バトルⅤ-Ⅳ
魔法を直視してしまったルナの目の前は真っ白な世界になる。
目を開けているのに何も見えない。チカチカと目の前を星が飛んで見える。
くそっ!視界がもどんねぇ!
ルナは両目を閉じると両手で瞼の上からぐっと押さえた。
俺の回復力があればきっとすぐに戻るよな…
何度か瞼の上から押さえて、それからゆっくりと瞼を開く。
ぼやける視界。はっきりと周囲が見えない。でもさっきよりも見える。
「や、やった…見える」
ルナはぼやけた視界のまま、すぐにソルを探した。っと思ったら目の前にソルとテラはいた。
そりゃそうか…あの短時間にどっかに行くなんてないよな。っていうか!な、何だ?これはどうなってんだ!?
【お兄ちゃんのエッチ!スケベ!変態!】
ソルの怒鳴り声が部屋中に響。
そしてポカポカと聞こえるアニメっぽい叩く音。
ルナは自分の目を疑った。三メートルくらい前でテラが仰向けに倒れており、その上に馬乗りになっているソル。
ルナの視界からはソルの背中しか見えていないが、確かに、両手をグウにしてソルがテラをポカポカと叩いている。
「あ、あれ?確かソルはテラの魔法の直撃を受けたはずだよな?なんで平気なんだ?そして、なんでそんな状況になってんだ?」なんて声をかけるが、まったくもって反応してくれない。
【変態!変態!この変態!】っとソルはルナに背中を見せたままテラをポカポカと叩き続けている。
「おい!ソル!返事しろよ」
ルナはソルの背中に近寄った。するとある事に気が付いた。
薄い緑色の綺麗は肌が背中一面に広がっているが、障害物が無い。
そうです。肌しか見えないのです。
肌しか見えないってどういう事?何で肌しか見えないの?
いや、わかりますよ。本当はどういう事が解るけど…
【ルナ様!】
ルナが現状を理解した瞬間、ソルがくるりと体をルナの方へ向けた。
それと同時に胸部についているあんまんが約2個ほど《ぷるるん》っと揺れてその存在感をアピールする。もう、それはあんまんというよりは、ぷるるんゼリーっぽく。
「ソ、ソル!見えてる!見えてるって!」
はい。ソルは裸でした。
【えっ?】
ルナが目を瞑ってあわふたした姿を見て、ソルはゆっくりと視線を自分の胸部へと移す。
すると、ソルの顔がみるみる真っ赤になっていった。
【きゃぁぁぁぁ!】
ソルは自分の立派な胸部が露わになっている事実に気が付くと、叫びながら両手で自分の胸を隠した。
【まったく…だからやめろと言っているのに…お前は狂ったように私に圧し掛かって叩いてくるからだ】
テラは起き上がりながら、呆れた表情でそう言った。
どうやらテラはソルが裸だった事に気が付いていた様子だ。あたりまえか…
【やだっ!もうっ!】
ソルは真っ赤な顔で急いでベットまで走るとシーツを体に巻きつけた。
「いや…ぶっちゃけ眼福だったけどさ」
ルナはボソリとそう言うと、横目でチラリとソルを見る。
いやはや、ほんとにこいつは胸もでっかいし、スタイルいいし、可愛いし…
ポニーテールに括っていたリボンが魔法で砕けたのか、今は無くなっているんだが、ふわふわっと腰まで伸びる感じになった髪も、またこれがこれでいい感じでして…
まともな人間だったら間違いなく彼女にしてたなこれ。
ルナは自分の意見に納得したのか、小さく数回ほど頷いた。
【まったく…お前の魔法元素強制解除能力は相変わらずやっかいだな】
テラはそう言うと、燕尾服とマントについた汚れを叩きながら立ち上がる。
何だその魔法げんそう?強制きのう?難しい事いいやがって。
【私は別に好きでこんな能力を持ってるわけじゃないもん!】
ソルは頬を膨らませてそう言った。
シーツを巻きつけて頬を染めて、ぷんぷんするソル。口調がまた変わった。
いや、ソルって、結構大人なイメージがあったけど、こう見れば結構子供なんだなぁ。
こういうギャップがなんていうか…俺的に興奮するんだよな…
やばいな俺ってこいつが結構すきかも?(ルナはマニアックです)
【そうだな。お前にとって、いや、魔界のとって、その能力は決して喜ぶようなものではないからな】
【解ってるよ…だから私はもうここには居たくないの。人間の世界ならきっと魔法なんてないから、私は普通に生きてゆけると思うんだ…】
【何を気楽な事を?人間界は天界が今は支配しているのだぞ?】
その一言にルナが反応する。
えっ?人間界を天界が支配?って何だ?
ルナが驚いた表情でテラを見た。テラもその視線に気が付いたのかルナを見る。
【そうか、ルナはそんな事実は知らないのだな?】
テラは真面目な表情でルナに向かってそう言った。
いや、待て?テラは何を言ってるんだ?天界が人間界を支配してるだと?
じゃあ、何だよ?俺たち人間は天界に管理されてるっていうのか?
でも普段の生活レベルでそんな感じはないよな?
そうだ、怪人って何なんだ?怪人の存在に今まで俺は気が付いてなかったというか、テレビやラジオのニュースで怪人が現れました!なんて聞いた事もなかったじゃないか!
あれ?そうだよな?俺は公園で怪人と戦ったのに、周囲はキャー怪人だわー!なんて一人も騒いでなかったぞ?
考えてみればおかしいだろ?どうなってんだこれ?
でも、俺が魔法少女にされた時は彼女は叫んで逃げた。
もしかして、俺が女になったのは皆がわかってるけど、怪人の姿には気が付いてないのか?
あっ!そうだよ!あの本屋の魚頭の怪人!
あんなに正々堂々と立ち読みしてるのに、誰も怪人だって騒いでなかったよな。だけど俺は子供に変な人扱いされた…
そうか…怪人は人間に気がつかれていないのか!
でもどうやって!?
考えてみれば、俺は結局はなんなんだ?
いきなり魔法少女にされて…怪人と戦えって言われたけど?
あれ?あれれ?あれれれれ?ぜーんぜんわからん!
くそっ!早く人間界に戻って、あの男女から聞き出してやる!
っと…その前に…テラにもうちょっと話しを聞かせてもらわないとな。
「おい、テラ!」
その時だった!元ドアのあった場所から色々なメイドがなだれ込む!
メイドと言っても女性だけじゃない。男もメイド服。そして馬みたいな顔のやつもメイド服。犬までメイド服だ!
な、なんだこの気持ち悪い集団は!
せっかくの可愛いメイド服が台無しじゃないか!
ルナは本気で悔しがった。
【こ、ここは撤退です!】
ソルはそう言うと、焦った表情でルナに駆け寄った。
「えっ?」
【ルナ様!ここは脱出します!】
「ちょ、ちょっと待て!俺はまだテラに聞きたい事があるんだけど?」
【いいえ、待ちません!】
「なんだよケチ!って!な、なにすんだー」
ソルは有無を言わさすにルナをひょいと抱える。そして勢いをつけると、窓をぶちやぶって外へと飛び出した。
ガシャーンっと、まるでアクション映画のように飛び散るガラス。
そしてルナの視界には、まるで映画館のスクリーンに突然映し出されたかのように、魔界の景色がばっと一面に広がった。
それを見てルナは驚愕した。いや、魔界の情景を見てではない。今の状況を理解したからだ。
「ちょ、ちょっと待ってーーーー!高いって!何だこれー!わぁぁぁ?死ぬぅ!死ぬってこれ!」
そう、ルナの真下に広がる光景は、高さ500メートルはありそうな断崖絶壁だった。
続く




