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風の精(スプライト)  作者: 花一匁
二章 風と仲間
42/42

風 ⅩL

ⅩL 一次戦





「お久しぶりですわ。お姉さま」


「あら、久しぶりね。あなたも来ていたの?」


「はい。今回風の魔法使いが学院に入学したと聞いて、その実力を見るために」


「そう。よく手に入れたわね。そんな情報」


「ふふ、世の中がそれだけ風魔法に注目しているということですわ。……それより、その頬はどうなさったのですか?」


「ちょっといざこざがあったのよ。でももう大丈夫よ」


「そうですか。あまり無理はないようにしてくださいね」


『一次戦も早くも折り返し点に差し掛かりました。此度のタッグマッチトーナメントも白熱したバトルを繰り広げております』


アナウンスが掛かり、次の対戦カードが発表される。

生徒は自分がどの順番かは知っているが、観覧者はそれを知らない。

その理由は観覧者と生徒の違法な接触を避けるためである。その為、観覧席も生徒用と来賓用の二つに別れている。


「さて、第四ドームね。あなたも行くんでしょう?」


「はい。やはり、実際に見てみたいですから」


第四ドーム。そこの対戦カードにはレイとニールの名前が映し出されていた。

多くの人がその対戦を見るために移動する。それを予想していたナターシャは予定通り、他の場所より多くの教員を配置しており、それぞれが誘導していく。

そこにアインとミーシャの姿もあった。


「やっぱり注目高いよね~。予想していたとはいえ、入りきらないよ~」


「ですね。まったく、他のところからも人員を割かなければいけないとは……」


「さすがに人手不足は否めないね~」


「本当に。しかし、これだけの人が移動するのですから他は案外楽なものかもしれませんね」


「そうでもないかもよ~。人が少ないから不正に動く人もいるからね~」


「あいつにどうしてここまで注目するのかわからないな」


「とか言いながら~、一番心配してるのってミーちゃんだよね~」


「そ、そんなことありません! あ、列を抜けないでください。第四ドームに向かうのなら列に並んでください」


女の子が列を抜けようとしていたのですかさず注意する。

その子は白衣を着ている。ミーシャは違和感を覚えたが、これでも割ける人員はぎりぎりだったので、優しく注意するだけに留めた。


「早くお母さんとお父さんのところに戻りなさい。どこに行ったかはわかるかな?」


「第四ドームに行くって言ってた」


「そう。じゃあ、この列に並びなさい。入口まで行ったら私と同じ制服の人がいるから、親を一緒に探してもらうんだよ」


「うん、ありがとう。お姉ちゃん」


女の子は列に入り、列に沿って第四ドームに向かう。


「あんな小さな子供まで来ているのか」


「将来はここに入学させる気なのかもね~」


すでに人混みで見えなくなってしまった。ちゃんと親と会えるか心配するミーシャだが、今は自分の任務を果たすことを優先する。



入場口からレイとニールが顔を出して会場の様子を伺っていた。

思っていた以上に人が多い。あまり注目されることが好きじゃない二人はこんなにも多い観覧車に嫌気がさしていた。


「こんなんだったら一次戦に勝ち上がらなきゃよかったな」


「……不戦敗なら、可能」


「すごい魅力的な提案だけど、もう逃げられないんだよな」


「……どういう意味?」


「注目度が高すぎるってことだよ」


ため息を吐きながら観覧席を見ていると、ミオの姿を見つけてしまう。

彼女の方はすでに勝ち上がったとニールが言っていた。

ここでは敵同士だから視察のためだろう。そう思ったとき、昨晩のフィレの言葉が過ぎる。


『本当はこんな事望んでいない、ということですよね?』


(ミオ……)


ミオは周りに特に親しい人がいないようで一人静かに座っている。

レイはあれが自分だったらどんな気持ちで観戦するかを考えてみる。応援したいのか、負けてしまえばいいと思うのか、それとも出場してほしくないのか。


「……レイ、時間」


最後まで答えが出ないままニールの呼ばれてフィールドまで進む。

先ほどまでざわついていた観覧者も静まり、今はレイたちとその対戦相手に注目するばかりだった。


「では、始めよう。まずは、転送石を身に着けてくれ」


予め渡されていたブレスレット状の転送石を着けてあることを確認した審査員は、会場中に響くような声を出す。


「両チームはルールを理解していること前提に試合を開始する。……では、転送!」


『ディメンション!』


跳ばされながらレイはニールから教えてもらったルールを思い返す。

基本は決闘と同じく、相方がやられたり、致命傷を受けるとそこで試合終了になる。そして転送石を狙うことは御法度で、事故でも故意でも転送石に傷をつけた場合は強制退場となり、その場で失格となる。

基本的にどんな魔法を使ってもよいが、魔法師生命に関わるような攻撃は禁止。もちろん、死に至らしめるような攻撃も禁止となる。

逆を言えば、相手を殺さなければどんな手を使ってもいいということになる。

今回は観覧者側には映像だけが投影されており、音や声などは一切入らないようになっている。


視界が明け、周りの様子を見ようとするがその前に体温が急激に下がるのを感じた。


「寒いな」


「……ここ、氷雪ステージ」


隣にニールがいるので転送先は同じ場所だったらしく、運が良かった。

視界は悪く、寒くて体力の消耗も激しい。相手がバラバラに行動してくれていれば早めに決着をつけることができる。


「……相手、ピーネとプラム」


「ふーん、まあ早めに決着をつけようぜ。負けるわけにはいかないからな」


すでに索敵を開始していたウィーは相手の位置を掴んだ。そして、都合よく相手は単独で行動しているようだった。

地形的にはユキを出したいところであるが、その存在を知られるわけにはいかないので今回は我慢するしかない。


「挟み撃ちにするぞ。それで終わらせる」


「……レイ、これ」


ニールから一枚の紙を手渡される。それには何か書いてあるようだが解読できない。

それを受け取ると体が少しずつ温かくなってくるのを感じる。


「……炎の護符。持ってて」


「助かる。行くぞ」


護符を懐に入れてニールと別れる。ウィーが風の動きによって相手とニールの位置を正確に教える。

相手が気づく前に一気に決めるため、ニールのタイミングに合わせる。しかし、慎重になりすぎてももう一人が駆けつけてきてしまう。そこら辺はお互いに理解しているので、直感と運に賭けるしかない。


『レイ様!』


ウィーの合図により、挟撃を開始する。


「狙うのは足だ。切り裂け!」


風の刃が相手の足を掠める。体制を崩したのを見計らってニールが攻撃をする。相手の足元に落とし穴を作り出し、そのまま落下させる。

詠唱と単唱もなく、打ち出された魔法は不意打ちには充分過ぎる力を発揮した。

そこにすかさずレイが追い打ちをかけようとした直前、後ろから攻撃が来る。

ウィーの警告も間に合わず、やられると思ったとき鎌を持ったニールがレイの真後ろに飛び込んで相殺する。


「……レイ、今!」


「これで一次戦突破だ」


落ちていく相手にアイアンクローを喰らわせながらそのまま地面に叩きつける。そこまで距離がなかったので殺してはいないし。魔法師生命に関わるほどの傷も負わせていない。

何とも呆気ない勝ち方だったが、最後の方は少しだけ危なかった。


「勝者、レイ・ラ・アストレス&ニールセン・ヴィヴィオ!」


第四ドームに戻ってきたレイとニールは煩いほどの湧き上がる観客をよそに控室へと戻る。その前にふと、ミオの座っていた場所を見ると、そこにはすでに一人分の席が空いており、もう帰った後だと見た。


「最後は危なかったな」


「……予想外。駆けつけるの、速かった」


「あの鎌はどこから出したんだ? 今は持ってないようだけど」


「……秘密。私も、教えないこと、ある」


「そりゃそうだよな。でも助かった」


「……どう、いたしまして」


次の試合は明日なので、今日は部屋に戻って休むことにした。

ミオと話し合わなければいけないが、今日は派閥の頭首が接触してきたことを博士に報告をしなければならないので、また今度になってしまう。


(明日、ミオと話してみるか。嫌がっても振り向かせないとな)

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