雪かき
ある北国の学校では冬の時期、体育館の入り口周辺の雪かきを、生徒たちが行っている。
これは昔からの伝統だ。大雪でグラウンドを使うことができないけれど、この学校の体育館は、みんなで一斉に使うことができるほどには広くない。それで体育館を使えない時に各部が、代わりばんこに雪かきをしたのが、発端となっている。
昔は運動部だけでやっていたのだが、ボランティア精神を養えるからと、教師陣が拡大を推奨、いつしか文化部も加わるようになった。
一つの冬で、運動部なら三回か四回、文化部なら一回か二回、当番が回ってくる。
この雪かき、生徒たちは嫌々な顔で作業をしているのかというと、そうでもなかった。
というのも、ある時、野球部がちょっとしたイタズラをしたのだ。
作業を終えたあと、きれいになったアスファルトの上に、雪を再び置いたのである。ホームベースの形に、ほんのちょっとだけ。
その結果、「今日の当番は野球部か」と話題になった。
それ以降、他の部もマネをするようになる。雪かきを終えたあと、自分の部だとわかるような目印を残すのが、当たり前になった。
このイタズラ、自分でやるのも、人のを見るのも、楽しみにしている生徒たちは多い。
ある日のことだ。校長が体育館の前を通りかかると、今日の雪かきはすでに終わっていた。
そして、アスファルトの上には、雪でつくられた平面のヒマワリ。
ということは、今日の雪かきを行ったのは・・・・・・。
「ふむ、園芸部か」
また、別の日のこと。校長は体育館の前で見つける。アスファルトの上には白い雪で、この学校の名前が書かれていた。
「ふむ、行書体か。今日は書道部だな」
クイズ感覚を楽しむ校長。
ところが、そうじゃない。今日の当番、書道部ではなく、実は生徒会。
さらにつけ足しておくと、先日のヒマワリも間違っている。園芸部ではなく、美術部だった。
こういう誤解がちょくちょく起こるのも、この学校ならではの、冬の名物だ。
美術部は毎回、誰もが知っているような世界的名画を目印に使うので、生徒たちの間で特に人気があった。
次回は「優勝パレード」のお話です。