最終(13)話 蜃気楼
サーティーンアベニューのゆかいなカラオケ店でのバイトをワイはついに辞めることに。
スクールも修了し、拠点を他の街へ移すこととなり、仲間たちの反応はいかに?
3ヶ月ちょっと慣れ親しんだハーバーシティをワイはでることにした。
サーティーンアベニューのカラオケ店も楽しく愉快に過ごせたが、ちょうどタウンタワー駅のスクールが満了となって、別の街、サザンクロスシティに拠点を移すのだ。
何か不満があるのではなく、元々そうする予定だった。思いの外、楽しい日々が続いたので、寂しい部分もあるが、カラオケ店を退職しようとカモ社長に申し出た。
「社長すみません。来月12日に最後にさせていただけませんか」
「そうか。弱ったな。イナ君が19日に退職する予定なんだな。2週続けてだと新人教育も混乱するから、シンジ君は5日に辞めてもらおう」
「えっ、あっ、はい」
なんともドライというか。そうすると1週間余るなぁ
「じゃあ、残りのシフトも頑張ってくれよ」「は、はい」
翌日この日はヒデさんと同じシフトだった。
「そうか。シンジ君も辞めるのか」
「ええ、ヒデさんにはいろいろお世話になったのにすみません」
「いやいや、俺も3ヶ月後には帰国するから、辞めるよ」
「そうなんですか?」
「ああ、だからお店は気にしなくていい」
「ありがとうございます」
「で、どこに行くんだい?」
「サザンクロスシティです」
「へぇ。引っ越す前にクラスの女の子を紹介してよ」
「ええ?無理ですよ」
「シンジ君ならできるよ」
なんでワイに彼女いないのにヒデさんに紹介しなくちゃならないんだろう?
タウンタワーにあるスクールの修了式があった。ワイは一言の挨拶で、つたないイングリッシュで、楽しい仲間と過ごせたのは宝のような時間であったと言うと教室は拍手喝采になった。
その後に仲の良い友人たちとプール店で玉突き遊び(ビリヤード)と緑の多い公園を散歩した。さながらささやかなお別れ会となった。
なぜかお別れのような気がしない。連絡先も交換したからか新しい世界が待っているからか
荷造りはバックパックとスーツケースに詰め込んだだけ。クラウディア婆さん、ケイコさん、ワカナさんのシェアハウスともお別れ。まるで未練なし。むしろ厄介な犬、猫と別れられて良かった。
さみしくはなかった。成長するには環境を変えるしかなかった。
目まぐるしかったからか。幻だったのか。夢をみていたのか。もしくはバブルだったのか。
スクール修了後、カモ社長によりカラオケ店も想定より早く辞めてしまったので、引っ越しまで1週間空いてしまい、暇つぶしでさして興味のないプラチナコーストへの旅をバスで片道12時間かけて行った。
途中バス停と言ってもガソリンスタンドの片隅に泊まったり、ドライバーは膝までのズボンを履いていて、ジャングルにでも行くのか?とツッコミたくなった。現地では一応冬なので寒くきれいな海で入ることはできなかった。
イナ君のキングアンドクイーンのバックパッカーズじゃなけいど、安いユースホステルに泊まってみた。
ラウンジにジャパニーズの女の子が座っていたので話しかけると浪速出身でサザンクロスシティから旅行に来たのだという。
「サザンクロスシティはハーバーシティより落ち着いていていいところだよ」
って教えてくれた。
その2日後にワイは特に見送りもなく一人静かに飛行機に乗ってサザンクロスシティに移動した。
こうしてハーバーシティで過ごした13週の奇妙な旅が終わった。
おわり
ハーバーシティのサーティーンアベニューでのバイトやルームシェアハウスでの生活はまるで蜃気楼のようだったのか。




