10、猫達を紹介します
橘 信司は猫たちの紹介文を書いていた。
それは、お客様から、どの猫がどの名前かわかりにくいという意見が有ったからだった。
「さてと、まとまったな」
信司は猫たちの似顔絵と、一言紹介を書いた。
にゃー様は、人なつこい、皆のお母さん。
にゃーきち様は、やんちゃ。
にゃんた様は、まったりしている。
にゃんじろう様は、いたずらっ子。
にゃんにゃん様は、好奇心旺盛。
「よし、出来たぞ」
信司は書き上がった猫たちの紹介をメニューに挟んだ。
お客さんが来た。
猫たちの紹介を見ている。
信司は満足だった。
「すみません、注文良いですか?」
「はい」
お客さんは一番人気のパンケーキと紅茶のセットを頼んだ。
「猫様の似顔絵は、どちらにしますか?」
信司は猫の紹介ページを開いて、お客さんに聞いた。
「じゃあ、にゃんにゃんで」
「かしこまりました」
信司は台所に入るとパンケーキを焼き、そこににゃんにゃんの似顔絵を描いた。
「お待たせ致しました」
「あ、ほんとにヘタウマで可愛い」
信司は褒められた気はしなかったが、愛想笑いをした。
「オッス!」
ラインとレインが来た。
「まいどありがとうございます」
信司は頭を下げた。
「いつもの奴を二つ頼む」
「はい、パンケーキと紅茶のセットですね」
「あ、やっぱりドーナツも二つ追加で」
「ありがとうございます」
ラインとレインはすっかり常連になっていた。
「おお、似顔絵と紹介一覧がある!」
「はい」
信司は台所から、レインに返事をした。
「ヘタウマだけど、似てるな」
ラインが言った。
「愛情だけはこもっていますので」
信司はそう言いながらドーナツをあげだした。
部屋の中に甘くて香ばしい匂いが立ちこめる。
「あのさ、猫に餌やることは出来ないのか?」
ラインが信司に聞いた。
信司は答えた。
「猫様の体調に関わることですので、常連のお客様でもお断り申し上げます」
「わかったよ、怒るなって」
ラインとレインは残念そうに、ため息をついた。
猫たちの紹介が書かれたおかげか、猫たちを名前で呼ぶお客さんが多かった。
そうはいっても、猫たちはきまぐれで、好きな時間を過ごしていた。
信司はくつろいでいる猫たちを満足げに見ていた。
お客さんが10名になったところで、信司は今日も店を閉めた。
猫たちが、扉から外に出る。
そして信司のトレーニングが始まる。
いつもの光景だった。
しかし、今日はそれを観察している怪しい人物がいた。




