右手を胸に当てた。


 そうはさせん!と加速ダッシュ飛行。


御主人様(マスター)怪人波(カイジンハ)です!』


 オズの指示と共に、モニターの左側に怪人波発動手順が表示された。


 おいおい、これってまんまアレじゃねーか。

 いいのか、ってか誰の趣味だよw


 魔王の目の前で急停止すると、その反動を利用して真下から掌底を打ち上げる。


「りゃあッ!」


 バゴォッ!


 魔王の顎にヒット。

 仰け反りながら上空へゆっくりと浮かんでいく魔王。


 緑の血が飛び散ってシャワー。


 そしてオレは、両手を腰に溜めてエネルギーを充填開始。


「カー」

『25%』


「イー」

『50%』


「ジー」

『75%』


「ンー」

『100%!』


『ハァァァァァァッ!!!』


 両手の掌底を合わせて勢いよく前に突き出すと、両手からエネルギーの束を発射。


 ゴォォォォォォッ!


 轟音と共に一直線に伸びて魔王に直撃。


 バゴォォォォォッォン!!!


 大爆発と共に白煙が充満する。


 プシューッ。


 オレの背中の両側の気孔から蒸気のようなものが吹き出した。

 なんか気持ちいいぞ。

 勝ったな。


『いえ、まだです』


 なに!?


 白煙の中、ドスンと音がして何かが落ちて来た。


 赤外線モードON。


 魔王だ。

 だが、形状がおかしい。


「グァハハハハハ! リュウよ、素晴らしいぞ!」


 めちゃくちゃ元気そうな声じゃねーか。

 そしてちょっと笑い方が下品になってるぞ。


『向こうも変身型のようです。これはやはり……』


 変身!?

 それで形が変わってるのか。


 あの、つかぬ事お伺いしますが、その変身というのいったい何段階までありますか?


 オレの頭の中にはもう最悪のアレしか浮かんでない。


02:28:35


 カウントダウンがどんどん進んでいく。

 まだ時間はある!


 ダッシュ飛行。


 ガシッ!


 変身した魔王とがっぷり手四つに組む。


「力比べといこうじゃねぇか」


「フフ、望むところだ」


 ニヤリと顔を歪めた魔王の声が一段低くなっているのに気付いた。


 近くでマジマジと見る魔王は、より野獣というか悪魔というかとにかくおそろしい形相の何かに変わっていた。

 体もそれまでよりひと回りデカくなり、肉襦袢(にくじゅばん)を何重にも着込んだようなバルクアップっぷりで見た目の圧力からして半端ない。


 握力も相当なものだ。

 それと対等に張り合えるオレも相当なものだ!


 ワクワクしていた。


 派手な技をぶっぱなして、力比べでもこうして拮抗できて。

 あれほど敵わない、圧倒的だと思っていた魔王と、だ。


 怪人415号改、万歳!!


「ぐぬぬぬぬぬ」


「むぅぅぅぅぅ」


 どちらも一歩も譲らない。


01:42:12


御主人様(マスター)、楽しんでいる場合ではありません』


 うるせー!

 もうちょっとだけ黙ってろ。


『では怪人拳を使ってください』


 モニターに起動プロセスが表示された。


 チクショウめ、名残り惜しいが仕方ない。


「怪人拳ッ!」


 宣言したと同時に体が熱くなった。

 このまま沸騰してしまうのではないかと思うほどに。


 そしてモニターに出力ゲージが表示された。

 真っ赤なゲージがどんどん伸びていく。

 左端の数値が200%になった時、魔王が膝を折った。


「グッ。なにをした、リュウよ」


「ちょっと本気出しちゃった、みたいな?」


「グァハハハ。やはり面白い……」


 そのまま魔王を押し込んで体勢を充分に崩したと見た瞬間――。


「おりゃああああああッ!」


 一本背負いで魔王を地面に背中から叩きつける。


 ドガァッ!!!!


 超人形態怪人拳のパワーで最大出力の背負い投げだ。

 恐ろしいまでの回転力も加わって、全身の骨という骨が砕けたに違いない。


 その手応えは確かにあった。


 今までの激闘が嘘のように、完全な静寂――。


 ピクリと魔王の体が動いた。


「もうやめとけ。勝負あり、だ」


 別に魔王を殺したくて戦ったわけじゃねーしな。


 オレが魔王の仲間じゃないってギャラリーが理解してくれればそれでいい。

 そして何よりオレが新しいこのオレの戦いで満足することが大事なんだ。


「何をしているのです! 早くトドメを!!」


 あちゃー。

 いいところで水差すなよ。

 無粋にもほどがあるぜ。


 王女とエレノア嬢の方を向いて、仁王立ちになる。


 そのまま無言の圧をかけ続けた(つもり)。


 二人はこちらを見て立ち竦んでいた。


 背後で魔王が起き上がる気配がした。

 回復が終わったようだ。


「先に帰っててくれ。後でオレも行く」


 魔王にだけ聞こえることを祈りながら小声で伝える。


「フフ、わかった。楽しかったぞリュウよ」


 そのまま(ゲート)を開いて魔王は立ち去った。

 まぁ見てはいないが、だいたいわかる。


『無事終わりましたね。おめでとうございます、御主人様(マスター)


 ああ、サンキュー。

 なかなかの性能だったろ、オレ。


『はい。もう大幹部どころでは済まなくなりそうですね。首領(ドン)にも勝てそうです』


 じゃあ、戻ったら組織を乗っとるか。

 あ、でも博士に報告が先だな。


御主人様(マスター)、その前にあちらを何とかしましょう』


 ああ、そうだった。

 お嬢様方をあまり待たせちゃいけねーわな。


 オレは変身を解き、更に人間形態へ変身(トランスフォーム)した。


「リュウさん!」


「やはりあなたでしたか」


 驚きと安堵の表情を同時に浮かべている二人へ、オレはゆっくり近づいて行った。

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