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REGALIA'S CODE  作者: 素白
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戦場と魔導、そしてブタ

激しい銃声と金属がぶつかり合う音が、灰色の空に響く。

焦げた死体はそこかしこに転がっており、火薬の匂いが鼻を突く。

俺達は、盾に身を潜め、ひっそりと息を殺している。

「くそッ!! あのクソ魔導師共、オレ達をなんだと思ってやがる!」

盾の裏側で、赤褐色の髪をなびかせたガレスが毒づく。

隣では銀髪のコルトが、怯えたように肩を震わせていた。

「しょうがないですよ、ガレスさん。うちの魔導師は全員僕達とは格が違う、エリートなんですから……」

「コルト!お前はこんな扱いでいいのか?!」

「いや……そうではないですが……」

コルトがうつむきながら呟く。

「ガレス、声が大きい。」

俺は、戦場で声を荒らげていたガレスを諌める。

「俺達に魔術の適正が足りなかったんだ、それぐらいわかるだろ。」

「クッソ……わかってるよ!」

ここはフェルミア帝国第103番区、聖アステリオ王国騎士団との東部戦線

俺達、歩兵第73小隊は、帝国軍第4魔導師団の盾として、この戦場に立っている。

【肉の壁】それが魔術適正の足りない俺達に与えられた使命だ。

「それにしても、やっぱり慣れませんね……戦場は。」

「そりゃあ、慣れる方がおかしいだろ。」

「一番恐ろしいのは慣れることだぞ?」

その時だった――

俺の脳裏に鋭い悪寒が走る。

「――ッ! 魔術反応だ。魔法使いの攻撃が来る!」

「王国のクソどもがァ!!」

「来るぞ!構えろ!」

俺達は隙間なく盾を構え、体勢を低くする。

上空に青白い魔法陣が展開され、数秒後、空を裂く凄まじい音とともに、光の雨が盾を叩く。

「ぐッ……!」

焦げた鉄の匂いと、手に熱が伝わる。

盾は4〜5発攻撃を受けた後、熱で溶けて穴が空いてしまった。

溶けた鉄が左肩に跳ね、軍服が溶ける。

『戦況報告!こちら右翼! 負傷1、死亡3!』

魔法の雨が止むと、耳につけている魔導通信無線に各小隊員からの報告が入った。

『同じく左翼担当、 負傷2、死亡1!』

俺は無線のボタンを押し、小隊各員へ報告をする。

「こちら中央担当、第73歩兵小隊小隊長、アルト・レガリア。負傷3だ。俺達は、彼らの意思を受け継がなければならない! 各員、絶対に生き残れ!」

戦に散った小隊各員のために、手を合わせる。

もうじき、安全圏にいる魔導師団が目標位置を定め、反撃攻撃を行うはずだ。

尊い小隊員4人の死を、無駄にはしてはいけない。

だが、数十秒待っても魔導師団の攻撃は来なかった。

「魔導師団は何してやがる! 王国の魔法使いどもが魔法を放った隙を狙うんじゃねえのか!」

そうガレスが叫んだ瞬間、無線通信が来た。

『こちら第4魔導師団、第73歩兵小隊へ告ぐ。魔術式の構築が完了せず、迎撃ができなかった。 次の攻撃で反撃射撃を行う。それまで耐え凌げ。』

無線から聞こえた無機質な声は、俺達を捨て駒としか考えていなかった。

「ハァ?! あいつら、マジでふざけんなよ!?」

ガレスは攻撃を受け、ボロボロになった盾を地面に叩きつける。

「あの魔法を一発耐えるだけで精一杯なのに……もう一回ですか……?」

流石に無茶だ。あの攻撃で盾は使い物にならないし、兵士も損耗している。

そんな状態で、あの魔法使い共の攻撃を一回分耐え凌ぐなんて。

『隊長!どうしますか!』

小隊員からの悲鳴にも似た声が、無線から響く。

「できるはずがない……」

俺は風穴の空いた盾を焼け焦げた地面に捨てた。

「総員、全力で回避だ!こんな命令、聞かなくてもいい!」

無線で小隊全体に命令を出す。

「右翼、左翼は負傷者を連れて第24バンカーへ退避! 負傷していないものは小銃で退避の援護を行え! 全員、生存第一だ!」


「で、盾の任務を放棄し、ここまで帰ってきたと?」

隊員をむやみに死なせないため、独断で回避を決断した俺は、上官に呼び出されていた。

あのあと、俺達はバンカーに退避し、なんとか生き延びた。

だが、そのせいで作戦は頓挫し、我々は後方に戻る羽目になった。

「はい。ですがあそこで任務を放棄しなければ――」

「馬鹿かお前はッ!! お前の独断行動で私がどのような思いをしたか、わかるかッ!?」

上官は手に持っていた万年筆をドンッと強く床に叩き捨てる。

壊れた万年筆のインクが、軍服の裾にかかる。

「お前たちクズのせいで、私の評判が下がるッ! 」

上官は唾を撒き散らしながら叫ぶ。

「やはり歩兵などゴミ以下だなッ!!」

俺は拳を強く握り、上官に異議を申し立てる。

「お言葉ですが、グレムル大尉。我ら第73歩兵小隊の戦死者数はご覧になりましたか?」

「歩兵の死者数? お前たちのような能無しのクズ、いくら死んでも関係は――」

もう我慢の限界だ。俺は握っていた拳を、机に叩きつけた。

灰皿が大きな音を立てて床に落ちる。

今すぐにでも、この拳をこのブタの顔に食らわせてやりたい。

俺はその衝動を必死に抑えようとする。

「あなたがクズとおっしゃった能無しにも、人生があり、家族があった!」

「知るかぁ! そんなゴミの命に価値は――」

俺は太腿のレッグホルスターから拳銃を取り出し、ブタの眉間につき当てた。

自分でも流石にまずいとは思った。

だが、それよりも怒りが限界を超えていた。

大切な仲間の命を、そしてその価値を侮辱されたからだ。

「では、あなたのようなブタに価値はありません。」

「ブッ、ブタだとぉ?! このクズ! 立場を――」

俺は拳銃のトリガーに、指をかける。

「ブヒィッ?! おっ、お前!自分が何をやっているのかわかっているのか!?」

ブタは脂ぎった汗を流し、全力で叫ぶ。

「わかってますよ。俺はただ、害のあるブタを殺そうとしているだけです。」

俺はハンマーを起こした。

カチャリという音が冷徹に、重く響く。

「衛兵ッ!! 反逆だッ! こいつを捕らえろッ!!」

ブタが叫ぶと、すぐさま衛兵が部屋に駆け込み、俺は拘束された。

「フッ! 無様だな、【アステリオの飼い種】ッ!」

ブタは、拘束されて抵抗できない俺の顔を、勢いよく蹴った。

「連れて行け。」

「はっ!!」

俺は、衛兵に連れられ、独房に投げ込まれた。

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