第三十話 制御
「……………………」
「あの子、暴れなくなったね……良い道具になってくれそうだ」
俺を陽向が追ってきたということはもう一体の怪物には勝ったようだ。1対2だろうが負けることは無い。俺は力を込め直した。
「………………!」
危機を感じ、床を蹴り、飛ぶ。平行線の先に陽向が見えた。顔の上半分は泥で直視できない。ただ、目線の先が俺だったということは分かった。怪物から距離を取りて降りる。
「因みに万一、君があの子を殺せそうになったら、僕が死ぬ直前に殺してあげるよ」
「……それで、殺さない理由になるとでも?」
「僕は変わってるからさ、僕の道具は人扱いしてくれないようなんだよね」
「…………死んだままになるってことか。なら、お前を」
「――――待てよ!」
また誰かが入ってきたようで今回は二人もだ。片方は息を切らしながら、もう片方は怪物に対して指を指す。
「弘成ァ! お前らを救いに来たァ! ぜ!」
明人と、真凛。真凛の右腕の袖は何故かなくなっているが、二人とも怪我はない。どうやってここまで……。
「陽向も待ってろ! お前を死なせないからな!」
「……弘成、陽向を倒して」
真凛が俺に訴えてくる。
「分かった。我慢しろよ、陽向」
再度飛ぶ。今度は壁に向かい壁を蹴っては方向を変えて陽向の攻撃を避ける。そして刀を向けて切る素振りをする。陽向が一瞬構えたのでそのまま勢いで陽向を下まで掴み飛ばした。
「それをして何が出来るんだオマエラはよ」
「オラァッ!」
明人の拳が突然太くなり、泥だらけの額辺りを勢い良く殴る。骨が軋む音が聞こえてくる。
「バカが! 先に殺すなんて単純な作戦で上手く行くとでも思ったか! 今俺がそいつの頭部をブチ壊した! もう生き返らない!」
「まだ陽向は死んでねえよ」
軋む音と同時に何かが生まれてるような音も聞こえてくる。泥が次々と地面に落ちて顔が見えていく。目を閉じて、気を失っているようだ。
「なっ……なぜ」
「お前の仲間が助けてくれたんだよ、俺達を」
「私の片腕を作ったのも彼なの」
俺にはよく分からなかった。一番最初にあの怪物を見たときはそんな能力を使ってはいなかった、それに今回何故明人に能力が使えるようになったのか。
「俺らは大切な仲間だからさ、単純な話。俺がここまで来たのも、真凛がここまで来たのも、陽向がここまで来たのも全部仲間の為だ。まぁ陽向が大切な――おっと……それに二人だけだと少し心配だったけど大丈夫そうだな」
「何が言いたい」
最早何もない怪物は怒っている。
「だってお前、弱いだろ」




