第8話 絶影
「よし、ここらで休憩にするか」
「そうだね、シェイド、アレックス君、お茶飲む?」
「お、サンキューミネア」
草原の中の小川のほとり。アレス達は小休憩を挟んでいた。
「ふっ! ふっ!」
「何やってんだ? アレックス、左手なんか振って」
「あの時のあれ! 使えるようになったら俺も戦力になるでしょ」
「ダメだろ、アレックス。アレス、ずっとこんな感じだぜ?」
「はぁ、突然手に入った力なんざたかが知れてるだろ? どれだけ力があろうが、使いこなせないと意味ないからな。それにアレックス、その技の名前も知らないだろ? 危険な副作用とかあったらどうするんだよ」
「平気だよ。副作用ならもう左半身ヴァンパイアだし、それと比べたら小さいもんだよ」
「なんだよアレックス、技を覚えたいのか? だったらこの消影のシェイド様が教えてやるぜ!」
「シェイド、あれを教えるのか?」
「あぁ、俺以外に使えるやつは今のところいないからな、継承者位いてもいいかなって」
「でもアレックスにできるか? 俺もミネアもできなかっんだぞ?」
「いやいや、重いアレスとミネアじゃあできないのは当然だろ? なに、アレックスならできるって」
「シェイド、覚悟しといてね」
「あ、ミネア、すいません」
◇
「それじゃあアレックス、今から教える技を今から使うから、目を放すなよ。 まぁ、初見じゃ無理だがな」
シェイドは草原中のとりわけ草の生い茂る場所にアレックスを連れていった。シェイドは腰少し落とし、魔力を込める。
「"絶影"」
シェイドは、目にも止まらぬ高速速さで遥か遠くに移動した。
「俺の開発した高速移動技、"絶影"。影が追い付かない程の速さで走ることができるのさ。 この技は今や俺の代名詞となっている」
「へー」
「アレックス、おま、興味ないのかよ! お前のあの技と比べたら地味だがな、これは俺と師匠が10年かけて作ったんだぞ!」
「へー凄いねー」
「素っ気ないセリフだな! まぁいい、今からこれを教える。 まずは腰を少し落とせ」
「次に足の指に力を込める。この時かかとは地面に付けておけ」
「そして魔力を込め、土踏まずから一気に魔力を放出する。やってみろ」
シェイドの言う通り、足の指先に力を込め、土踏まずに魔力を集中させると、身体からの重みが軽減される。魔力を放出したら、身体が少しだけ宙に浮いた。
「いいぞアレックス。次は、魔力を放出すると同時に前に進むんだ。 そうすると格段に速く動けるぞ」
「わかった」
◇
「"絶影"」
練習を始めてから一時間、それなりに形になってきた。
「よしアレックス、今日はこれくらいにしよう」
「おうアレックス、"絶影"は使えるようになったか? 」
「うん、流石にシェイドみたいに速くはないけど、アレスとかよりは上手だってさ」
「そうか、それじゃあ荷物持ってくれ。出発だ!」
昼過ぎ、4人の男女は川原を後にし、ゆっくりと一列に歩きだした。