第3戦
5/2 とある理由で流血表現をカット致しました。ご了承の程よろしくお願い致しますm(__)m
幕切れはいつもあっけねぇ。
オレはそいつを実感していた。
「ふぅ―――」
完全勝利の余韻に浸りながら、先ほどまで終末獣が寝そべっていた場所でオレは小用を済ます。別にマナー違反ってわけじゃねぇ。そもそもオレはマナーを破るのが大っ嫌いだ。
ただ、さっきの戦いでこの近隣にある建物はみんな消滅しちまったんだから仕方がねぇんだよ。ギシンが漏らしたなんてことだけは、あっちゃならねぇ。
だからオレは攻守壁を使って大穴を穿ち、即席便所を作ってやった。
その直径はおよそ十メートル程。
これなら誰も文句言えねぇだろ?
前に読んだことあるがサバイバルマニュアルでもヤバくなったら穴掘れって書いてあったしな?
……そういや昔、こんなデケェ便所でクソしてやがるアニメを見た気がする。
あれ何つったっけ?えーっと、たしかおぼっ―――
「ねぇ、K・S」
―っ、いきなり話かけんなよ。
ビビッて一瞬止まっちまったじゃねぇか。
「ちょっと待てよ舞子。あと少しで終わるからよ」
「……そうじゃなくてさっきのアレはさ、よくないよ」
「ああん? 何だよアレって」
「さっきの戦い。私言ったよね。命は弄ぶもんじゃないって。依代だってムダ使いしちゃってさ……いつかそんな態度で戦ってたら、痛い目見る日が来るかもしれないよ」
何だコイツ? 何を言うかと思えばもしかしてオレに説教かましてんのか?
「うるせぇな。アレがオレのスタイルなんだよ。それにあれくらい痛めつけやんねぇと、おッ死んだ仏さんたちが成仏できねぇだろうがよ」
「……そんな殊勝な考えとは思えないけど」
チッ、本当にうるせぇ。
テメェはオレの何さまのつもりだ?
ただの動くダッチワイフのくせして上から語ってんじゃねぇ。
……まぁ、オレ様の高尚な美学を雌のテメェに理解しろっていう方が無理があるか。
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~数分前~
両腕を失い地面で腹這いになっていた終末獣は、文字通り手も足も出ない状態だった。
いや、ちょっと違ぇな。まだ足はあんな。
オレは神威を発動させるとまず足を二本とも削ぐ。
ズダァァァン!!
「グギョォォォォォォォォ!!!!」
終末獣がのたうち回る音と、苦悶の叫び声がいい感じの絶妙なタイミングで重なった。
それを聞いてオレは
ハハハッウケる。
笑ってた。
これは世界でオレしか味わうことが出来ねぇ究極のハーモニーだ。
たっぷり堪能させてもらうとするか。
ズダァァァン!!
「グゴゴォォォォォォ!!!」
ズダァァァン!!
「グギャォォォォオォォンン!!!!」
ズダァァァン!!
「グワァォォォォォォォォォォォン!!!!」
ハハハ、ヤベェクセになりそうだわ、コレ。
オレはもう原型も良く分からない肉塊と化した終末獣を、攻守壁を使っていい感じにカッティングしていく。
……いや、正確には攻守《壁》じゃねぇか。
実のところオレ様が最強なのには理由がある。
それはオレ様が神威のその先にある、《奥意》に到達しているからだ。
まあ平たく言うとパワーアップした神威が使えるって訳よ。
その奥意によってオレは攻守壁の形状を変形させることが出来る。
まるで粘土をこねるように自由自在なんだぜぇ?
「グギョォォォ・・・ン」
奥意で肉斬り包丁の形状にさせた攻守壁で、終末獣をザクザク切り刻んでいく。
「………グ……ギョ……ン……」
おや、ちょっと元気が無くなっちまったか?
オイオイもうちょい頑張れって。お前らアレだろ。ほら、人類を滅ぼすんだろ? そんなんじゃ腰抜けの仁だって殺れねぇぞ?
オレは攻守壁をドリル状にすると、そいつを終末獣の尻穴らしき箇所にぶち込んでやる。
「グッ、グギョオォォォォォォォォォォオォォォォォォォオッォォォオン!!!」
まだまだ元気じゃねぇかよ!! ケッケッケッケッケッ!!
だが、それが文字通り断末魔の叫び声だったらしい。
その後、終末獣は顔を上げて天を凝視すると、ピクピクしてほとんど動かなくなっちまった。
もう、いいか。
オレは攻守壁で一気にクソバケモノヤローの全身を浚う。
その時、オレが思ったことは只一つだけだった。
ヤベェ、今、すっげぇションベンしてぇ。
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「お願いだからもうちょっと真剣になってよ。……心配しちゃうでしょ」
アアン?心配だぁ?
オレ様はギシンだぞ?
テメェみてぇなクソビッチに心配される謂れはねぇよ!! バァーカ!!
何が気に食わねぇのか、舞子はさっきからオレに対して批判的な意見を述べてきやがる。
ホントにうざかったがコイツの機嫌をあんまり損ねるのは得策じゃねぇ。
……ヤラせてもらえなくなったら事だしな。
「わぁーったよ。次からはもうちょっとマジメにやっから機嫌直してくれって。な?」
微塵もそんなことは思ってないその場限りの誓約を口にする。
舞子は嘆息するとやれやれと首をふる。
へっ、チョロイぜ。
「うしっ、ションベン終わったし帰るか」
舞子の肩を抱いてジープに戻ろうとする。
が、なぜか舞子はその場から一歩も動きやしねぇ。
まだなんか文句があんのかよ。メンドクセェ女だな。
「おい、どうした?」
「アレ」
舞子が呆けた表情で空を指差す。
「なんだぁ?」
オレはその指が指し示す方向を振り返る。
「……オイ、どういう事だ。これは」
舞子が答えを知ってるとは思えなかったが、それでもそう聞かざるを得なかった。
なぜか、夜空には光輝く魔法陣が浮かんでいた。
今日、財団から送られてきた予言では、終末獣の出現は一体だけだったはずだ。
それなのに、なぜか上空には光輝く巨大な魔法陣が二つも浮かんでいやがった。
オレは大きく喉を鳴らして唾を飲み込む。
予言外の事が起きているのと、終末獣が同時に二体も出現したことに対する動揺じゃねぇ。
夜空に浮かぶ魔法陣から現れた終末獣の羽根が、黄金色に輝いていて
それが数え切れねぇほど大量にあったからだ。
長年バトってきたが
こんなヤツは知らねぇ。
気付いたらオレは自分を守るように攻守壁を展開していた。




