表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/33

第23話 山への道

海賊パンの噂が落ち着いたある日、ガルドが真面目な顔で店に現れた。


「ヴァルス、相談がある」


「何だ?」


「お前、強くなりたいか?」


ヴァルスは手を止めた。リラも黙って聞いている。


「…どういう意味だ」


「この前のダンジョン、覚えてるか? お前は自分のやり方で戦った。でも、それだけじゃ足りない。もっと強くならなければ、次は命を落とすかもしれない」


ガルドの言葉は、ゆっくりとヴァルスの胸に刺さった。


「俺が知ってる場所に、訓練に適した山がある。険しいが、そこで鍛えれば、お前の戦い方も変わる」


「なぜ、そこまでして教える?」


「お前は騎士だ。それに…」ガルドは少し間を置いた。「借りがある」


あの日、彼を救ったのはヴァルスのパンとリラの励ましだった。その恩を、彼は自分のやり方で返そうとしている。


「行くか?」


リラが尋ねる。ヴァルスはうなずいた。


三日後、三人は店を離れた。


ブロガーに店を任せ、セレナとレンには常連客への対応を頼む。普段と変わらない日常が、少しだけ静かになる。


「行ってくる」


ヴァルスは店の看板を見上げた。『魔王のパン屋』。自分の店だ。


山は、王都からさらに北。馬で三日の道のりだった。途中、いくつかの村を通り過ぎ、日が暮れる頃にようやく麓の宿に着く。


「ここからは、歩きだ」


翌朝、ガルドに連れられて三人は山道を登り始めた。道は険しく、ところどころ崩れている。


「訓練は、ここでするのか?」


「まだ先だ」


さらに登る。空気が冷たくなり、息が白く染まる。


「何がいるんだ?」


「熊。狼。それに、時々魔物も」


リラが顔をしかめる。


「楽しみだな」


「楽しみじゃない」


ヴァルスとリラの会話を、ガルドは無視して先を急ぐ。


夕方、ようやく開けた場所に出た。小さな広場。周りを木々に囲まれ、中央には古びた小屋があった。


「ここが、訓練場だ」


ガルドが中を開ける。ほこりをかぶっているが、寝泊まりできる状態だった。


「準備はいいか?」


「何の準備だ?」


「明日から、地獄を見る」


ガルドは真面目な顔で言った。リラは笑い、ヴァルスはため息をついた。


夜。外は冷え込んでいた。リラが薪を集めて火を起こし、ヴァルスは持参したパンを温める。


「寒いな」


「山だからな」


「明日は何をするんだ?」


「知らん。でも、楽しみだ」


リラはワクワクした様子で言う。ヴァルスは、少しだけ後悔し始めていた。


「なあ、ガルド」


「何だ」


「お前は、どうしてここを知ってるんだ?」


「昔、訓練した場所だ。師匠に連れられてな」


「師匠?」


「もう、死んだ」


それ以上、彼は話さなかった。ヴァルスも聞かなかった。


火の光が、三人の影を揺らす。


明日から、ここで訓練が始まる。


<システム通知>


新規クエスト解放:山岳訓練

ガルドの提案で、山での訓練が始まろうとしている。

目的:訓練を乗り越え、新たな力を得る。

報酬:新スキル、ステータス上昇、ガルドとの絆。

解説:「強くなることは、楽しいことだけじゃない。苦しみもあれば、痛みもある。それでも、乗り越えた先にしか見えないものがある。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ