プロローグ
生まれて初めて、学校を休んだ。
目指すのは山の裾野に沿うように建てられた場所だ。
景色は良いのだけれど、その分駅から遠くて、歩いて行くには真冬のこの季節には結構きつい。
ショッピングモールから飲まず食わずで走ってきたことに加え、インドア派な僕には猶更だ。
しかし、そんな僕でも進んでさえいればたどり着くことができる。
買ってきた花を抱え直し、見上げると、そこには僕の目的の物と同じような形のものが大量に並んでいた。
一瞬、事前に友人に詳しい場所を聞いてこなかったことを後悔しかけるが、しかし、なんだろう。それでもなんとなく、僕はその場所を知らなくても、そこにたどり着ける気がした。
普段は全く信用しない自分の勘を信じ、すっかり着るサウナと化してしまったコートを脱ぎながら、息を切らせつつ石段を登る。
そして、やっぱり僕は、僕の勘が正しかったことを知った。
おそらく何百通りもあるうちの一つを、僕は一発で引き当てたのだ。
……だけどそのことに、嬉しさだったり楽しさだったり喜びだったりのような感情は一切湧いてこない。
代わりに湧き出てきたのは――
――涙だった。
平日の夜明けということもあり、僕意外は誰もいない。
風の音も無ければ、虫の鳴き声さえない。
そんな静寂の中で、鳴き声ならぬ僕の泣き声と、涙だけが石に落ちる音だけが小さく響いている。
その涙を拭うことすらせず、僕は——笑った。
どうせ拭っても拭っても、拭いきれることなどないと分かっているから。
たとえどれだけ不格好でも、どれだけ拙くても、今から言う台詞を伝えるには、この表情が一番だと思ったから。
僕は、目の前のそれに向けて、言った。
「ありがとう×××」
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