第三十一話 嘗ては
「ボクが弱いだと……? ふざけんなまだまだこれからだ!」
明人は何を知ったのか余裕を感じとれるほど悠長な口調で回答する。
「見ててわかったよ。お前の能力は『物を使って生物を生み出す』的な感じだろ?」
「だとしたら何だ? ボクの能力なら勝てると思っているのか?」
「違う。それに……アイツよりも能力を使えこなせてないように見えるんだよなお前。弘成の方が詳しいと思うけどさ」
言われてみると確かに何処かおかしい。泥自体もそこまで強くはないし、陽向に対して行った攻撃だって、今回の状況でなかったら避けることだって出来たはず。
「明人、間違ってないぜ。さっきの怪物よりも、前回俺が会った奴等とも比べて使いこなせてない。……そういえば前回、怪物は六体しかいないと聞いていたが、お前は前回いなかった。お前らは数に限りはないのか? 前回で三体死んだからお前のような未熟な奴が増えたのか? それとも」
「――うるせえええええ‼ ボクだって、なりたくなかった! 誰か、ボクを助けてくれ……」
先程までの威勢はなくなり、怪物は膝を付いて倒れ込んで命乞いを始めた。その場の誰もが動かなかった。一人を除いて。
「……可哀想だから、助けてあげようよ」
これまで全く喋ってこなかった真凛だけが彼に同情していた。
「……キミ達を襲わない。襲ってくる奴等からも守る。だから、どうか命を」
皆が優しいのはよく知っている。でもこんなことを言っても俺は許せない。俺の友達を道具にして、殺したのも同然なのに生かそうなんて出来る訳がない。でも理由は分からないが俺は殺す為の武器を作れなかった。
「皆なら貴方を、信じてくれる。だから顔を上げて。……流石に、そんな貴方を誰も責めないよ」
怪物はまだ膝をつけて顔をあげようともしない。
「――だったら、真凛と弘成の代わりに殺してあげるよ」
「…………あ……」
怪物は顔を上げる。そして明人はそれに近づいて思い切り腹部を殴り、拳は血で塗れさせて背中に現れる。
「そんな……」
「なんで!」
「……なんでって弘成、お前はこいつを殺す為にここまで来たんじゃないのかよ」
「そ、そうだけど」
「なら、俺のやった事は間違ってないだろ」
何も言い返せなかった。いつの間にか怪物に同情していたようだ。
怪物に目を移すと何やらブツブツと呟いている。俺達はそれを聞く事にした。
「…………いい事を教えてやる。他の二人は俺なんかよりも断然強い。特に針金を使う奴には警戒しな。今のお前達では絶対に勝てない。」
「……生きろよ」
その一言を最後に彼は溶けていき、残ったのは真っ赤な軟式球程の塊だった。
俺達はそれを拾い体育館を抜け皆の元へ向かった。俺と明人で陽向を支えて。
家庭科室前に戻るとグッタリと壁に背をもたれて倒れている健人がいて、その周りで知音達が心配そうに囲んでいた。
「無事に怪物、倒したんだな」
「……ああ」
眉を掻きながら健人の状態について尋ねた。
「……どうやら能力を使い過ぎたみたいで、泥がいなくなった瞬間に倒れたんだ。それでずっとこの状態」
「そうか……」
ひとまず健人を家庭科室内に運んで寝かせた。健人と陽向以外で今夜、明日からどうするか話し合うことにした。俺と、真凛と、明人と、烈王さんと、知音と、俊樹と、利名子で。




