VSリヴィ 教えて先生!
夕霧が起きたころには、ファーチャはもういなかった。
具現化するだけの力がもうないのだと頭の中に直接響いてきたので、早いところ力を与える方法を見つけ出さなければならない。
正直、ファーチャの二頭身の服装がとてもセクシーだったので早くちゃんとした頭身のファーチャを見たいというところもある。
朝食の時間になり、頭の中で騒ぐファーチャが煩いので夕霧はトーガとリヴィに尋ねた。
「召喚術の基本が載ってる本ってわかる?」
リヴィの食事をする手が止まる。
「……そう来るの」
実を言うと、リヴィは夕霧に魔法を教えてあげたかったのだ。随分と下心のある発言だったのだが、夕霧は華麗に避けたようだ。
しかし、召喚術も一応魔法の一種である。
「僕が教えるよ」
基本は全部一緒だからね、と言うリヴィ。
彼は小さな氷の龍しか召喚できないためあまり使用頻度は高くないが、一応召喚獣である。
「ん、ありがと。早速なんだけどさ、召喚獣に力を与えるってどうやるんだ?」
カチャカチャ、と食器が当たる音が響く・
「……朝食が終わってからにしようか」
ということで、朝食後、リヴィの授業が始まるのであった……
授業開始。
リヴィの教え方はスパルタだが、わかりやすく一通りの事を教えてもらい、三時間程経った頃にはファーチャを自由に召還できるようになっていた。
力を与え、元の姿に戻してやることもできた。それでもクリードの力の三割程度しか出せていないという。その上、幼い頃の夕霧に比べようものなら足元にも及ばないらしい。
「ふぅん、陣無しでここまで強い幻獣を呼び出すなんて、夕霧もやるじゃないか」
リヴィは君にそんな才能があったなんて、と少なからず驚いているようだった。
「クリードの娘なんだから、当然じゃない。それに私が認めた力の持ち主よ? あんたの召喚術なんて子供の遊びよ」
……リヴィとファーチャは少し……いやかなり、仲が悪い。そりが合わないようだ。
確かに二人ともタイプは違えど気が……というよりも、我が強いから、衝突するのも仕方ないのかもしれない。
結局ファーチャはリヴィの前には姿を現したくないと勝手に戻ってしまったし、無理に出しておく必要もないのでそのままにしておいた。
「君と違ってずいぶんと腹が立つ女だね」
召喚獣は契約者に似るんじゃないのかい、と口をとがらせるリヴィ。
「元々は父さんの召喚獣だからさ。多分ファーチャは私より父さん寄りの性格なんじゃないかな」
しかし、父親がああいう高飛車でプライド高そうな性格なのは嫌だな……と夕霧は苦笑い。
「君のお父さん、ねぇ……僕とは気が合いそうにないな」
クリードの悪口は許さないわよ、と騒いでいるファーチャを心の中でなだめ、話を変えて今日の食事はなんだろう、なんて他愛もない話をする夕霧。
「さて、基本的なことは教えたし、あとはあの女が教えてくれるんじゃないかな。僕はグリフォンの事を調べてくるよ」
夕霧の表情がころころ変わるのを見て、ファーチャと話しているのだろうと判断したリヴィは席を立ち、書庫へと消えて行った。