一閃
私はあんまり人を殴るのは好きじゃない。
多分、意識の問題だと思う。
子供たちが、ヒーローが怪人や怪獣を殴っているのはOKで、ヒーローが人を殴るのがNGだと思うような感じを究極形態にした感じ?
まぁ、例外もあるわけで・・・
――「怪人か怪獣に殴られて肉塊になるなら、私がぶん殴るか蹴っ飛ばすかして軽傷から中程度の傷くらいにした方が良いよね」とか、
――「怪人か怪獣に操られていて、他の人々に何かしようとしているときはぶん殴るかして意識途切れさせた方が良いよね」とか、
――「恐怖が限界まで達した人が、他の人を危険にさらそうとしているときは、ぶん殴って元通りにするか気絶させた方が良いよね」とか、
まぁ、そんなところかな?
・・・結局のところ、「人を守る/人を救う」ために私は拳を振るいたいし、そうすべきだと思っているし、それ以外は気色悪いから嫌だ。
というわけで、私は「オリンピックモドキ武闘大会」の『学生参加枠』をかけた「エルドラド分校武闘大会」に出席するつもりはなかった。
・・・するつもりはなかったのに・・・あのクソ女子生徒せいで、出席せざるを得なかった。
しかも、一回戦があの王子。
何?神様は私のことが嫌いなの?
・・・まぁ、いいや。
とりあえず、あの王子をぶん殴る!!
―――――
エルドラド分校武闘大会当日。
天気は雲一つない快晴。
会場は、分校に隣接した簡易闘技場。
観客席は満員。
熱狂は止むことを知らず、声は絶えることを知らない。
・・・・闘技場の裏では賭博場が開かれているという噂があるが真相は不明。
既に数戦ほど終わり、一回戦も中盤に差し掛かってきた。
次の対戦カードは「エドマンド・エルドラドVSテミス・ヴィナス」
――――
私は今、扱いがつかめない刃潰し剣をもって、闘技場の中央に立っている。
目の前には対戦相手がすっごい野望を抱いた敵役みたいな顔してる。
あなた、味方サイドより、敵サイドの方が向いてるんじゃない?
審判役の先生は、私と王子を連続目視で確認した後、ゴングを鳴らした。
始まっちゃったよ。
開始時間から一秒。
王子が肉迫。
そのまま横に一閃。
――でも、遅い。
私は剣閃上に私の刃潰し剣を置く。
置くだけでいい。
剣がかち合う。
王子の刃潰し剣は余力をもって、私の刃潰し剣ごと押し込み、剣は私の胴に当たる。
・・・そこまで痛くない。
でもこのままいったら転んじゃう。
だから、かかった威力を分散させるために、靴がはげることを気にすることなく横にスライディング。
やっぱり剣は苦手。
技術がいる。
それに重い。
王子はスマイルを浮かべながら追撃。
やることは変わらない。
おっそい剣閃の軌道上に刃潰し剣を置くだけ。
後は何もしない。
王子の表情がスマイルからニヤケ顔に変わった。
・・・ぶった斬りたくなってきた!!
私は、思いっきり剣を振るう。
やっぱり重い!!
しかも、剣閃が雑!!
三歳児がバット持って振り回してるのと何一つ変わらない!!
でも、速い。無駄に早い。
王子は一瞬驚愕の顔を張り付けたが、私の剣閃を見てとるに足らないとでも思ったのか、微笑を張り付けたまま、私の剣閃に付き合う。
その、「しょうがないなぁ、付き合ってやるか」みてぇな顔やめろ!!
うっざい!!
王子の表情が変わった。
私はすぐさま剣を引き戻す。
何?何を狙っているの?
王子は再び構えた。
?????
さっきから止まない黄色い歓声が一層騒がしくなった。
―――来る!!
さっきより早い??
でも、まだ遅い。
さっき同様、剣閃の軌道上に刃潰し剣を置く――
――王子の刃潰し剣は私の刃潰し剣を砕いた。




