第10話 勝負
「えっとな、南辺り山近辺の村から最近大きな依頼が多いらしいぜ」
「北西部の沿岸に、大王ダコが出たとか」
今日もアレスと次の目的地のための聞き込み。ここについて既に3日も経ったが、行き先は決まらない。
「どうしたんだ? アレス、まだここにいたのか」
「お前もまたここに来たんだな。仕事しろよ」
「してるからな! アレス、ずっといるなら今日こそ飲むぞ!」
「誰が行くかよ」
「アレスは塩だねー。アレックス君こんにちは、今日も聞き込み?」
「はい、相変わらず行き先が決まらないので」
「アレス、もう何日経った? そろそろ行かないとお金もたないんじゃないの? それとも何、うちのシヴァと話でもしたかったの?」
「いやちげー! てかお前らもずっとここ来てるの見てるが、離れる気はないのかよ」
「今のところはな。シヴァとイリンもこの街気に入っているし、トリスは行きたいとこあるそうだけどな」
「まぁね。コステロはここどうなの?」
「俺はお前らと同意見かな。金ある内はここにいるのが一番いいからさ、遊びもいろいろあるし」
「コステロは遊んでるよな。シヴァはそろそろニートやめた方がいいんじゃねぇの?」
「俺はれっきとした冒険者だ!」
「はぁー、仲いいねあんたらは。アレックス君、実はこの二人同郷の親友同士なんだよ」
「へぇ、そうなんですか」
「北西部の村で一緒に生まれ育って、一緒に遠く離れた大国に行って騎士を目指してたんだよ。見えないでしょー」
確かにアレスは誘いを全て断っているし、シヴァは一途にアレスに話しかける。親友なら別にそんなことにはならないだろう。それともアレスがツンデレしているかもだが
「あーもう、アレスそんなこと言うなら依頼だ、俺達のメンバー合同で受けるんだよ! そうしたら俺が働き者ってことが証明できるだろ?」
「上等だ! そういえばお前が戦うところを何年も見ていないからな。 『覇槍』の二つ名が何でこんなヤツに付いたのかを見せてもらおうじゃねぇか!」
「あーあ、決まっちゃった。しょうがないかぁ」
「ごめんね、アレックス君。ミネアちゃん達によろしく言っておいて」
◇
「で、向こうと俺達合同でやることになったと。内容はどうなるんだよ」
「あぁ、『ガイ・ワーム』に決まった」
「え! アレス何してんの? 私達じゃあ不利じゃん!」
「何言ってるんだ、俺がいるだろ?」
「アレスがそもそも相性悪いだろうが。ミネアの魔法が通ればいいが」
「えー! 儀式じゃないと魔力足りないよ! 先に見つけても多分間に合わないし!」
◇
結局向こうに言っても対象の変更はできなかった。というか、アレスがさせなかった。
アレス曰く「有利不利関係なく、俺はできる!」だそうだ。
『ガイ・ワーム』について俺は何も知らないが、今回は面倒なことになりそう。
次の日の早朝、城壁の門の前で、俺達はシヴァ一行を待っていた。因みに集合時間は一時間後である
「おいアレス、何でこんな早いんだよ。 てか一時間早くとか気合い入れすぎだろうが」
「アレス、私まだ眠いんだけど」
この待ち時間何をして潰そうか考えていたのに、まさかシヴァ達が来るとは全く思わなかったのは当然だろう。
「お、アレス早いな。そんなに楽しみだったのか?」
「馬鹿は休み休み言え。そんなわけないだろうが」
「あれ? 俺達が反対したのに押しきったのはアレスじゃん。」
「ねぇ、眠いし私達じゃあ無理だから、シヴァ達に手柄譲って帰ろうよ、アレックス君もそう思うよね」
「え、そんなこと言われても」
「ミネア、男には絶対に逃げてはならない勝負があるんだよ!」
「私は帰っていいよね?」
「だめだ」
「ふふ、ミネアちゃんもアレスも朝からおしゃべりタイムかー、いいなー。 シヴァ、トリス、コステロ、今日は張り切っていこ!」
「よし! アレックス、シェイド、ミネア、絶対勝つぞ!」
そんな訳で、俺達は無理矢理冒険に行かされることとなる。




