第三十二話 決意
随分と長い間気を失っていたのか外は暗くなり、代わりに教室棟は明るくなっていた。あの後、一人になりたくて家庭科準備室で寝ていたことを思い出した。あたりを見渡したが、どうやら健人も起きたらしくここには俺以外に誰も居なかった。
立ち上がって背を伸ばす。時計を見るともうすでに19時になりそうだったので急いで家庭科準備室を出る。前回共に行動していた俺含めた九名で話し合いながら夕食を取る約束をしていたからだ。場所は三階にある空き教室で。その教室に走り、引き戸を開けた。
「おいおい弘成おっせえよぉ」
知音が味噌汁を啜りながら箸を俺に向ける。
「知音、行儀悪いから」
利名子が突っ込んだのですぐに知音は箸で指すのをやめ味噌汁を飲み切った。
「……学校に非常食とか本当にあるのか」
俊樹がボソッと呟いたのを明人が拾う。
「それなー! レトルトカレーにお米、ついでに味噌汁もあって良かったわ!」
「一応、弘成が来るまでで話は大体ついたぜ。」
陽向は他を無視して淡々と話し始めた。
「私と知音、健人と明人はとりあえず外に行く事に賛成。烈王さんは望月家と合流と妹を見つけることが目的だから、私達はついていくことにしたよ。利名子と俊樹と真凛は能力が無いけど私達に着いてきてくれるって」
「という事は、全員賛成なんだな。勿論、俺だって賛成だ」
「決まりだな」
笑顔でカレーを食べながら声を上げた烈王さん。
「明日、出発か」
俺はそう呟いて、席につく。そして、夕食を済ませた。
俺がこの部屋を立ち去ろうとした時、烈王さんが声を上げた。
「……今日、遅れてすまなかった。雅姫と合流する予定だったが、前回の襲撃で多数亡くなったようで状況説明に時間がかかって合流出来なかった。明日、隣町にある『ツクリザカ公園』で朝から行動することになるが、問題ないか?」
「問題ないですよ」
そう言って、俺はその場を後にした。
寝る部屋はそれぞれ好きな場所で寝ることになった。俺らはそれぞれ一部屋選んでバラバラに別れた。
前回とは違い初日を生きている事に改めて現実だという事を実感する。脳が処理に追いつくのに必死でずっと疲れていた。意識が飛んだ。
起きろ。おい。
「弘成! もしかしてお前ずっと意識なかったのか!?」
日が眩しい。ここは何処だ。
「ハッハッハッ! バカ野郎だな貴様! 貴様の仲間が仲間を二人も殺したぞ! 後戦えそうなのは……貴様に、仲間を殺した少女と顔がほんの少し整った少年に弱そうな男だけ! どうやってオレが貴様等を攻撃したのか、そして彼等を攻撃したのか分からなかっただろう? それも当然! オレの能力は透過するだからさ!」
やたらペラペラと喋る、小学生のような見た目をした怪物が目の前にいた。
後ろを振り向くと手を震わせる陽向とただただ何も出来ずに座り込んでいる真凛と利名子。二人の視線の先には上半身と下半身が切断された健人と首から上のない俊樹らしい体に脇腹の半分が欠けた明人が倒れている。どうみても死んでいた。
「弘成、後ろは気にすんな。前だけ見てろ。戦うのは俺達だ」
知音と烈王さんは俺の両横に立って俺の肩を掴んでいる。
俺達は戦うしかない。決意したのだから。




