↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が魔法少女ルナだ!  作者: みずきなな
第五話 魔界の王子と王女が俺を巡って壮絶なバトル?って何だこれ!
25/95

バトルⅤ-Ⅴ

 目が眩むほどの高さ。

 見事に空中に放り出されたルナ。

 ルナの体は重力に逆らう事なく垂直落下を始める。


 ちょ、ちょっと待って!いくら俺の体が50倍の強度があってもこの高さじゃ死ぬんじゃないのか!?


 もう焦る!焦る!焦りまくりのルナ。

 それでも一応は冷静に対応しようと努力はする。


 え、えっと…高さはだいたい500メートルくらいあるだろ?それを50で割ると10だよな…10って事は10メートル?

 10メートルって普通に三階の屋上くらいあるだろ!?

 どう考えても人間が10メートルの高さから落ちて無事なわけがないだろうがぁぁあ!

 打ち所が悪かったら死ぬって!悪くなくっても死ぬかもしれないだろ!


 《キューン》と勢いよく落下するルナとソル。

 《ゴー》と凄まじい風の音が耳に入る。

 顔が風圧で歪む。そして、地面は確実に迫ってきている。


 ルナは焦った表情でソルを見た。すると、ソルはいたって冷静な表情で地面を見詰めているじゃないか。

 なんでそんなに冷静なんだよ!?


 勢い良く落下する中で冷静でいられるとか人間じゃないだろ!何て思うルナだが、ソルは人間じゃなかった。


 ま、待てよ?もしかしてソルがすごい能力を持っているとか?

 そうか!そうだよな?こいつは腐っても魔界の王女だぞ?

 あのテラのすごい魔法すら、なにゃらかんやらっていう能力で無効にしたんだ。

 そうだ!ソルは助かる術《すべ》を持っているんだ。そうじゃないとこんなに無謀な事なんてしない!ですよね?


「ソ…ソルさん?」


 ルナはソルをひきつった笑顔でソルに声をかける。すると、ソルはとても落ち着いた顔でルナを見返した。


「あのさ…これって…助かるんだよな?」


 ルナがそう言うと、ソルはニコリと微笑む。

 よかった…やっぱり何かすごい技をもってるんだな…ふぅ…

 なんて安心したルナだったが、その安心は簡単に崩壊する。


【ルナ様、もしも死んじゃったらごめんなさい。私、ルナ様を忘れません】


 そう言ってギュッと抱きしめてきたソル。ルナは焦る。抱きしめてきたからじゃない、台詞にだ。


 ま、待て!今の言葉に一言も助かるって意味の言葉が無かっただろ!っていうか、死亡フラグが立ってないか?


「ちょ、ちょっと待って!俺達って助からないのか!?」

【大丈夫です。私は助かります】

「えっ?えぇぇぇぇ!」


 ぎゅっと抱きつく腕に力を入れたソル。そして。完全に密着する二人。

 しかし、急降下は止まらない。


 ビラビラと勢いよく風に煽られ、ソルを包むシーツが捲りあげられている。ちらちらとあらゆる場所が何度も露わにされている。

 下を向けばいつでもおっぱいが見れる状態。しかし、そんな余裕はルナには無くなっていた。


 もうおっぱいとか裸とか、そんなんで喜んでいる場合じゃねぇし!

 っていうか…ソルだけ助かる=俺は死ぬ?嘘だよな?


「そ、それってどういう意味だよ!俺は死んでソルは助かるっていうのか?」

【はい】

「はいってどういう事!?ま、待て!助けてくれ!俺はまだ死にたくないんだよ!死にたくないぃぃ…」


 ルナはあまりの恐怖に涙をぼろぼろ流しながらソルを抱きしめ返した。


 二人は勢いよく崖下に落下してゆく。すさまじい風圧が痛い。


 近づく地面を見たルナの頭には、死ぬという二文字が浮かんだ。

 すると、ふっとルナの目の前が真っ白になる。

 それと同時に幼少の頃からの記憶が走馬灯のように脳内を駆け巡り始めた。

 幼稚園で始めて女の子を好きになったけど振られた。

 小学校でおもらしをして恥ずかしかった。

 中学校では絵のコンクールで金賞を取ったけど、下校中に雨に濡れてぐちゃぐちゃになった。

 高校受験で目指していた余裕で受かる予定の県立高校に名前を書き忘れて落ちた。

 大学はバイト三昧で勉強をしなかったら中退するハメに。

 そして…始めてできた彼女と初デートを少年少女に邪魔された!


 ああ、俺の人生って駄目すぎた…

 最後はもっと輝きたかったな。別にガイアに囁かれなくてもいいから…

 そうだ…俺って人間世界では行方不明のままで終わっちゃうのかな?

 まさか、魔界で少女のまま死んだとか誰も気が付かないよなぁ。

 じゃあ、葬式もしてもらえないのか?墓にも入れないのか?それはそれで最悪だな。

 まぁ…ここで死んだら骨は魔界にあるからなぁ…

【…様】


 ん?誰か呼んでる?


【ルナ様…ルナ様…】


 ソル?って、そうだ!


 ソルの言葉にハッと我に返るルナ。気が付くと自分でも驚く程に涙がボロボロと溢れている。

 そんなルナをソルは申し訳なさそうに見ていた。


【やっぱり死ぬのは嫌ですか?】

「嫌に決まってるだろ!俺はまだ死にたくない!まだ生きたいんだよ!」

【そうですか…】

「ソル、何でもするからさ…お願いだから助けて…助けてくれ!」


 ルナはソルをぎゅっと抱きしめた。

 人間は生死の境に追い込まれると本音が出る。いくら魔法少女で正義の味方になろうが、そんなの関係けねぇ!(古い)

 そう、これが今のルナの本音である。いや、普通に人間の本音である。


【そうですか…】


 落下している中でも冷静に考えこむソル。

 そして、地面はどんどん近寄ってくる。


「もう駄目だ!これは無理ゲーだ!死ぬ!死ぬ!」


 ルナは完全に諦めた。もうダメだと諦めた。


 魔法少女ルナ、魔界で転落死。

 なんて格好悪い最後なんだろう…

 ここで《ぷつっ》と気絶でも出来ればいいのにな…そうすれば死ぬ瞬間が解らないのに…ううう…


 涙目で真っ青なルナを見ていたソルは何か意を決したような表情になった。

 そして、抱きしめていたルナの体を無理矢理引き離し、両手でがっしりと持ち直す。


【解りました…私の我が侭に付き合わせた挙げ句、ここで殺してしまうのも後味が悪いですからね】

「えっ?我が侭?」

【普通の人間なら100%助かりませんが、ルナ様なら…多少は可能性はあるかもしれません】

「だ、だから何を?」

【体に力を込めて下さい!今から私が全力でルナ様を蹴りますから!】

「はっ?へっ?」

【早く!運がよければ生きられます。あとは貴方の運次第です。ではいきますよ!】


 ルナが意味が解らずに質問をしとうとした瞬間、ソルの両足の裏がルナの胸に触れた。ぐっと潰される?胸。


【一応はクッションになればと思ったのですが…やっぱり殆ど無いのですね…】

「む、胸が潰れる!」

【潰れる程ないじゃないですか】


 結構ひどいソル。しかし、ルナはそんなのはどうでも良かった。


「何だこの格好は?っていうか、地面が!地面がすぐそこに来てるからっ!」

【少しは落ち着いて下さい】

「助けてぇ!」

【…はいはい。さてっと…あとは貴方の運にかけましょう】


 そう言った瞬間、ソルが勢いよく両足でルナを蹴った!

 ルナはまるで発射台から発射されたミサイルのように斜め上に吹き飛ぶ!

 同時に激しい衝撃が体中に走った。そしてバキバキとあばら骨の折れる音が体に響く。

 すさまじい激痛がルナを襲う。

 こ、呼吸が出来ない…

 か…完全にアバラが逝ったっぽ…い…


 ルナの体は放物線を描きながらグングンとソルの体と離れてゆく。

 ソルはルナを蹴り出したせいもあり、その落下速度を速めて全裸のまま地上へ向かって落下してゆく。

 気が付くとソルが巻いていたシーツがルナの手に。

 実は、蹴り出した時に邪魔だからソルからはぎ取ったのだ。


「ソ…ル…」


 ソルはルナの見ている前で、まるで人形のように全裸のままで、バキバキと枝を折りながら森に落ちていった。


 助かるって…言ってけど…どう見ても…た、助かりそうに…見えない…

 で…も俺…も…駄目…かも…

 ルナは痛みで気を失いそうになりながらも、自分の向かう方向を確認する。

 すると、放物線を描く先には青くて広い湖が見える。


 そ、そうか…あそこに…向かって…蹴り出して…く、くれたのか…

 で、でも…こ、このままじゃ…駄目だ…受身を…取らないと…


 だが、あばら骨が折れた体は思うように動かない。

 ルナもソルと同じで、まるで人形のようにくるくると空中を回りながら飛んでゆく。シーツを片手に。

 そして…


 《ドボーン!》《バキッ!ボキッ!》


 湖から激しい水しぶきがあがると同時にルナの体は湖に着水した。それも左半身が水平にあたる。

 水面に対して腹打ちというのがあるが、この場合は横腹打ちといえばいいのか?

 着水した衝撃でさらに体にすさまじいダメージを受けたルナ。


「あ…足と…手も…折れ…た」


 魔界の王子とのバトルよりも酷いダメージを受けたルナ。最強の敵は自然だった。

 水面がこんなに硬いなんて…


「やば…い…泳がないと…溺れ…る…」


 しかし、ルナは実は泳げなかった。

 体脂肪率の低い体は、簡単に湖底に向けて沈んでゆく。

 さようならルナ…貴方の事は忘れない。


 そして、白いシーツだけが湖面に残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。