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地獄巡り  作者: Harumichi
7/7

最期まで

「走れ走れ、逃げるぞー」

「うい」


白い人が近づいてくる。でも足は遅い。

ダァンッ

突如壁が塞がれた。

後ろからは白い人の足音が近づいてくる音が聞こえる。

やっぱりここも理不尽だ。


「あ~、行き止まり」

「終わった‥‥」

「今回は短かったね」

「んなもんだろ」


 今回も運がなかったな。いや、運なんて私たちにはない。だってこの遊びをやってること自体がおかしいんだもの。

 そうして私たちは白い人の腕に体を突き抜かれて死んだ。



「この衣装、めっちゃ普通だぁ」

「だな、ただの私服だ。金でも無くなったんだろ」

「かわいそうに‥‥」


 こんな遊びをするから‥‥、とソフリーは呟く。

 

「でも、そこらへんに車がたくさん転がってるね」

「な、人類でも滅亡したみたいな感じだな」


 そう、この場所は、ビルが燃え盛り、空は濁り、道路には車が転がっていた。


「人もいない‥‥」

「そんなもんだ」


 とりあえずまっすぐ歩く。と、プブブ、プー‥‥、クラクションの音が聞こえた。


「‥‥あのクラクション壊れてるね」

「え、そこ?普通はどうして鳴ったんだ!みたいな感じゃないの‥‥」

「そんなことないよ」

「‥‥え、なんかすいません」


 ソフリーは、むうっと頬を膨らませる。テラスがその頬を人差し指で押す。


「やめてー!」

「めっちゃ柔らかいな」


 ウ~ゥ、突如パトカーのサイレンの音が聞こえて来た。


「ほら、パトカー来ちゃったよ」

「俺のせい?」


 ピーポーピーポー、ガヤガヤ、プップー

 さっきから救急車の音も、人ごみの音も、クラクションも聞こえる。


「あれ?さっきまであそこのビル燃えてなかったっけ‥‥」

「確かに、燃えてたな。そういえば、車も、散乱してなかった———」


 ドオオォォォオン

 ソフリーとテラスは吹っ飛ばされた。思いきり地面に転がる。

 

「‥‥っ」


 音が大きすぎて鼓膜が破れた。脳に響いて意識が飛びそうになる。

 痛みなんて感じるよりも、何が起きたのかが分からなかった。


「おい、ソフリー‥‥あれ」


 テラスが指を差した方向を見る。

 あぁ、なんてことだ。あれは———学校で見た、化け物だ。



「立てるか?」

「痛い」

「無傷だったらそれこそ化け物だろ」


 すり傷やら打撲やらでテラス達はボロボロだった。まあ、骨折はしていないみたいなので、不幸中の幸いと言ったところか。


「あの化け物‥‥学校で見た時よりも何倍もでかいな」

「ね、でも背をこっちに向けてるなら好都合。早く逃げよ」


 テラス達は走り出した。



「あれ?」

「どうした」

「ここ、さっきの場所じゃない?」


 ‥‥、言われてみれば確かに、俺らはさっき吹っ飛ばされたところにいた。


「どうする?このまま踏みつぶされて死ぬことを待つ?」

「えー、もうちょっと探索してみようよ。なんか見つかるかもしれないだろ?」


 諦めの早い奴だな、まだ可能性はあるってのに。

 まあ、そりゃそうか、どうせ死ぬ未来しかないんだもんな。


「ねえ、テラちゃん、私考えたんだけどさ。私たちが死ぬたびに別の場所にいるのにはさ、なにか条件があるんじゃない?」

「条件?例えば?」

「例えばね‥‥正規のルートで死ぬと、別の場所にいるとか~」

「‥‥じゃあ、アンさんは‥‥」

「ただの過程だよ。それにアンちゃんは———」


 ドォンッ

 吹き飛ばされそうになる。慌てて車に掴まり、吹き飛ばされたソフリーをギリギリで掴んだ。


「ぬわぁ」

「お前も耐える努力をしろよ!」


 そのままソフリーと共に、車を盾にして隠れた。


「気づかれちゃったね」

「そうだな、逃げるか」

「ここで踏みつけられるのを待っててもいいと思うのになー」

「えー、絶対やだ!そんなの屈辱だろ。出来るなら最後まで抗って死にたいじゃん?」

「‥‥最後まで‥‥抗う‥‥」


 そんなこと、考えたことなかった。いつも諦めてたんだな、私。そうだ、君はいつもどんな時も諦めなかった。

 なんだかバカみたいだね。ふふっと笑う。


「そうだね、逃げよう。最期まで!」

「‥‥おう!!」


 上から見下ろしてくる化け物と目が合う。でも、何故だか怖くはなかった。



 ソフリーとテラスは走って逃げる。

 

「ねえ!あそこ、踏切の奥に道あるよ!」

「あそこに行けば別の逃げ道があるか―——」


 グシャッ

 何かに下半身が潰された。これは、車‥‥?車を投げつけられたのか‥‥。

 踏切の上でソフリーとテラスは車の下敷きになっていた。

 

「う‥‥あ‥‥」


 謎に俺もソフリーも意識はある。でも、足は潰れた!どこにも行けない!!

 このまま、死ぬのは‥‥。

 テラスは思考を巡らせる。ダメだ、鼻血が出てきた。


「ソフ‥‥リ‥‥」


 カーンカーンカーンカーン、音が聞こえて来た。

 踏切音‥‥!?ここで‥‥!?マズイ、ここは踏切の上、これじゃ‥‥。

 列車が見えてきた。血も止まらない。


「はあ‥‥ハア‥‥ね、テラちゃん。私たち二人でやってきた中で一番頑張ったんじゃない?」


 フーフー、と息を切らしながら微笑んでくる。


 本当に、頑張ったなあ俺ら‥‥。ソフリーの言うとおりだ。

 これは間違った死だ。正規の死じゃない。 でも、これでいい、これじゃなきゃダメだ。

 あの時、アンさんが言おうとしてたことが分かった気がした。


「あぁ、そうだな、頑張ったよな、さっ——…」


カンカンカンカンカン・・・————

 


 

これにて『地獄巡り』は完結です。ありがとうございました。

最期に一つ、あなたの”地獄”は何ですか?

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