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セスランディア王国物語  作者: あきよし りん
第六章/動かす言葉
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届き始めたもの④

アランフォース視点



リリアンヌが、使用人と共に屋敷の中へと入っていった。



ようやく、笑顔が戻った。


いや…昨日の今日だ。


無理をしているのだろうが、それでも震えは止まったようだ。



「……」


アランフォースはエラドリオール邸の門から離れ、ひとり王城へ足を進めた。




『怒って…いますか?』




違う。


自分自身に対して、呆れていた。



攫われたというのに、


足を斬られたというのに。


怖かった、痛かったと、彼女は一切泣き言を言わなかった。



だから…何も気付かず、大聖堂まで馬車へ乗せようとした。



彼女の心に負った傷を、呼び起こしてしまった。


何が、“誠実に応えてきた”だ。


護衛どころか、人間として失格だ。



それなのに――彼女本人に、八つ当たりをした。



キリやアイラのように、まっすぐな言葉を使えないことがもどかしい。


自分は、ここまで口下手な男だったのか。


今まで気にもしたことがなかったのだから、当然だろう。



自分は、命令さえあれば躊躇いなく手を汚すことができる。


彼女は、人が死んだことをあれほど気に病んでいたというのに。




『命の価値は…っ!誰だって同じです!』




命の価値は、違う。


王族の命は、何よりも貴い。



そのことを、本人が一番理解していない。


だからこそ、ひとりでどこかへ行こうなどという考えが出てくる。



「……」


加護を貰った時、自分が一番近くにいたはずだ。


その時から、二年近くも話す機会があったというのに。



彼女が抱えているものに気付いてなお、何も聞かなかった。



明らかに、彼女は何かを知っている。


精霊王の話以前に、彼女は不安と戦っていた。



あなたが恐れているのは、何なのか。



何度もその言葉が出そうになっては、飲み込んだ。


それを尋ねる必要があるのは――俺ではない。



地下を捜索すれば、それが垣間見えるのか。


デューゼの森まで行けば、答えが分かるのか。



そんなことを考えているから…


彼女に言おうと思っていたことも伝え忘れた。



スノウに力を貸してもらってから、自分の体に変化が起きていることを。



元から耳は良かったが、今は壁を隔てた部屋の会話まではっきり聞こえる。


集中すれば、遥か遠くの小さな動きまで見逃さない。


犯人に動きを止めるちからを使われても――自力で解くことができた。



これは、一度精霊にちからを分け与えられたからなのか。


それとも――



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