ぶん殴った(過去形)
砕いた!!
俺、エドマンド・エルドラドは、エルドラド流剣術を用いてテミス・ヴィナスの刃潰し剣を砕いた。
テミスは驚愕の表情を浮かべている。
この表情を見るに、やはり剣術をろくに学んでないな?
先程から、ただ剣を振るうだけだったことから予想していたが、当たりらしい。
よしこのまま、胴か腕にもう一閃すれば――
――その瞬間、テミスの肩がブレた。
下腹部辺りに激痛を感じた次の瞬間には、闘技場の壁に叩きつけられ目の前が真っ暗になった。
――――――――
あーあ。やっちゃった。
砕いたときの満面の笑み見たら思わず・・・・やっちゃった。
まぁ、ルールには『素手禁止』とは書かれてなかったから・・・いいか。
でもこれどうなるんだろう?
私は武器折られたし、あっちは壁まで吹っ飛んじゃったし・・・
マジでどうなる?
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
観客と審判は無言。
というか雰囲気もなんか・・・こう・・・重い。
・・・・仕方ない。
「ま、参りましたぁ・・・・」
「・・・・へ?」
私の発言を聞いて、審判が呆けた顔を私に向けた。
私は審判の判断を待つことなく、その場を後にした。
――――――――
「・・・ん?・・・・う~~~~~ん」
なんだ??下腹部辺りが妙に痛・・・・痛いどころか激痛!!
「げぇあぁぁ!!」
「あ、起きた」
「?・・・・!!テミス・ヴィナスゥウウウ!?」
「・・・何でフルネーム?」
俺の叫びを聞き、テミスは両手で耳をふさぎながら、めんどくささを隠しもしない顔で俺を見た。
「まぁ、良かったのかな?」
「何がぁ!?」
「良かったね。その程度で済んで・・・・」
コイツ今なんて言った?
これで済んでよかったね?・・・・てことは今よりもひどい状態になっていた可能性もあるということか!?
「起きたみたいだし、私は帰るね」
『やるべきことをやり遂げた』とでもいうべき顔をしながら部屋から出ていこうとするテミスを俺は呼び止める。
「・・・・一つ、聞きたい」
「・・・何?」
聞きたいことは一つだけ・・・・一つだけ・・・・のはず
「何をした?」
「ぶん殴った」
即答された。
まるで、『聞くほどのこと?』とでもいうような速さだ。
だがなぜだろう、それよりも胸に引っかかることがあるような・・・
「それじゃあ、またね」
テミスは自問自答している俺を置いて、そのまま部屋から立ち去った。
・・・・ぶん殴った・・・・・ぶん、殴った・・・・ぶんなぐった
・・・・ぶん殴った!?
「えぇぇぇぇえええ!?」
その後、俺がありえない過去と『エルドラド分校武闘大会』の中断及び延期を知るのはもう少し時間がかかった。




