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俺が魔法少女ルナだ!  作者: みずきなな
第八話 魔界村っていうゲームが昔あったけど、今は大魔界都市って名前になるのか?
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バトルⅧ-Ⅵ

 い、いや! やっぱりマズイ! キスはまず…

 フィレオはルナの頬に軽くキスをした。


「へっ?」


 予想外の場所へのキスに動揺するルナ。そしてフィレオは体を離した。

 ルナはホッとしたような、残念なような、妙な感覚に襲われる。


 おいまて、ホッとするのはいいとして、この残念な気持ちは何なんだ? 全然残念じゃないだろ? むしろここは無事でよかったと喜ぶべき所だろう?


【ルナ、キスは結婚するまでお預けするギョ】


 そ、そうだよな? キスは結婚するまでお預…って待てい! 違うだろ? そうじゃないって言ってやる!


「あ、うんそうだね」


 おおぉぉぉおおぉぉぉ! 俺はわぁぁぁぁあぁ! 何で同意してんだよ!

 ルナはガンガンと目の前のテーブルに額を打ち付ける。


【ル、ルナ? どうしたんだギョ?】

「ぜ、前言撤回だからな!」


 額を真っ赤にして、涙目で怒鳴るルナ。


【えっ? じゃ、じゃあ…いまずぐキスをするギョ?】

「そうじゃない! そうじゃないから! 全然違うから! だから何度言えばいい? 俺は男だ! 男! わかるか?」

【解りたくないけど…わかるギョ】

「という事だから、結婚するまでお預けとか無いの! フィレオだって男の俺とじゃ結婚出来ないだろ?」

【こう言ったらルナに申し訳ないんだけど…もしも、ルナが女の子のままだったら…僕と結婚してくれるかな?】


 何で軽くプロポーズしてんだよ! っていう事は何だ? 俺は一生女で過ごす前提なのか?

 でも…それは考えられない。だって俺は男に絶対に戻るんだからな。


 真っ赤なおでこを右手でさすりながら睨みをきかせるルナ。


「どうやっても無理だ。俺は例え女のままだったとしてもフィレオと結婚しない」

【…僕は嫌い?】

「嫌いなんて言ってないだろ?」

【じゃあ好き?】

「ああ…お前は好きだけど………あっ…いや! それは人間としてだ! 人間として!」

【僕は魔族だギョ? それも魚人だギョ?】

「そ、そこを今つっこむな! 漫才か? 俺達は漫才コンビか? ともあれ、俺はお前とはつきあえないし、結婚も出来ない」


 フィレオを唇を噛んで深刻な表情になった。

 でも、ここでちゃんとしておかないと、俺が危ない道へと進んで…じゃなくって、BL街道まっしぐら~な感じになって…じゃなくって! フィレオも俺もちゃんとした人生を送れないじゃないか! フィレオの場合は魔人生なのか?


【……理解はしたくない。でも君がそう言うのなら…僕はここでは君の意見を心に留めておくギョ】

「あ、ああ…ありがとう」

【でも、僕は決して諦めない。君がどう言おうとも僕はこれが真実の愛だと信じて君を愛し続けるとここで誓うよ】


 口が開いたまま閉まらなくなったルナ。

 いやいや、何だこれ? 誓ったら駄目でしょ?


「フィレオ! ちょ、ちょっと言っておく事がある!」

【大丈夫だギョ。僕はルナを襲ったりしない。僕はルナの許しがあるまで…本当に僕を好きになってくれるまで手は出さないギョ】

「くっ…うぅ…そ、そうか…」


 何でこうなった? おかしいだろ? 湖畔でも駄目だと打ち明けて、今回も正直な気持ちをぶつけたのに結果的に何も変わらないだと?

 フィレオはそんなにまで俺が好きなのか? そんなに愛してるのか?

 くぅぅ…もうこれを解決するには一つしかない。それは…


 《俺が男に戻る事だ!》


 ☆★☆★☆★☆★


 大浴場。

 俺は数日ほど風呂に入ってない。

 汚いと思うだろ? 正解だ。 ぶっちゃけ汚い。だからこそ風呂には入っておきたい所だ。

 しかし、男湯に行くか、女湯か迷う…

 容姿からすると、どう考えても女湯なんだろうが、ソルがいたら気まずい。攻撃されるかもしれない。

 だけど男湯なんかに行ったらもっとおかしい。全裸の女が堂々と男湯に入るとか、まずいを越えてるだろ。

 という事は…やっぱり…


 ルナは意を決して女湯に入った。

 更衣室には人はまったくおらず、ルナは胸をなで下ろす。


 よかった。誰もいない。


 安心して風呂場へと続く扉を開ける。

 目の前に広がったのはどう見ても和風の露天風呂だ。岩石がうまく組み込まれており、周囲には湯に強い木々が植えられている。蝋燭でライトアップされた湯船が情緒が漂っており、すこぶる良い感じだ。

 広さもかなり広く、ゆうに30畳以上はある。奥なんか湯気で見えない。


 すげぇ…日本にこの露天風呂があればはやるんじゃないのか?

 ルナは軽く体を流すと、白濁した湯に体を浸した。


「あーギモジイー!」


 体を中央にあった岩に預けると、両手を挙げて背筋を伸ばして大きな声を出す。


【ル、ルナ様?】


 ハッとするルナ。聞こえたのは空耳か? な訳がない。どう考えてもソルの声だ。

 な、なんでソルが湯船に!?


 慌てて湯から出ようとすると【待ってください。こちらへおいで下さい】と声が聞こえた。

 ゆっくりと振り返ると、薄暗い露天風呂の奥には薄い緑色の肌のソルの上半身が見える。

 しかし、残念かな、胸は湯に浸かっており見えない。


【私の横へどうぞ】


 ルナはなるべくソルを見ないようにしてソルの横まで移動した。


「ごめん…お前が入ってるなんて思ってなかった」

【いえ、これは仕方ありません。宿泊客は私達だけではないのですから…】


 ニコリと微笑むソル。

 しかし…ソルはマジで美人だな。髪を纏めて上げているのは初めてみたが、うなじがすこぶるそそる…

 こいつの浴衣姿…ちょっと楽しみだな。


【良いお湯ですね…】

「ああ…」


 見れば、お湯に浸かって血行が良くなたのか、ソルの薄い緑の肌がちょっと赤くなってる。

 しかし…何でソルの肌は緑なんだろう? でも血は赤いっぽいよな? 頬が桜色に染まるって事は血が赤い証拠だ。

 気にしちゃ駄目なんだろうけどキニナルな。テラはバンパイアだったんだけど、どうみてもソルはそうは見えないし…だいたい何で城から飛び出したんだ?


【ルナ様…私、ここではっきりと伝えておきたい事があります】


 真面目な表情になったソル。


「何だよ?」

【私はルナ様を利用して城から脱出を計りました。申し訳ありません】


 ソルは頭を下げる。しかし、ルナには驚きはなかった。かなり予想どおりだったからだ。


「そんな事だろうと思ったよ」

【やはり…気が付いていらっしゃいましたか?】

「そりゃ、あんなに態度が変わるんだ。気が付くだろ?」

【そうですよね】

「あれだろ? 今だから聞けるけど、城から飛び出した時、マジで俺を殺そうとしてただろ?」


 二人は城を脱出する時に一緒に城から空中に飛び出したのだ。それを今になって思い出す。


【はい。脱出できたらルナ様はもう不要だと思ってました】

「だよな? 気まぐれか? 俺を助けたのは?」

【……そうですね…その時は気まぐれでした】

「よかったよ。ソルが気まぐれでも俺を助けてくれて。サンキュ」


 ソルは予想外のお礼に、驚いた表情でルナを見る。


【わ、私はルナ様を殺そうとしてたのですよ? ルナ様を好きというのもすべてが演技だったのですよ?】

「まぁ、細かい事はよくわかんねーけど、助けてくれた事は事実だ。俺はソルにもフィレオにも感謝している。テラにもちょっとだけ感謝してるかもな。俺を殺さなかったから」


 ソルは大きな溜息をついた。


【なんていうお調子者の魔法少女なのでしょうか…これでは大魔王様やお兄様達には勝てませんよ?】

「大魔王? それって強いのか?」

【強いも何も、魔法少女が1000人乗っても大丈夫です】


 …それってどこかの物置。


「いや、それはすごいけど…で、大魔王って事は?」

【私の父親です】

「ですよね~」


 その後、大魔王の強さや他の兄弟の話を聞いた。

 言える事は、はやくこの魔界から逃げるべきだという事。

 魔界だと魔族の強さは地上の倍になるらしい。いや、人間界だと半分になると言った方がいいのか?

 ともあれ、魔界での魔族は人間界よりも強いという事だ。

 でもよかった。明日になれば俺は人間界に戻れるんだからな。


【では…私は先にあがりますね】

「あっ、俺もあがる」


 ソルがキリっとルナを睨んだ。


【ルナ様、そこは流石に察してください】

「何を?」

【な、何をって? また私の…は、裸を見たいのですか?】

「あっ…」


 ソルはタオルのような白い布で体を隠しながら脱衣所へと戻って行った。

 しばらく経ってからソルが【もういいですよ】と言うので上がった。そして浴衣を着ると廊下に出た。


【ルナ様】


 そこで待っていたのは湯上がりソルだった。

 ソルは浴衣姿で、ちょっと広めの首もとからはっきりと谷間が見える。


「あ、えっと…なんだよ?」

【いえ…一言だけ伝えておこうかと…】


 ちょっと頬が桜色なのは湯上がりのせいか?


「何だよ?」


 ソルはそっとルナの耳もとに顔を寄せた。


【あのですね…ルナ様が男性の姿に戻ったら…私とデートして下さいますか? いえ…して下さい…】


 ルナの目が点になった。

 い、意味がわかんねぇ…


【という事で、おやすみなさい】

「あ、ああ…おやすみ」


 ソルは駆け足で部屋へ戻って行った。

 …マジでどういう意味だ?


 ☆★☆★☆★☆★


【ルナ、おやすみだギョ】

「ああ、おやすみ」


 ルナ達は眠りについた。

 ソルとの交渉の結果、布団は二組にされた。しかし、フィレオと同室なのは変わらない。


 深夜、右胸が誰かに掴まれているような感覚に襲われた。

 おなかの上には重みを感じる。まさか…フィレオが夜這い?


 ルナは目を開いた。するとキラリと光る何かが目に入る。


「ちょっ!」


 ルナは咄嗟に顔をずらした。同時その光る物が枕を貫通する。


【あら? よく避けたわね?】


 敵だと!?


 ルナは思いっきり布団の上の敵を蹴り上げた。

 バーンと布団越しに蹴り飛ばされる怪人。そしてすーっと背景に溶け込んだ。


 また透明になる敵なのか?


「フィレオ! 起きろ敵だ!」


 横の布団に寝ているであろうフィレオの方向を見る。その瞬間、ルナの血が気が引いた。


「フィ…フィレオ?」


 フィレオの胸には大きなナイフが刺さっていた。そしてそこからはドクドクと真っ赤な鮮血が流れる。口からも吐血し、目を開いたままぴくりとも動かなくなっていた。


「う、嘘だよな? フィレオ? おい、フィレオ?」


 返事が無い。ただの屍のようだ。

 なんてドラクエっぽい反応もない。マジで反応がない。


「冗談はよせ。お前がられる訳がないよな?」


 しかし、何の反応も無い。自然と涙が瞳から溢れるルナ。


「な、何で? 何でだよ! 何でこうなったんだよ!」


 風を切る音、そしてルナの頬には一筋の傷。ルナはまたしても敵の攻撃を躱した。


「殺す…絶対に殺す…」


 突如としてルナの眼球が赤く光を帯びる。それはとても人間とは思えない瞳の色。

 シュンっと何かが飛んでくる。それを素早くルナは躱す。


「どこだ…絶対に逃がさない。絶対に殺すからな…」


 ルナはゆっくりと右から左へと視線を動かした。すると、まるでレザーポインターの様に赤い光が発せられ、部屋の中を照らす。が、しかし…


「ごふっ」


 ズンっと背中に衝撃が体に走った。体の中を何かが通過した。

 口の中に血の味が広がる。息が詰まる。


「…!?」


 ルナが視線を下げると、右胸から短剣の先が出ていた。

 どうやら背中から刺された剣が貫通したみたいだ。しかし、痛みはまったくない。


「こ、こんな…所で…俺は…」


 白い浴衣がみるみる真紅に染まってゆく。肌を伝って血が畳へと到達する。

 そしてルナはがくりと片膝をついた。


【心臓を刺したわ。これで魔法少女ルナも終わりね】


 女の声が横から聞こえた。

 ルナは感覚を研ぎ澄ます。いや、自然と感覚が鋭くなる。

 生き物の温度を感じる。呼吸を感じる。

 ルナは瞬間移動で大鎌を手に取ると、敵を感じた場所を真横にぶった斬った。

 スパッと空中を鎌が横切る。瞬間、ぼとりと何かが落下する音。床には緑色の液体が広がってゆく。横には腕が転がっていた。

 もう一度鎌を振り下ろすルナ。

 《ザクリ》と何かに鎌が刺さった。


【げふっ…】


 スーッと床にフィレオとルナを刺したと思われる敵が現れる。


【な…何で心臓を…貫いたのに…うごけ…る…の…】


 まるで忍者のような格好の少女の体はすぐに星石へと変化した。死んだのだ。

 突如にルナの体から力が抜ける。

 ルナは左手で右胸から突き出た剣先を確認する。


「……お…れ…死ぬ…のかな…」


 そのまま崩れるように前のめりに倒れるルナ。視線の先には血まみれのフィレオ。

 目が霞む。腕が痺れる。体の自由が奪われてゆく…

 しかし、懸命にぐっと手を伸ばしてルナはフィレオの左手を掴む。


「フィレオ…俺…おまえの敵を…討った…ぞ…」


 そのままルナの目の前は真っ黒になった。


 続く

次回予告


胸を貫かれたルナ。意識が遠のき、そして闇に包まれていった。

ルナは死んだのか? しかし…


「…私は…テラ様の…下僕…だ」

【違う! ルナはルナだギョ!】


まるで操り人形の様なってしまったルナ。

ルナを正気に戻そうとするフィレオ。


【お、お前は…夜音よね?】

「本気で久々じゃねぇ? 元気にしちょった? で、ウチね? あんたにその名前で呼ばれると今だにむかつくんじゃけど?」


そして、テラと夜音よねが対峙する!


【ラッキー! ルナちゃんゲットだぜっ!】


ルナが拉致された!? そして…


『僕はルナの担当天使だ! ルナを取り戻しに来た!』


少年少女の登場!


次回、【俺が魔法少女ルナだ!】

『俺が暴走? いや、だって俺は一号機じゃないし…って夜音よねが強すぎるだろ!』

 11月4日 7時から順次配信開始! 全6部です。

 お楽しみに!


【私は…女性として…男性に抱かれて…死を…迎えたいのです…】

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