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人類滅亡が確定した世界をチート能力で救うことが出来るか?  作者: 平 来栖
第3章 魔法少女になれた日 〜死村 メイ〜
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第35食

「こいつは……なんてヤバい≪終末獣≫なんだ……」


 目の前に峡谷のようにそびえ立つRockモンを見上げながら僕はひとりごちる。


 まさかここまでヤバいヤツだとは思いもしなかった。


 なんたってコイツは―――





「WAIREEYYYYYY(ワイリィィィィ)!!!!」


 

 

 Rockモンが独特な咆哮を上げながら何度目かの例のポーズを決める。



 ジャキーン!!



 脳内再生かと思っていたが、どうやらどこからともなくSEを流しているようだ。

 なんという力の無駄遣い。


 そしてポーズが決まると同時にRockモンの体が光に包まれて




「WAIREEYYYYYY(ワイリィィィィ)!!!!」



 

 そして再びの咆哮。いいかげんうるせぇ。



 数秒後、発光を終えたRockモンのカラーはメタリックブルーから紫色へと変じていた。



 そう、コイツはなんと見た目だけじゃなく、武器チェンジ機能まで搭載した本格破のパチモンだったのだ!!


 ますますヤバさに拍車がかかるぅぅっ!!(阿鼻叫喚)



 そして武器チェンを終えたRockモンはいそいそとバスター部を構え直し、発射体勢へと移行する。



 た、頼むぜRockモン!! 今度こそは―――



「WAIREEYYYYYY(ワイリィィィィ)!!!!」 

 


 僕の思いを受け取ったのかRockモンが再びの咆哮。

 だからうるせぇって。



 やがて噴火寸前のマグマのように力がRockモンに蓄えられていく。なぜ分かるかって?


 

 ウィンウィンウィンウィン



 全身が例の“今、溜めています”エフェクトに包まれているからだ。



 う、うぅ、は、はやくしてくれ。コイツの一挙手一投足がヤバすぎて、見ているだけで不安で胃に穴が空きそうだ。



 やがて力を溜め終えたのか、Rockモンが体を震わせ、そして―――なんとバスター部をトランスフォームさせて握りこぶし状にする!!



 この形っ!? い、いやな予感しかしねぇ。

 まさか





「!!WAIRYRYRYRYRYRYRYYYYYYワイリィリィリィリィ!!!」




 大咆哮とともにRockモンが両手を上から下へと振り下ろす!!




 そして――――

 
















 ビヨ~ン ビヨ~ン ビヨヨ~~~~ン








 なんかバネっぽい物体が脱力音とともに出現し、ハネてった。



 ………………




 それは大きく上下に飛び跳ねながら、数百メートル進んだ先で……自然消滅する。













「あ“あ”あ“あ”あ“~~~~~~っっっっ!! ま~~~た外れかよっ!!!」




 あまりのしょうもなさにリアル地団太を踏んでしまう。



 誰がどうみても、今のは紛う事なきDWN.053の特殊武器ワ○ルドコイル!!

 


 バネみたいに飛び跳ねてタメ撃ち時にはなんと三段階高さも調整できるようになる優れ技なのだが―――



「今、それじゃなくねぇぇ!!?」



 TPOガン無視のRockモンのお茶目っぷりに、さすがの僕も声を荒げざるを得ない。



 コイツは本当にヤバい。ヤバすぎる。僕にはまだ早かった。



 全ステータスをRock値に振りすぎていて、その分、知能が残念仕様になっていたのだ。



 登場以降ずっとこんな調子で、出てくる武器はロクでもない代物ばかり。





 タッ○スピン!!(その場で高速回転して敵にダメージを与えるぞ!! 無敵時間がない敵には連続ダメージも与えられるっ!! 射程距離はほぼゼロだからまずは敵に密着だ!!)

 



 ス○ッシュクロー!!(切れ味バツグン! なんでも真っ二つにしちゃう破壊力を持っているぞ! 射程距離は超短いからまずは敵に接近しよう!! 話はそれからだ!!)

 


 ス○ライクチェーン!!(エッ○スシリーズまで完備してるなんてさすがパチモンの雄! バスター部からヘチマ的なワイヤーを発射するぞ! アイテム回収にはマストの武器だ!! 射程は……お察ししてくれ!!)


 

 


 ……つーかヤル気あんのお前??


 なんでノーマルショット使わないで、そういう搦め手を使おうとするかなぁ…………


 最初の一射目以降、僕の評価は右肩下がりでもはや地元突破寸前だった。

 


 クソッ、こちとら命削って召喚してるっていうのに、一発目がこんなモノマネ芸人とは泣けてくる。

 なんてついてねぇんだ……



 あまりのRockモンのふがいなさに僕がうなだれていると




「WAI……Ryyy?」



 なんか心配されてしまったようだ。

 クソッ……いいとこあるじゃねぇか。



 大きなお友達との間に何か芽生えそうな予感がしたが、しかしそれがすぐに勘違いであることに気づく。






 Rockモンが見つめているのはあさっての方角。





 そしてそこから何か……とてつもない力が迫ってきているのを感じた。





 これは……まさか




 時間の経過と共に力の割合が加速度的に増していき、僕はそれがなんなのか、おぼろげながら理解する。だが





「これは…………ヨーコなのか? だけどこの魔力量……前回見たのとは比較にならない……まさかアイツ……Rockモン!!?」




 エタルーラ、転送魔法がこちら目がけて放たれている。


 そして方角からして、まちがいなくこのRockモンがターゲットとされている。




 マ、マズイぞ!? この速度、質量、この間抜けに躱しきれるとは思えない!!







 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!




 

 迫りくるエタルーラの気配に僕は戦慄する。


 





 だけど







 まぁいっか♪



 とりあえず目的の一部はなんとか達成できた。



 こんなデタラメな転移魔法、放った人物は到底無事じゃ済まないだろう。

 まちがいなく全生命力を消費して100パー死亡遊戯なはずだ。

 



 ヨーコ



 どんなイノベがあったか知らねぇが、この短期間でそこまでの魔導士に仕上がるとは敵ながらあっぱれだ。


 まぁ、その戦果がお笑いモンスター一匹じゃ死ぬに死にきれねぇだろうがな(笑)



 とりあえずギシンを一体駆除できたことだし、僕っちはクールにトンズラさせてもらうとしようかねぇ。




 ヨーコのエタルーラは着弾と同時に転送フィールドを周囲に形成する特徴を持っている。



 このままノンキに棒立ちしていたら僕までどこか遠くの異世界に飛ばされちまう。




 じゃあなRockモン、短い付き合いだったけどとりあえず――――笑わしてもらったわ。

 往生しな。




 僕の目に直立不動のRockモンは、ただ脅威に立ちすくんでいるように映っていた。




 しかし





「WAIREEYYYYYY(ワイリィィィィ)!!!!」





 Rockモンは全身をわななかせながら、天を突く叫び声を上げ、そして、身構えた。





 まさか、まさか、お前は―――



 


 この超力エタルーラに





 立ち向かおうとしているのかっ!!!?





 でもどうやって?





 方法は分からない。だけど





「WAIREEYYYYYY(ワイリィィィィ)!!!!」 




 心なしかRockモンの顔つきがさっきまでとは違う……ように見えない気がしないこともない。



 腐ってもコイツも破壊をもたらす者……ってことか。



 その逃げない姿勢に僕はヤツの≪終末獣≫としての矜持を見た気がした。



 そうこうしている内にエタルーラの気配はすでに回避限界点を突破してきていたりする。



 仕方ねぇ、僕は跳ぶだけだから、ギリギリまで見届けてやるぜ。



 テメーのRockな生きざまをよぉぉ!!










 そして














 来たっ!!!






 ズバシャァァァァァァーーーーンンンン!!!









 目に見えないが巨大な魔力の塊が飛来してきたのを肌で感じた。


 その速度は目で追えるようなシロモノではない。



「Rockモンっっ!!?」




 だけど僕は――――見た。




 見たんだ。



 飛来して来たエタルーラが着弾しようとした正にその瞬間、Rockモンが、Rockモンが







「↓B↓B↓B↓BBBBBBB!!!!」






 しゃがみ込み、そして―――





「WAIREEYYYYYY(ワイリィィィィ)!!!!」 





 飛来するエタルーラの真下、何もないデッドスポットとなった空間を潜り抜け、躱しきったのを!!!





「――――れ、連続、ス、スライディングっっ!!!??」





 それは華麗で見事な低姿勢スライディングだった。

 熟練のスノーボーダーのようにエタルーラの隙間を縫うように滑っていった!!



 



 ………すげぇ、やっぱりコイツは知能以外の能力は完璧だ。




 あんな速度を見てから躱すなんて、並みの反応速度じゃねぇ。

 素直に感嘆する。






「YATTAZEROLLTYANNヤッタゼロールチャン!!」






 Rockモンも会心のスライディングだったのか、天空を仰ぎ渾身の決めポーズを決める。





 ジャキ―――ン





 ……やっぱりうるせぇし鼻にもついたけど、今だけは許してやんよ。




 それだけの難事を成し遂げたんだからな、お前はさ。



「よくやったなRockモン。お前、やるじゃねーか?」



「WAIREEYYYYYY(ワイリィィィィ)!!!!」 


 Rockモンはやったぜとばかりに親指を立てる。


 その姿を見て、胸に暖かい感情が広がっていく。




 不思議だな。まさか≪終末獣≫との間にこんなモンが芽生えるなんてよ。




 モノホンの友情ってヤツがよ。









  

 あれ……? でも……??















 なんかさっきRockモンが戦場で女の名前を叫んだような気がしたけど、それって……
























 ―――――――逃がすかっ!!!!―――――――










「!!!!?」



 幻聴だろうか、今、声が聞こえた気が―――




「なっ!!!!!?」





 次の瞬間、飛来して飛び過ぎたはずのエタルーラの気配を背後に感じた。




 まさか…………あり得るのか……?








 こんな事って……こんな事ってっ!!!





「じ、自動追尾型のエタルーラだぁっ!!? そんなことっ!? ヨ、ヨーコ、お前は」




 僕以上の魔導士に――――





「!!!!!!!!」









 微動だにできなかった。




 突如死角からUターンしてきたエタルーラによってRockモンは貫かれ、










 テイゥンテイゥンテイゥン








 そのままエネルギーの残滓を四方へと飛び散らせながら消失していった。



 こんなあっけない最期だなんて…………

 

 

 Rockモンを転送させたヨーコのエタルーラはそのまま地表へと衝突、そして―――





 バシュゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウ





 転送フィールドを形成し始める。



 その速度は緩慢だったが、前回より比較にならないほどの広範囲に及ぶだろう。





 ………………




 その広がりを見ながら僕は痛感していた。





「やっぱり僕ひとりの力じゃ……キツイな」






 青雲の志を抱いてこの地球に舞い戻ってきた。


 あっちの世界のために、この世界を可及的すみやかに滅ぼすことを誓った。


 そのための手段は、エタルーラ、転送魔法、予言外の≪終末獣≫


 だが、結果はギシン一体と相打ちが関の山だった。




 ここまで準備しても、ダメ。




 ―――僕の生命力は儚い。

 


 マガジンの弾数は多く見積もっても、あと四発が限度だろう。


 

 それまでに確実な成果を上げなくちゃいけない。



 人類滅亡の確かな傷跡を残さなきゃいけない。




 そうでなきゃ死んでも死にきれない。




 もう手段は選んでいられないな。




 こうなったらもう、僕自身が手を下さなくてもいい。



 他の誰かでもいい。



 世界を破滅に近づけることさえできるのなら。





「……協力者、か」





 その時、僕の脳裏には財団からパクった予言書とセットになっていたある付録のことが浮かんでいた。






 顔写真とプロフィールが記載された―――財団に弓引く特A級の危険人物リスト。




 


 


 ……………クックックッ、面白れぇ。

 



 愚かな人類を滅ぼすのは、愚かな人類の手で。




 その方が燃えるし、アイロニーも効いている。





 その考えは、僕をいたく気に入らせた。




 

「おっと、そろそろヤバいか」


 

 いつの間にか転送フィールドはつま先にまで迫っていた。


 

 僕は焦ることなくゆっくりと自分の周囲に転送フィールドを展開していく。



 目標は日本、人類終焉の地。



「あばよRockモン、楽しかったぜ。次の世界でもRockな暴れっぷりを期待してるからな」



 僕はこの地で初めて出来た友人(マブダチ)?に別れの挨拶を言いながら、そのままクールに去っていった。

 




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここより本当の主人公の、最後の戦いが始まります。


ぜひ最後までお付き合いの程よろしくお願いいたしますm(__)m

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